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【修斗~QUINTET】元パンクラス王者に一本勝ちしたキャプテン☆アフリカこと出花崇太郎のアフリカ体験と柔道とコブラ会、そして元ボクシング世界王者の妻の支え

3月25日、東京・後楽園ホールで開催された「プロフェッショナル修斗公式戦」第5試合ライト級戦にて、2017年新人王のキャプテン☆アフリカが、元パンクラス・ウェルター級王者の鈴木槙吾に1R 1分25秒、アームバーで一本勝ちした。

場内がどよめいた85秒勝利。試合後、マイクで「ただの日本人なんですけど、野性的でアグレッシブな戦いを見せられたかと思います」と語ったキャプテン☆アフリカは、グラップラーとして、関西から東京までその強さが伝わるほどの強豪だった。

元全日本柔道選抜体重別3位、妻は元プロボクシング世界王者というキャプテン☆アフリカは、いかにしてプロ転向を果たしたのか。そして、なぜ“アフリカ”なのか。試合後、話を聞いた。

photographs by Nagao Susumu/SUSTAIN

寝技のことも考えて投げている

──今回のプロ修斗公式戦で、東京初進出でいきなり元キング・オブ・パンクラシストの鈴木槙吾選手に一本勝ちしたキャプテン☆アフリカ選手です。最後、フィニッシュにいたる投げがちょうど目の前で組手がよく分からなかったのですが、首投げで腰に乗せたのでしょうか?

「払い腰巻き込みのような形で投げて、そのまま袈裟固めでした」

──投げた時点で足を越えてサイドに。袈裟固めから両足に挟んでのアームバーだったと。

「最初、そのままストレートアームバーを狙いにいったんですけど、取りきれなかったので、パウンドでダメージを与えながら、そのままパウンドアウト出来ればパウンドで、同時にアームバーも狙いながらという感じでした」

──柔道時代から、投げて抑え込みという動きは体に染み付いているのでしょうか?

「そうですね。特に抑え込みはすごく得意でしたので、立ち技からの連係をいつも考えています。投げる時から寝技のことも考えた投げ方をしています」

──しかし、脇を差していないノーギでの首投げは投げてもバックを取られることもありますが、鈴木選手がバックを狙いながらもそうさせない安定感がありました。引き手を深く取って下の足に乗せて……。

「逃がさないように、ということを意識していました。あのポジションを得意にしています。それに袈裟からバックに回られそうなときの対応もいつも練習でもやっています」

──パウンドとの連係も見事でした。鈴木選手が下から糸通し的に腕を掴みにきたところに、腰を切って相手の左脇を腰で開けさせてから、クルスフィックスで片腕を挟みながらパウンドを入れて。

「そうですね、最後は少し組み直して……」

──梃子にしてアームバーを極めた。実は、前日の公開計量の時点から、その身体の仕上がり具合に驚いていました。バキバキで……。

「減量がうまくいっていると思います。今日も8キロくらいは戻っていると思いますし」

石井慧選手とは高校時代に一緒に試合をした

──減量は、柔道時代(2004年 全日本柔道選抜体重別選手権・兼アテネ五輪最終選考 -73kg級3位、欧州チェコ国際大会 -73kg級日本代表、全日本柔道選抜体重別選手権3位)からずっと続けてきたことでもありますね。グラップリングでも実績を残してきて(2009年 アブダビ ワールド プロ柔術 アジア予選 75kg級 3位)、2016年年末のRIZINグラップリング後に本格的に総合をやることも聞いていましたが、今回は、この後に「QUINTET」(4月11日・両国国技館)出場も発表されました。

「いまは立ち技を結構、練習しているんですけど、もともと寝技が好きだったので、QUINTETさんからオファーをいただいて、そういった大きな大会に出させてもらえることは、グラップラーとしてすごく嬉しいですね」

──団体戦ゆえ、5人抜きという声も……。

「それは……頑張ります(苦笑)。でも有名選手に一本勝ち、というのは狙っていますね」

──同じチームの石井慧選手とは同じ大阪出身ですが、柔道時代から交流も?

「高校時代に国体の選抜チームで一緒に試合をしたことがあります。その後、石井選手がMMAを始めた後も、コブラ会に来て練習したこともあって。そういった繋がりや、組み技大会での実績も見ていただいて、推薦いただけたのかなと思っています」

コブラ会で柔道の寝技だけでは足りないと感じた

──総合格闘技にトライするとき、コブラ会に1日体験入門したそうですね。そのときは柔道で実績がありながら、「三島会長(三島☆ド根性ノ助)に手も足も出ず……」と振り返っていましたね。

「そうですね。柔道しかやったことがなかった学生時代には、全日本トップクラスの選手も寝技で極めていたことがあったので、競技人口がもっとも多い柔道が、1番強い組み技格闘技だと思っていたんです。ところが、コブラ会に行ったら、三島さんは柔道を始め、柔術、グラップリング、MMAなどの寝技を極めていて、柔道の寝技しか知らない自分は全く歯が立ちませんでした」

