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「洋画家の美術史」まとめ

光文社新書さんより発売中のナカムラクニオ著「洋画家の美術史」ブックデザインについて語ります。(発売されてからだいぶ時間が経ってしまいました…。)

依頼を受けて面白いなと思ったのは、まず私が少し洋画をかじっていることでした。私は2浪して油絵科に入学しています。そして著者のナカムラさん。ナカムラクニオさんてどこかで聞いたことがある名前…と思っていたら、友人の山フーズこと小桧山さんのツイッターで目撃していたのでした。彼女が2018年の山形ビエンナーレでナカムラさんと共演。プレス発表会をされていました。小桧山さんとは美大の予備校時代に同じ油絵科を目指す仲間でした。何かが繋がっており不思議な縁を感じます。


新書であること、描き下ろしの絵が入ること

今回のポイントは、新書でありながら作家の作品の図録とナカムラさんが描き下ろした絵が加わるというところです。新書らしさをキープしながらビジュアルをどう落とし込んでいくのか。

この本の中には16人の日本人洋画家が出てきます。一人一人のストーリーがチャプターのように繰り返される形です。まず始まりとなるトビラページが大事でした。ここには著者が書き下ろした洋画家の肖像画とそれぞれを象徴する作品が入ります。(高橋由一なら「鮭」と言った具合です。)トビラなので登場感が必要。そしてナカムラさんの絵を活かすことも大事なミッション。そしてこの本は洋画を描く日本の作家の話であること。新書であること。考えることがたくさんあります。

バランスを探っていきます。パッとみた時にわかりやすいか、読みやすいか、それぞれのパーツがしっかり役割を果たしているかなどを意識します。最初に手がきのラフを描くデザイナーさんもいると思いますが、私はモニター上で無心になりあれこれ手を動かしながら最終形を見つけていくタイプです。(若い頃はこれをやっていても終わりが分からないから時間だけが過ぎていきました。デザインを始めたばかりの皆さんはご注意ください。笑)

書体選びですが、編集の田頭さんとちょっと癖のある書体を使うのもアリですよねなんて話になり、見出しにモリサワの「かもめ龍爪」を選びました。あと飾りでイラストの下に添えたサイン風の手書きフォントもポイントです。これを入れることで西洋画らしさとカジュアルさを出しています。

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チャプターの最後に作家の成分表が入る

今回面白い特徴がもう一つ。各洋画家のコラムに成分表が入るところです。有名な画家や流派からどのくらい影響を受けた洋画家であるのかということが円グラフでわかる仕組みになっています。当初は円グラフだけの予定でしたが、ナカムラさんがすごい勢いでこちらに使用する絵を描き下ろしてくださり(点数も仕上がりもすごい笑)、これは何がなんでも活かさねばという熱い気持ちが湧き上がり、必死になってどう入れ込むかを考えました。16人分です笑。枠の中に入りこんで見えるようにしたところがミソです。細かいこだわりですが…。

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デザイン校正はこんな感じに

ちなみに赤字はこんな感じで入れます。モニターでいくらチェックしても、実際にゲラ(テスト印刷)を読んでみると、もう少しバランス変えた方がいいなというところが見えてくるものでして。こうして校正を2~3度行います。


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メガネのレンズには注意

これはだいぶおまけな話ですが、私は普段からメガネをしていまして。今回校正チェックをしていてびっくりしたのは、レンズによって文字の大きさが変わっちゃうことです。より裸眼に近いレンズから、全体的に小さく見えてしまうものまで3種類ぐらいあって。普段かけてたものが小さく見えるタイプだったので、文字の大きさが小さい? 読みづらい? とグラグラしていたら、あ、メガネー! となり、慌てていちばん裸眼に近い状態で見える眼鏡に切り替えるというドタバタ劇がありました。レンズによって見え方が変わることはわかっていましたが、新書の本文を扱うことが初めてだったので、感覚が掴めていないところがあり。ちょっとしたことですがすごく大切な学びになりました。


ポストカードも作ったんです

光文社新書さんのショップからポストカードと書籍のセットも販売されています。こちらのカードも一緒に作らせてもらいました。水彩っぽいあしらいがポイント。

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さらにおまけな話

作業中にナカムラさんがデザイナーさんへと言って贈ってくださったお菓子があったのですが、それが「くるみっこ」というお菓子で。このお菓子は去年からうちでブームになっていたスペシャルなおやつだったんです。これが届いたときは「わー、くるみっこだー!」 と大盛り上がりしました。ナカムラさんありがとうございました。

今回文章にまとめるのがちょっとしんどくてなかなか進まず。そんなに時間がかかるなら音声で語ってみるのもありかなーと思ってもいたのですが、ビジュアルも入れたかったのでコツコツ書きました。文章にするのはまだまだ苦手意識で一杯ですが、できないなりにやっていきます。最後まで読んでいただきありがとうございました。


おわり

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