2024年7月28日

 人間、いや人間に限らずだなこりゃ……。というか人間なんて全体で括っちまったが、俺自身の場合だ。書こうと思った時ほど何も書けなくなるってなもんだ。
 何も書けなくなる。本当に何も書けなくなるのよ。だから意気込んで書こうって思っても上手くいかないんだからもう出来とか考えずに適当にやろうって思った。
「そんなこと言って、どうせいつもの言い訳だろう? 何度そうやって同じようなことを繰り返して自分を甘やかしてきた? そういう思考の癖を修正せずに同じ道を辿ってきたのがお前さんだろう? そんなことをしている限りは変わらんよ」
 なんて心の中の自分はそうやっておっしゃりやがる。もっともだけどな。むしろそうやって思いまくる。まぁ自分がバカだって自覚はあるし、それを否定する気もないからな。周りは自信を持てとか、もっと気楽になればいいとか、焦らなくてもいいよとか言うけど、うっせーよばーかってぶん殴りたくなる。
「おいおい……ぶん殴りたくなるって、もうそんな感情ないだろう。周りに流されて、長いものに巻かれる方が確実だとか言って自分で考えることを放棄したお前だ。今更他者に対して何かをしてやろうなんて主体性のある行動はとれないくせに。」
 感情がなくなった。俺は感情のない人間だぁ、なんてかっこいいことを思いそうになる。いやそんな風になれたらいいななんて思っていた自分もいましたよ。まぁ実際にはそんな風じゃなくって、頑張って何かをしても、気を張っても上手くいかなくて、そのたびに自信を喪失していったから、自分や人に期待するのを止めようってなっただけなんだけども。
 人に対して期待せず、どんな出来事があっても感度を下げ、何も感じなくなれば、自分の中で出来事を消化しなければ何が起きようともノーダメージなんて考えた時もありましたさ。
「はっ、確かにあの時はそうするほかになかったんだろうなぁ……。辛いことがあって、でもその状況から脱することもできないとなればもう如何に自身が傷つかないかしかやりようがないからな。ただ、その悪習が今になってお前さんを苦しめていると。」
「そうだよ。お前が言ったように出来事に対する認知度を下げた。起こったことを感じ取ることをできる限りしないようにしたし、感じ取ってもなるべく自分で考えないようにしてきた。そのせいで自分自身で考えて何かをしようってことがなくなったんだよ。」
「本来は誰かしら何かをしたいっていう欲求はあるものだ。その点はお前さんも持っている。他のやつらとお前さんが違うところがあるとしたら、その欲求を満たそうと行動に移そうとするかどうかじゃな。」
 くそ、痛いところをついてきやがる。そんなことを考えないようにしてきたのに。考えるのを止めたいぜ!
「またしても人とはズレているから直したいだなんて自身で思いつめようとしているんじゃないか? そんなことを思っていたところでどうにもならんだろう。 考えてもみろよ、周りとズレてるから直したいだなんて、そんなこと小さいころからずーーっと思ってきたはずだろ! それでもまだ周りとズレてるって思ってるってことは、もうどうしようもないってことだ。考えてもどうしようもないことを考えるだけ無駄無駄だぜ。ましてやそんなんで嫌な気持ちになるとか馬鹿すぎるぜバーカ!!」
「仕方ねぇだろうがよ。そんなんわかってんだよ周りと比べても意味なんてないなんてことくらい!! んなもん歌とかアニメとかで死ぬほど聞いてんだよこちとらよ! それでも周りとズレたくない、みんなと同じように共感して楽しいときを過ごしたいって思うことはそんなにダメなことなのか?」
 俺はそこが不思議でならない。周りと比べるな。みんな違ってみんないいって誰もが言う。周囲の人と比べてたり人と同じがいいっていう人がいたら、それは違うよといって手を差し伸べて道を正そうとする。
 でも周りと一緒がいい。わかってもらいたい、わかりたいって思っちゃいけないのか? 自分が正しいと思うことをするってのも大事だと思うけど、みんなと一緒に道を歩んでいきたいって思いもあるんだよ!
 言葉にならない。どうしようもないくらい切望している。わかりたい、わかってもらいたい、誰かと同じ時を過ごして共感したい。そう思ってたけど、人と関わることよりも人といることの気疲れの方が大きくなって億劫になってあきらめた。行動しようって、変えようと思ったけど変わらなくて、そのたびに自分の嫌なところや出来ないところばかりが浮き彫りになるから、一人が好きになった。
 みんなといたい。人と関わりたい。それ以上に一人でいたいんだ。
 誰かと関わるたびに嫌な気持ちになるから。人といるのが嫌いなんじゃない。一人でいるのが好きなんじゃない。
 でも、一人でいたいんだ。
「そうやって思っている自分に対してもまた、人とズレてるとか言って捻くれるんじゃろうなぁ……まったくどうしたものかのう」
 心のなかの自分がため息を零した。ため息をつきたいのはこっちだよ馬鹿野郎。

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