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【実践】アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』(要約あり)

 仕事で「顧客満足度」についての知識を広げるため、大学で研究している方にヒアリングをする機会が増えています。そんななか。ある先生に「この本は読んでおいたほうがいいですよ」と諭されるように教えて頂いたのが、今回の本『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』でした。

 「ダニエル・カーネマン?」と首を傾げましたが、なるほど。代表的著書の『ファスト&スロー』が見事に積読になっていました。ノーベル経済学賞も受賞していたので、自分の見識のなさを痛感…(^^;

 ちなみに積読が増える心理もなんとなくこの本に書かれていた、「今日観るために借りる映画」は『』で「明日観るために借りる映画」は『シンドラーのリスト』という下りからの対話で一同、納得…

 ●今回のスタイル

 本に収録されている内容が「講演」「自伝」「論文×2本」というものだったので、ABDのやり方はかなり迷いました。今回は本を読むだけだとすぐ忘却曲線に進みそうだったので「行動経済学とはこういうことか!」ということを実感できるよう、ワークショップもいれたいと考えました。
 ということで、人数と時間の関係上、全部ではなく2章の自伝を割愛。

参加人数:6人
合計時間:180分(時間内に完了)
ページ割:一人合計20ページ程度
オープニング:30分
コサマライズ:70分(コサマライズ2回目)
休憩:5分
プレゼン:一人3分くらい×6人
ギャラリーウォーク:なし
ダイアログ:プレゼン後、そのばで全体対話を少し
ワークショップ:40分
クロージング:5分

この構成の工夫としては、以下の2つ。
①ABD前にどんなことが書かれていそうかの認識付与
②ワークショップを前提として組み立てる
③ギャラリーウォークではわからなかったところにシール

●事前準備

 今回は綿密な設計ができず、時間配分は大枠で展開しました。内容が学術的なもので、かつ講演・自伝・論文という構成だったため、サマリの難易度による時間設計と、サマリをする部分の選定とページ分割が非常に難しかったですね…
 結局、当日の参加者にワークショップに時間を取りたいかどうかで、自伝の部分を抜くか抜かないかの選択を委ねることにしました。
 やってよかったのはワークショップ。WEBで見つけた行動経済学のワークショップアイテム「Coglode Nuggets」というのがあったので見様見真似でやってみました。お題について、行動経済学の「原理カード」の組み合わせを用いて、解決策を考えよう!というもの。購入できればよかったのですが、手に入らず。結構面白いので、ご存知の方がいれば教えてください(^^;

↓自作カードの一部

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●オープニング

 行動経済学について、その研究がなされる以前の経済学を含め、簡単なスライドを用意し、行動経済学に関するいくつかのクイズを実施しました。
 本にも書いてあるのですが、ABDを読み込む前にどんなことが書かれているのかというイメージをもってもらうために差し込んでいます。

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●コサマライズ・リレープレゼン

 コサマライズは2回実施。「自伝」の部分も著者と研究の変遷を知る上では有用かなとはおもったものの、ワークショップの時間を多くとることとなり、ばっさりいきました(^^;

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●ギャラリーウォーク

 論文は読む側の理解もある程度あるという前提か、従来の考え方について丁寧な説明がありません。本をご紹介いただいた先生や、Amazonのレビューなどから比較的読みやすいという情報は合ったものの、われわれのレベルが追いついておらず、苦戦しました。
 そこでギャラリーウォークではわからなかったところにシールを貼ってもらい、少し全体対話をし、そこで解決できなかったものはリフレクション時に私の方で調べて共有するということにしました。

ベルヌーイの期待効用

●ダイアログ&ワークショップ

 行動経済学(心理学?)の原理をいくつかピックアップしてカード化しました。「Coglode Nuggets」というカードがあるらしいのですが、入手方法がわからず、お手製です。
 このカードを組み合わせて、「お題」の解決方法を考えてください、というもの。例えば、今回出たのは「セミナーの当日キャンセルをなくすには?」というもの。
 主催者として痛手がなく強制力も出る手段としては、「申し込み時点で事前決済する」(損失回避、コミットメント)。
 他には、「クローズドコミュニティで開催する」(類似性)、「キャンセル待ちを強調する」(希少性)、「とにかくFB上でリマインドする」(画像優位性)。
 これをやった結果、ダイアローグフェーズでは、過去にこの場面でこういう工夫をした、その狙いと効果、はたまたこうすれば良かったなど、どんどんアイデアが出てきました。結構盛り上がったように思います。

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●エンディング

 今回、一人一人チェックアウトはしませんでした。今回のABDの目的は、カーネマンの著書を通じて行動経済学の基本を知ろうというもの。ワークショップで感じたことと、お題の結論をもって終了としました。

