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夏の終わりに読みたい~美しい思い出とともに~

 暦の上では立秋を迎え、夏の終わりに向けてセミたちが忙しなく鳴くこの季節。ふと空を見上げると、上弦の月が見え始めました。日が沈む前、街路樹をなでるぬるい風の中、凛としたたたずまいの美しさを感じつつ、1日の終わりを迎えられる幸せをかみしめています。

 私が住む地域も、日本に負けずに汗が流れる日々が続いていますが、この夏は、バカンスがてら旅行もしました。でも、合言葉の「無理をしない。」を反芻しながら、非日常の移ろいやすさを感じながらゆったりと過ごしました。心の窓を全開にするのは、時として怖さもありますが、その分、手にしたものの輪郭がはっきりするように思います。

 私のバカンスは終わりを迎え、今日から通常営業で頑張っております。今日はそんな「夏」の終わりのおすすめを2冊紹介していきます。まだまだ残暑が続きそうですが、読書で一息つきましょう。


二人の一生の思い出を追走 

 1冊目は『夏美のホタル』。電子書籍で積読していたのを思い出し読み始めたのですが、夏に読むべくして積読していたのではと思うほどでした。

 写真家志望の主人公の慎吾が、幼稚園教諭をしている彼女と夏休みを過ごすお話です。2人の青春・恋物語だけではないところが、私の心をつかみました。
 彼女の愛車(バイク)で出かけた山郷で出会う人々とのひと夏の一生の思い出。
 タイトルにある「ホタル」その輝きにも負けない『夏』がここにあります。

 読書メーター感想より
 夏の朝読書。ホタルの光よりも、夏の太陽の輝きよりも、このお話に出てくる人たちは、それぞれの出会いの間で美しく輝いている。仏師である雲月が自身の最高傑作を彫り上げるところから始まるので、彼の話かと思ったらそれだけでなく、夏美、慎吾、ばあちゃん、お地蔵さん一人ひとり人間の哲学的な成長を味わえる一冊。森沢さんの作品を読むのはこれで3作目だが、夏に読んでほしい珠玉の一冊。エピローグの『凛』は、美しい終わり。

『夏美のホタル』|本のあらすじ・感想・レビュー・試し読み - 読書メーター (bookmeter.com)

夏になると何度も読み返す

 これも何度も再読しているのですが、必ず「夏」になると読んでいるように思います。

 物語はタイトル通り、台所のシーンから始まります。台所、キッチン、食、命、人と人とのつながり。そういった類のものに、許しや優しさを求めるからでしょうか。夏というのは時として切ないと思うのです。

 読書メーター感想より
 何度目かの再読。『なるほどの対話』を読んでから、ふいに読みたくなって手に取った。初めて読んでから20年近く経って、みかげよりも雄一よりも大人になった今読むと、心にしみるものがある。生と死と向き合った日々、二人の青春、生きることへの懐古、さみしさ、悲しさ。ないまぜになった感情に口をつけることができるようになったのは、私も少し大人になったのかもしれない。生きる隣には、食べることがある。台所で眠るシーンの奥深さを今回は感じた。

『キッチン』|本のあらすじ・感想・レビュー - 読書メーター (bookmeter.com)

夏の終わりに

 子どもの時の夏休みといえば、花火に盆踊り、おじいちゃん、おばあちゃんとのひと時でした。年月が経ち、おぼろげになっていくその思い出も、こうやって読書を通して、クリアにまた磨かれていくような感覚を覚えます。

 8月ももうすぐ折り返しですね。8月に読んだ本まとめは、また別に出したいと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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