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旦那の押し売りマッサージ

うちには夜になると現れる、押し売りマッサージ、なるものが存在する。

深夜0時。

今日も1日お疲れ様でした。
リビングの電気を落とし、寝ようかな、とテーブルのコーヒーカップを流しに片付けにいく頃。

「マッサージしようか。」

寝室の暗闇から旦那の声。

突然ですが、うちの旦那はマッサージがうまい。
ツボを心得ている。
今の仕事に行き詰まったらマッサージ屋でバイトできると思う。そしてなんならマンションの一室を借りてマッサージサロンでも開業したらバイト先の顧客が流れてさらに口コミで人気が出るかも知れない。

「やってあげようか?」

また暗闇から声がする。

今日もパソコンで首が疲れたし、マッサージ、有り難い。

布団に転がると、私の背中を体温高めの手のひらでぐうっと押してくれる。

は〜〜ん、きもちいいい。

腰周り、おしり周り、太もも、ふくらはぎ、足裏。
また戻って背中と首、肩周り、二の腕、手のひら。
いい感じで続けてくれる。

よだれを垂らしてうとうと。
きもちいいなぁ。  

と、

パンパンと寝ている私の背中が叩かれた!

「交代」

そして、ゴロリと横になる旦那。
突然マッサージは終わり。
そして言い渡される交代。

えええーーーー、このタイミングでーー?!

筋肉質というほどではないが、若い頃から常になんらかのスポーツを愛好してきた旦那のその身体は、脂肪が乗っているとはいえ硬く、背中は広く、おしりは大きい、そして太ももは、図太い。

暗闇のなかに巨体。。

押し売りに乗った代償は高くついた。

いま、寝落ちするところだったのにーー。
至福のときだったのにーー。

優しい私は、なんとも恨めしい気持ちで眠い身体を起こす。そして旦那の背中をさする。

「きもちいね」

暗闇がむにゃむにゃなんかしゃべってる。

そのうち、暗闇はシーンとなり、いびきとなる。

くうううー、気持ちよさそうに寝落ちして羨ましい〜。

ハイキングでチビをずっと背負ってくれて、炎天下にカチコチの畑を隅から隅までスコップ1本で耕してくれて、毎日ゴミを出しに行ってくれて、腰、疲れてるんだよね、うんうん、わかってるよ。

でもさ、でもさ、

旦那よ、私も寝落ちの至福が欲しいよ〜〜。
マッサージ、1日交代にすればいいんじゃないのぉおーー?!



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