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わたしの推しカプが死んだ



先日、わたしの推しカプが死んだ。

いや、物理的に死んだわけではなく、「推しカプという夢というか概念というか解釈が死んだ」といった方がいいだろうか。(長い)

・・とそのまえに推しカプとはなんぞや?という方にご説明しておきます。

〇推しカプとは?
自分が好きで応援しているカップルのこと。
主に二次元作品に登場するキャラクター同士の関係性(とくに恋愛関係が多い)を好きになり、カップルで推すようになる。
その関係性は、原作で”事実として描かれているもの”もあれば、原作にある”かすかな恋の香りをめざとく嗅ぎ取ったオタクたちが作り上げた、精密すぎる妄想”である場合がある。


(オタクのみなさんこんな感じで大丈夫でしょうか。なんか間違ってたらすみません。)


上記の説明にあるとおり、推しカプとは・・オタクの夢である場合が多い。

少女マンガであれ、少年マンガであれ、どんなマンガにも魅力的なキャラクターたちがいきいきと生きていて、夢に向かって走ったり、恋をがんばったりしている。そんな日常のなかにある”かすかな恋の香り”。それを、どうしようもなく感じ取ってしまうことがある。

それはほんとうに小さなもの。
なんてことないセリフだったり、ちょっとしたやりとりだったり。
それに対し、尋常じゃなく発達したオタクの嗅覚は、反応せざるを得ないのだ。もうこれは習性というか、業というか、もはや病気である。
そのかすかなキッカケから、妄想が始まる。
原作から少しだけ延長した、ありえなくもない、ささやかな推しカプたちの日常を、日々いそいそと創りあげている。

これは言い過ぎでもなんでもないのだが、正直、この妄想をしているときが一番たのしい。

妄想することで生きているというか、生かされているというか。
・・キモイことを言っているのは分かっている。
しかし、オタクとは総じてキモイものだと自負しているので、このままいかせてもらう(全国のオタクのみなさん、巻き込んですみません)

わたしの推しカプも、公式ではなかった。
そう、ただのわたしの夢だ。
原作で「こ、これは・・!?」という見過ごせない絡みがあり、そこからわたしは盛大な夢物語を自分の頭のなかで描いていたわけである。
しかしある日、事件は起きた。

原作内で推しカプの片割れが、”わたしが妄想していた相手以外のだれかと結ばれた”ような描写があったのだ。

それをみた瞬間、体中の血液がぐぉぉぉぉっと回りだした。鼓動が速くなる。
血流はよくなったくせに、指先は冷たい。
脳はまだ、その事実に追い付いていない。

ショック・・?いや、間違いなくショックだ。
でも、ショックを受けること自体間違っている気もする。
だってこれは、ただのわたしの妄想で、夢だ。

ここで「わたしの作品への向き合い方、考え方」を先にご説明させていただくと、わたしは”作品は作者さんのもの”だと思っている。
素晴らしいストーリーやキャラクター。
なにもかも作者さんが生み出し、世に出して下さらなかったら、わたしのもとに届くことはなかった。そのエネルギーに触れ、わたしは生かしてもらっている。だから、作者さんが描かれたことがすべてで、それに文句を言うつもりは一切ない。
というか「その作品を生み出してくれた神」に感謝こそすれ、文句なんかあるわけがない!!

そう、だから、片割れがちがう相手と結ばれても納得・・するしかない。
頭に、その事実を理解させる。だいじょうぶだ。
飲みこめる・・いや、飲みこめ・・!!
そう思いながら、わたしは気づいていた。

心が、追いついていない。

何度も言うが、推しカプはわたしのただの妄想であり・・そして夢だった。
頭のなかは自分勝手で、自由だ。
だからわたしは推しカプたちを、わたしの貧相な妄想力で、わたしなりに幸せにしていた。
そうすることで、わたしも幸せになっていた。
幸せにしてもらっていた。

きっと、その二人に恋をしていたのだ。

ささやかな日常をわけあって、幸せに。
もしかしたら、こんな未来が訪れたりするかもしれない。そんなかすかな可能性を、夢を、エネルギーにしていた。
それが、完全に潰えた。

「あ、もうこの二人を好きでいちゃだめなんだ」

ぽっかりと、心に穴があいた。
何度でもいうが、文句があるわけじゃない。
ただ、なんというか、この気持ちを、推しカプへの夢を、ちゃんと弔ってやらなければと思ったのだ。





二次元のキャラクターは、見ている側の夢を託せる「余白」がたくさんある。
プロフィールがある程度決められていたとしても、そのキャラクターの細かい日常までを描き切ることは、なかなか難しい。
だからその”描かれていない余白”を、妄想で補完する。それはとても自由で、楽しい。
でも、だからこそ、これは”自分勝手な夢であること”を心に刻みつけておかないといけない。
歴戦の猛者であるオタクのみなさんは重々わかっていることだと思うのだが、自分へのメッセージとして、ここに残しておく。



件の片割れちゃんは、違う人と結ばれた。
そして彼女は・・とっても幸せそうに笑っていた。その様子をみて、凍りついた心がじんわりと溶けていく。

「あぁ、もう、推しが幸せならそれでいいや」

推しカプとか、関係性とか、それ以前に。
その二人が大好きだった。
その作品が大好きだった。
わたしを生かしてくれるエネルギーだった。
だから、それを生み出してくれた作者さんや、いろんな方々への感謝を忘れず、心の中で土下座しながら、オタクとして誠実に、謙虚に、生きていきたいと思う。

そして、やっぱりわたしはこの先も、その推しカプを好きなままだと思う。

その夢を食べながら生きていたようなもんだから、かんたんには忘れられそうにない。
だから、彼女の幸せを全力で祝いながら、たまにパラレルワールドに出張して、ニヤニヤしたりすることを、どうか見逃してほしい。




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