短編小説「無題」vol.6
祖父が亡くなってから、もう四十九日を迎える。人はよく「実感がない」という言葉を使うが、今までの私にはその言葉がしっくりくる経験がなかった。高校生になった実感、大学生になった実感、二十歳になった実感、社会人になった実感、どれも鮮明に私に迫ってきたし、その実感がないなんて生活に支障を来すと思っていた。
あとは、両親が離婚した実感。当時10歳だった私でさえ、もう父と母は家族ではないのだと分かった。父ともう会えないかもしれない。母と二人の生活ってどんな感じなのだろう。不安や心細さ