──組み技において、柔道時代とどんなところが違うと感じましたか。

「例えば柔道であれば、寝技で劣勢になった場合、亀の状態になれば、そのうち『待て』がかかって凌げますが、柔術で亀になると、バックに回られて一番不利なポジションになりますよね。それに、柔道の関節技は基本的にヒジ関節のみですが、MMAなどはどこの関節を極めてもいい。三島さんとスパーリングをして、柔道の寝技だけでは、実戦で全く足りないと感じたんです。その経験が、現在の、どのような状況──着衣の有無や打撃の有無、ルールの制限など──でも通用する寝技を追求するきっかけとなりました」

3年間、滞在したアフリカで見たもの

──なるほど。出花選手の強さは以前から関西から東京に出稽古に来る選手たちから漏れ伝わっていたのですが、「キャプテン☆アフリカ」という名前は……。今日も試合後に「東京の皆さんこんばんは。ただの日本人ですけどアフリカです」とマイクで挨拶していましたが。

「それは、自分は25歳から会社の海外勤務で約3年に渡りアフリカのガボン共和国(中部アフリカ)に滞在した経験があって、そのときにアフリカの文化や人々をとても気に入って、アフリカが大好きになったんです。それにキャプテン☆アメリカが活躍するアメリカンヒーロー映画『アベンジャーズ』なども好きだったので、『キャプテン☆アフリカ』にしようと。コブラ会のプロ選手として、本名でリングに上がる選択肢は自分には無かったですね。私の一年前にプロになったのは、山本“健斗”デリカット選手ですし(笑)」

──大阪らしくもあります。しかし、出花選手とアフリカにそんな縁があったとは知りませんでした。

「まだまだアフリカの国々は発展途上国が多く、内戦や紛争、テロなどで平和に暮らすことができない人々が多くいます。自分は、大好きなアフリカのために、キャプテン☆アフリカとして活躍して、何かしらの形でアフリカの平和のためになることができたらと、今は考えています」

幼馴染の妻が打撃をチェックしてくれる

──直に現地で過ごしてきた場所なのですね。私もリング名の由来を知ることで、ガボンとはどんな国だろうと興味が沸きました。ところで、今回も試合を観戦された奥様の久美子さんとは14年の交際になるそうですね。(池原)久美子さんは元WBO世界女子ミニフライ級王者としても有名ですが、なれそめは?

「私の両親と妻の父親が中学校の同級生で、父親同士が親友ということもあり、同い年の子供が生まれたときに『将来は結婚させよう』と言っていたみたいです(笑)。妻とは幼馴染でしたし、成人式で再会して、その後10年の交際を経て結婚しました。

私は社会人になって柔道は引退しサラリーマンとして働き、プロボクサーとして活躍する妻を応援する立場でした。その間、会社での海外勤務があり、アフリカの人たちが必死になって生きている姿や、何も持たなくても楽しく過ごしている姿を見たこと、それに、すぐそばで命がけで戦っている妻を見て、自分も人生をかけて何かに挑戦したいという気持ちが大きくなり、30歳を過ぎてからプロ格闘家への転身を決意しました。

妻も賛成してくれて、今は打撃面でのサポートをしてくれています。スパーの動画も見てもらい、どこが悪いかをチェックしアドバイスをくれたり、食事面での減量のサポートなどもしてくれます。打撃を始めてまだ1年ですが、今回も強打の選手に自信を持って戦うことができました」

──競技者としては以前は出花選手が見守り、いまは久美子さんがサポートしてくれる。最強のパートナーですね。さて、2017年はライト級新人王決定トーナメントで2試合とも1R KO・一本勝ちで優勝しMVPを獲得。今大会では元パンクラス王者に一本勝ちしました。試合後は「野性的な戦いを見せられたと思うんで、チャンピオンとかと戦いたいです」とマイクアピールしましたね。

「やっぱり、プロでやると決めたからにはチャンピオンを狙っていきたいです。今回、元パンクラスのチャンピオンにいい勝ち方が出来たんで、(修斗の)チャンピオンとやってもいい勝負ができるんじゃないかなと思っています。今回が3戦目で、前回の12月の試合が終わってから3カ月しか経っていないですけど、対戦相手が決まって練習をしてきて、すごく成長できたので、次の試合が決まるまでにはもっと成長できる自信があります。いまの強さのままでいることはありません。MMAとしてさらに成長した自分を見せられると思います。応援、よろしくお願いします!」

【QUINTET】審判団決定・ルールの骨子発表=4月11日(水)『QUINTET.1』両国国技館大会・詳細

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◆『ゴング格闘技ベストセレクション 1986-2017』

『ゴング格闘技ベストセレクション 1986-2017』が3月17日、イースト・プレスより発売された。本文二段組、560頁に及ぶ第1弾の今回は歴史篇。柔道、柔術、レスリング、バーリトゥード、MMA、空手、キック、立ち技格闘技──ゴン格31年の取材史に書き下ろしコラムも収録! → http://goo.gl/Enmvrc

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