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第十九景 研修会の話

僕が就いている仕事には、業務上に必要な仕組改訂の研修会が四半期に1回くらいある。僕はその研修会が好きで、それがある時は喜んで参加する。

好きな理由はいくつかあって、まずひとつはおいしいお弁当が食べられることだ。時にはお刺身が出てきたりして、リッチな食事をすることが出来る。

もう一つは、仕事の関係上、女性が多いことだ。変態だと思われても構わないが、いい匂いがする。そしてそのいい匂いに包まれたまま、うとうとするのも極上のひと時となる。

ここで研修会について思い出したことがある。あの研修会はスマートフォンでこそこそネット掲示板を見たり、アプリゲームをするろくでもない後輩と参加したときのことだった。

僕には好きな研修会と嫌いな研修会があって、好きなのはグループディスカッションがある研修会だ。いい匂いの女性と合法的に触れ合うことができるなんて最高だ。

嫌いな研修会は、与えられた資料に沿って、それを読むだけの研修会だ。ただ読むだけなら、資料を配布して、終わりにして欲しいし、読むだけならひとりでも出来る。研修会をする意味がないとさえ思う。

そのろくでもない後輩と行ったのは、嫌いな方の研修会だった。その研修会の嫌なところはとても眠くなることだ。ただ文字を追ってるだけだとうとうとしてしまう。読めば分かることを他の人たちが真剣に聞いているのが不思議でたまらない。

ろくでもない後輩はいつもと同じように、下に鉄パイプの棚がある机の下でスマートフォンをいじくっていた。そのあたりの無駄なことを分かっているという感覚は僕と似ている。

僕は絶対に寝ないという気持ちもあることはあって、形だけでも真剣に聞いている振りをしようとマーカーを持ち、大切だろうと思われるところに線を引っ張る。

しかし食後の魔の時間帯といい匂いのする幸福感が相まって眠気が襲ってくる。僕は睡魔と戦いつつ、絶対に寝まいと船を漕ぎ始める。

ハッとしては、顔を上げ、ハッとしては机に頭をぶつけないように、顔をまた上げる。眠気と自我の戦いの決着は突然訪れた。

「バン!!!!!!!!!!!!!!!」

突然鳴り響く轟音。

何事かと思い、顔を上げる。横目で見ると音にびっくりして焦ってスマートフォンを隠し、慌てるろくでもない後輩。いきなり響いた音にびくっとおびえる講師。ちょっとざわつく会場。

その音の正体は、僕がうとうとした拍子に頭を机にぶつけたものだった。

確かに頭に痛みはあったし、とても恥ずかしかったが、何事もなかったかのように僕は話を聞くふりを続けた。

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