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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』good at MAGAZINE 章の感想

子どもが私の人生のど真ん中にやってきてからこっち、毎日の生活に密接にまつわること以外のほとんどのニュースや情報を、私は
「それどころじゃない」と名付けたフォルダに内容を見もせずにドカドカ入れて、フォルダごとゴミ箱へザザッと入れ続けていた。

私は寝ていないことを引き金にメンタルを崩壊させないよう、授乳とおむつ替えの間の貴重な時間はできるだけ睡眠にあてなければいけなかったし、
お昼寝から起きてきた子どもが食べるべき離乳食は今現在どういうものなのか、調べて作って後片付けをしていた。
ママママママママとひたすら追いかけてくる愛すべき怪獣とできるだけ笑顔で過ごすために、ほんの少し得られた休息の時間には、自分を癒すためのキラキラで柔らかなモノや情報に触れる必要があった。

そんなわけなので、世の中でうごめいているらしいほとんどの事象についてが、私にとって「それどころじゃな」かった。そうして3年半も過ぎていた。
それが私の全力だったし、じゅうぶん良くやったと自分を讃えたい。

いつの間にやらすっかり会話のキャッチボールが成り立つようになった娘はこの春、じわじわと社会に出始めた。
新しいコミュニティの中で人間関係を作っていくことに、たった3歳ながらに心を砕いているように見える。
半年ぶりくらいに娘に会った妹は、これまで動物的成長ばかり目についていた姪っ子の人間的成長に驚いていた。
今や私は、社会で生きる、未来をつくるひとりの人間を育てているのだ。当然最初からそうなのだけど、ようやく本気で実感し始めた。

娘の生きる未来は、私の育ってきた過去とは随分違うものになるだろうとはぼんやり考えていたけれど、
いろいろありすぎたこの春、それがものすごい現実としてやってきた。
「それどころじゃない」フォルダに入れてスルーしてきたさまざまなことを
少しずつでも取り出して見ていかないと
親としても、いよいよヤバいかも。
そうして手に取ったこの本で、まさに「無知」について書かれていて、ストンと響いた。

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「無知なんだよ。誰かがそう言っているのを聞いて、大人はそういうことを言うんだと思って真似しているだけ」
「つまり、バカなの?」
「いや、頭が悪いってことと無知ってことは違うから。知らないことは、知るときが来れば、その人は無知ではなくなる」

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いつの間にか無知のかたまりになりつつある自分を、もはや諦めて受け入れかけていたけれど、
「知る」機会さえ手放さずにいれば、諦める必要なんてないなと思えた。
知る機会を完全に失わないことが大切だと感じて、
それでこの企画にトライしてみたのです。

感想文なんて募っておいて何を言う、だけど、
知った先どう思うかは、その時きれいにまとめられなくてもいいと思う。
この本の親子のように、日々の中で揉まれながら考え続けたい。
生活の濁流に飲み込まれてしまっても、
「それどころじゃない」はずのマクロなニュースの切れ端は
ミクロな生活の地べたに必ずころんと転がっているから。

Instagramアカウント @n____violet

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