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ライター・作家 権藤将輝(ゴンドーマサキ)
2020年12月1日 18:14
「最近よくドライブに誘ってくれるね」前方の信号が黄色になったため、ブレーキをじんわりと踏んだ。まるで地面に吸い付くような感覚が足元から伝わる。晴彦は、アクセルを踏み込む走行時は言うまでもなく、ブレーキングにも快感を得ていた。助手席に座る栞の方を向くと、人差し指で頬を触っている。彼女のクセだ。「この車に替えてから運転が楽しくなったんだ」信号が青に変わり、アクセルを踏む。再始動の際、少し間
2020年11月24日 19:30
群青色の空で、一羽のカモメが風に煽られていた。不可抗力によって方向を変えられてしまった姿が哀れに映ったのは、自分と重ねてしまったからかもしれない。今日は風が強い。防寒に優れた厚手のダウンジャケットを羽織っている佳嗣だが、全身を容赦なく打ち付ける寒さに肩をすくめた。佳嗣が、ここを選んだ理由は特にない。30歳を迎えて無性に旅に出たくなり、なるべく遠いところに行こうと、この港町に決めた。町全体が静か