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やっているのは【人生のアレンジ】です。ー「合格保証」「成績保証」の闇ー(独断と偏見とちょこっとプラスα)

自己紹介をしたときに、決まって言われるのが、「あ、塾の先生なんですね。専門は何ですか?」です。

うん。間違いじゃない。
でも正しくもない。

塾とは合格させることだけが仕事なのか。

私は大手の学習塾2社に務め、計5教室に勤務しました。それ以外にも、家庭教師をした経験もあります。
10年前と今とでは、塾側もお客様側も大きく変わったと感じています。

例えば、今はもはや標準装備になりつつありますが、「合格保証」「成績保証」などの各種返金保証です。
まあ、私もやってるんですけどね。

各種保証によって、「塾」というものが、【消費財】になりました。目的を達成できない【不良品】を掴ませられてたら、返金の申し出をしたら良い、という発想になったように感じます。

塾の一番の仕事は「合格してもらうこと」です。間違いありません。ただ、合格してもらうこと【だけ】が目的ではありません。

「合格」を目指して学習する中で、人生の武器を手に入れ、スケジュール管理の方法などの社会人の基礎を身に付け、将来を考えるキャリア教育の提供する。そんな場でもあると思うのです。

それが、各種保証でうすーくなったと感じています。

「合格保証」・「成績保証」

塾の「合格保証」「成績保証」のイメージが付きにくい方に少し説明をさせていただければと思います。

よくあるのは、下記のようなものです。

  • 3か月以内に定期テストの点数が○○点以上、上がらなければ、次の3か月間は無料。

  • MARCHに合格できなければ、1年間の塾費用を全額返金。

  • 資格試験講座受講後、不合格であれば、講座費用を全額返金。

もう少し詳しくイメージを書きます。※イメージです。実在ではありません。
数学が苦手なAさんが、3か月以内に通塾科目点数20点アップ保証の塾に行きました。結果、点数アップは18点でした。Aさんは次の3か月間、無料で塾に通えます。こんな感じです。

各種保証の闇

各種保証は標準装備になりつつあります。結果、何が起きているかというと、とにかく合格・点数アップ以外はどうでもよいと考える教室が出てきてしまったんです。※すべての教室がどうでもよいと考えているわけではありません。

もうね、とにかく合格してもらわないと、教室がつぶれます。だから必死です。例えば、スケジュールはガチガチ。MARCHの合格保証の場合、よく条件に「MARCHの中で、教室が推奨する大学・学部を2つ以上受験している」を入れていたりします。希望の学部でなくても、MARCHの一角ならOKなので、受験するよう誘導したりします。
※こういうことやっている教室ばかりではないです。特定の教室を指すのではなく、システム上起こりうることとして記載しています。

通塾科目の点数が保証対象の場合は、もう、通塾外科目のことなんて知ったこっちゃないと考える塾が出てきます。だって、通塾科目さえ上がれば、他の科目は下がっていても、お金を返さなくていいんです。通塾科目に必死になります。

さっきのAさんを例に挙げます。Aさんの保証対象は【数学で20点アップ】です。つまり、英語や国語や理科が上がっても、数学が下がったら、次の3か月、無料で授業をしなくてはいけません。つまり、教室は人件費などを持ち出さないといけないんです。

塾はありえない量の数学の宿題を出します。数学だけしかやれないくらい、数学の宿題を出します。返金保証の条件として、宿題の提出率と塾の出席率は必ず設定されています。Aさんはやらざるを得ないんです。

結果、Aさんの点数は以下の通りになりました。※イメージです。
【入塾前 数30点 国80点 英60点 理50点 社75点 合計295点】
【入塾後 数55点 国72点 英45点 理40点 社60点 合計272点】

通塾科目である、数学は25点上がっているので、保証通りです。きっと担当者はほっとしているでしょう。でも、合計点を見てください。下がっていますよね?Aさんにとって、良い結果ではありません。

こういうことが起こることがあります。

塾・資格取得スクールの仕事は「人生のアレンジ」です。

塾などのスクールは、生徒さんの最善をアレンジする努力をしないといけません。例えば、先ほどのAさんであれば、極端に苦手な数学は10点アップにとどめて、比較的得意な英語・社会を80点に伸ばす選択もあったはずです。もし計画通りに行けば、合計点は330点に上がります。

そのほうが、数学だけが上がるよりもずっといいはずです。もちろん、受験にも影響してくることでしょう。

それに、局所的に物事を見るのではなく、全体を見渡して、自分の得意で勝つ方法をAさんは学べたかもしれません。これって、一生使える思考法を学ぶチャンスを逃していると思いませんか?

単なる集客手法として、安易に「合格保証」「成績保証」を使ってしまうと、生徒さんの不利益につながる可能性があります。

それでも私が合格保証を付けている理由

ここまで話すと、「合格保証」「成績保証」が悪であるように思われるかもしれません。そういう例をお伝えしました。それでも私は「合格保証」を付けています。

私の教室の制度は、正確には「合格最低保証制度」です。偏差値50以上の大学に合格できなければ、翌年無料で通塾いただけるというものです。

なぜ、これを出しているかというと、おうちの方の背中を押すためです。

ある生徒さんが教室に相談に来られました。その方は高2生で中1レベルの数学がわからない状況でした。文系の私大を目指したいとのことです。私は自信を持って、「偏差値50以上の大学は現役で狙えます」とお伝えしました。

どうなったと思いますか?

怒られたんです(笑)

「普通に考えて無理でしょ」
「うまいこと言って、とりあえず入会させたいんでしょ」

なるほど。そう取られてしまったか。私の説明の仕方が悪かった、と反省しました。

じゃあ、どうしたらいいのか。考えた時に、私たちの覚悟をお見せするしかないと思ったんです。高2からスタートするなら、ちゃんとやれば、偏差値50は届きます。それをわかりやすく伝えるために、【合格最低保証制度】を作りました。

どんな制度も使いよう、なんです。

どうせするなら、合格プラスαの学びを

入試であれ、資格試験であれ、受験をするのは大変です。その試験に取り組むと決めた方にどれだけの付加価値を提供できるのかが、塾や資格スクールの真骨頂だと思っています。

受験先の決定方法・自分の人生設計の仕方・無理のない計画の立て方・計画がうまくいかなかった時の修正の方法・必要な情報の見つけ方・検索キーワードの見つけ方、などなど、受験や受験勉強を通して、付けてほしい力はたくさんあります。

そして、この付加価値の部分はどれも【一度身に付ければ一生使えるもの】だと思います。

だから、私の仕事は塾講師でも塾教室長でもなく、「人生をアレンジすること」なんです。


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