●リフレクション

 今回の本『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』は専門用語も多く、なかなか短時間で咀嚼することができない点も多かったため、ギャラリーウォークでシールを貼ってもらった「わからなかったところ」を、参加者のメッセンジャーグループでシェアしました。
 例えば、以下のようなもの。

・ベルヌーイの期待効用理論
人は不確実性のある状況下では、期待効用が最大化する合理的な選択をするという考え方。
・プロスペクト理論
「確率に対する人の反応が線形でない」「人は富そのものでなく、富の変化量から効用を得る」という認知バイアスに基づく考え方。つまり人間は賢くないので、必ずしも合理的な選択肢を取らないということ。
・U指数
本書で最大の謎だったU指数を算出するための数式がいよいよもって謎のままになりました…ご説明できる方がいたらコメント頂けると嬉しいです。考え方はわかるのですが(^^;

●ABDサマリ

【第1章】ノーベル賞記念講演 限定合理性の地図
 知覚の特性1:人は変化に集中し状態を無視する。
 ベルヌーイの期待効用理論は、例えば賭けにおいて結果で期待できる効用で評価されるものというアイデア。しかし、人間は「損失」の選択に直面したときはリスクを追求し、「利得」の場合はリスクを回避する傾向にある。(プロスペクト理論)

 知覚の特性2:足し算より平均を求める。
 冷水に手を入れる以下の2パターンで実験。
 ①「60秒14℃」の水に手を入れる
 ②「60秒14℃」+「30秒15℃」の水に手を入れる
 この実験の結果被験者にどちらの実験をもう一度やりたいかを質問すると、苦痛の合計時間が長いはずの②を選ぶ人が80%いた。

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【第2章】自伝
 なし

【第3章】効用最大化と経験効用
 「効用はどんなときも最大化される」という仮定に基づけば人間は合理的判断をするはずである。最も自分にとって好ましい選択をするのは、さまざまな状態や環境でエラーを起こす。

 ①現在の感情状態に影響を受ける
 空腹な状態であれば買いすぎてしまい、『シンドラーのリスト』を観たいとは思っても、今晩映画を観るなら『めぐり合えたら』を選んでしまう。
 ②選択状況の影響
 オーディオの評価の話。店先で選ぶときは複数のモデルで比較するが、購入した後の家では購入した商品を個別評価するしかない。
 ③過去に学ぶ
 過去の記憶によってバイアスがかかり、偏った予測をしてしまうことがある。
 ④適応予測の誤り
 人は焦点を絞ることによる錯覚に陥る。「カリフォルニアと中西部どちらに住むと幸せか?」という質問に対し、多くの人が「気候」を判断軸に回答してしまう。実際に現地の人自身の幸福度は変わらなかった。 

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【第4章】主観的な満足の測定に関する進展
 主観的調査によって、満足の度合いが図れるのだろうか。
 エッジワースは個人の幸せとは、リアルタイムな瞬間的な効用の総和であると定義した(経験効用)。
 一方、経験が終わった後、過去を遡及して経験を評価する記憶効用では、持続時間は無視され、最後(エンド)やピークにウエイトが置かれる。
 また、人の答えは現在の気分や状況によって結果が変わってしまう。人によって尺度も違う。
 この問題の解決策としてカーネマンはU指数を提案。

 経験効用を測定する方法として、以下の2つのアプローチがある。
①経験抽出法:1日に何度も答えさせる
②1日再現法:前日に起きたエピソードを回想
 この2つアプローチはほとんど同じ結果になる。

 1日再現法で感情の正味量とU指数を図る。感情の正味量の計算方法は、以下の①から②を引いたもの。
 ①肯定的な形容詞の3項目(幸せ/心暖か/楽しんでいる)の平均値
 ②否定的な形容詞の6項目(不満な/憂鬱な/…など)の平均値

 U指数とは、好ましくない状態で過ごす時間の割合を測定する指標。
「不快(unpleasent)」「好ましくないもの(undesirable)」の頭文字をとったもの。
 回答者から回答を得た各エピソードについて、最も強い感情が否定的な項目であれば「不快」と分類する。U指数の計算の前提として、回答者から回答を得た各エピソードについて、最も強い感情が否定的な項目であれば「不快」と分類する。これによって、個人の尺度の強弱価値観の影響は受けなくなる。

U指数


 本の内容はわかりやすいということだったのですが、ABDやっても、そのあと読み返しても理解できないことが多く大苦戦。特にU指数の計算方法は最後まで分かりませんでした…
 WEBで探しても全然わからず。どなたか教えて頂けると大変ありがたいです(^^;

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オリコングループの(株)oricon ME 顧客満足度調査事業本部長。 アクティブ・ブック・ダイアローグ協会認定ファシリテーター。MBA修士。 ABDの情報はこちらにも掲載→https://abd-life.com/ 読書ブログはこちら→https://sakudoku.com/