
誰も教えてくれない|ライターに信頼されるディレクターになる方法
今現在ディレクターをなさっているWeb担当者の方で、こんなお悩みを抱えている方はいらっしゃいませんか?
「外部ライターを採用しても、すぐにやめてしまう・・・」
「ライターと良好な人間関係を築くのに苦労している・・・」
「修正事項が多く、クライアントとライターの架け橋になるのに疲れた・・・」
自社メディアの運用ならともかく、ディレクターの多くはエンドユーザーであるクライアント様とライターの仲介役になることがほとんどだと思われます。
仲介役というのは大きな責任を伴い、嫌われ役になることもしばしばです。
ですが、あなたが「嫌だなあ」と思っているディレクション業務のほとんどは事前準備とほんのちょっとの心がけで大きく変わり、うまくいけばライターさんから絶大な信頼を寄せてもらえる存在となります。
この記事はライターとディレクター業務を兼任している筆者が、両方の立場からディレクターの理想像を定義するものです。これからWebディレクターを目指す方はもちろん、現在のディレクション業務で悩みを抱えている方も是非、お時間ある時にご参照ください。
仲介者とはしばしば嫌われる存在である

誰だってできることなら敵を作りたくないし、嫌われたくもありません。しかし、仲介する立場というのはしばしば攻撃の的になることは確かです。クライアント様からしてみれば「当方の要請事項はきちんと伝えたのか?全然修正できていないじゃないか!」と言われ、ライターからは「要望があるなら最初にまとめて言ってくれ!工数が2倍に増える!」と言われるわけです。
ではやっぱり「ディレクターって嫌な仕事なんだ・・・」と諦めるしかないのでしょうか?
答えはもちろん、ノーです。
ディレクターのマインドセットができていれば、ディレクション業務はこの上なくやりがいのある仕事ですし、クリエイティブの中心にいる存在なので、全体を見渡すことができる重要なポジションです。ここからは、ディレクションを進めていく上で必要なマインドセットについて解説します。
伝書鳩にならないこと

ディレクターはクライアントの意向をライターに伝えるのが仕事ですし、ライターの成果物をクライアントに伝える仲介者です。しかし、双方の言い分をそのまま文字通り伝達する、「伝書鳩」になってはいけません。
多くのディレクターが陥っている罠ですが、クライアント様がメールでもチャットでも言ったことをそのままライターやデザイナーに伝えるだけなら小学生でもできます。ディレクターは「ディレクションする」という言葉の通り、「ある成果物の制作にあたって指揮をとる存在」でなければなりません。
ディレクターの仕事とは成果物作成の指揮進行及び日程調整をすること

ディレクターの仕事は以下の通りです。
ディレクターの仕事
企画趣旨・全体像の把握及びクライアント様へのヒアリング(なぜその企画をやるのか、クライアント様の悩みは何か、解決したいことは何か、目指しているものは何か、どんな成果を求めているのか、など)
全体のスケジュール作成及び進行管理(フェーズを分けて進行させると良い。可能であればパラレル進行にする)
ライターやデザイナーへの依頼
成果物納品確認
クライアント様との最終調整
ローンチ(公開)
これに加えて私の場合はクライアント様の商品及びサービスの競合調査を行った上でクライアント様の商品及びサービスの強みや特徴を抽出し、コピーライティングを活用したフロントエンド開発を行います。
ディレクターは成果物の全体像を把握していなければならない

あるクリエイティブ(記事でもデザインでも)の制作を請け負い、ライターやデザイナーにアウトソースする段階に入った場合は、クリエイティブの全体像把握に努めましょう。ディレクターが確認する事項は次の通りです。
ライターに依頼する場合
依頼概要
企画趣旨
文字数(上限下限ある場合はその旨も記載)
文字単価(記事単価)
納期
依頼者(クライアント名)
記事公開先
キーワード
ターゲット層
レギュレーション(表記ゆれの統一など)
構成案の有無
納品方法
その他備考(ポートフォリオへの掲載可否等、記名記事がどうか)
デザイナーに依頼する場合
依頼概要
企画趣旨
制作単価
納期
依頼者(クライアント名)
デザイン公開先
色指定
要件定義書
ワイヤーフレーム(用意している場合)
ターゲット層
レギュレーション
納品方法
競合リサーチ資料
その他備考(ポートフォリオへの掲載可否等)
あなたの会社はすべて事前に確認できていますか?
上記の情報に加えて報酬請求先の情報や納金方法についても触れてあげるとより親切です。
ちなみに弊社の場合は企画趣旨は別途オンラインミーティングを設定して、ライターさんやデザイナーさんに説明することが多いです。(無理な場合はそれに相当する資料を用意します)。
なぜここまで事前にヒアリングしなければならないのか?

クライアント様からの修正依頼が多いかどうかは、ライターやデザイナーの腕にもかかってきますが、ディレクターによるクライアント様への事前のヒアリングもとても重要になってきます。クライアント様はライティングやデザインの依頼に不慣れなことが多いので、成果物作成に関する依頼事項が後出しになりがちです。
多少の修正依頼はつきものとして、あまりにも多くの修正依頼を出すと、確実にライターやデザイナーのモチベーション低下につながりますし、ライターやデザイナーの工数が大幅に増え、追加料金が発生する可能性もあります。少なくとも上記の項目を最初にヒアリングし、ライターやデザイナーに伝えることで、コミュニケーションコストの削減につながり、ライターやデザイナーにとっては「とても仕事のしやすいディレクターだな」と信頼してもらえるようになります。
ディレクターに望ましい条件
企業のオウンドメディアの増加に伴い、ディレクターの需要も高まりを見せています。
ディレクターは誰でも志望することができますが、ディレクターに望ましい条件というものがいくつか存在します。順番に見ていきましょう。
多少なりともライター・デザイナー経験がある人物
ディレクションする立場上、作業する人の思いや大変さを知るためには、実際に自分もライター経験やデザイン経験を積んでおいた方が良いでしょう。これは必須条件ではありませんが、ディレクターを目指すなら限りなく積んでおいた方が良い経験です。デザイナーは専門性が高いので、難しいかと思いますが、ライティングなら初心者OKの案件がクラウドソーシングサービスでたくさん出ていますので、腕試しにまずは1本記事を書いてみてはいかがでしょうか。実際に自分も経験してみることで、ライターが記事を書く際にどんな情報を元にどういう工程を踏んで書いているのか、どういうディレクションだったら伝わりやすいかを知ることができます。
自分の感情をきちんとコントロールできる人物
どの職業にも言えることですが、ディレクターは特に感情を抜きにして仕事を進める必要があります。それはライター・デザイナーサイドに寄りすぎても、クライアントサイドに寄りすぎてもトラブルの原因になるからです。前述した通り、ディレクターというのは仲介の立場にある以上、双方の指摘の的になります。その際に怒りの感情を生み出すのではなく、「これも仕事のうち」と割り切り、粛々と業務をこなさなければなりません。決して「誰も私の仕事のことを分かってくれない!」と嘆いたり、ライターやクライアント様に責任転嫁したりしてはいけません。それが仕事なのです。厳しいようですが、他人の一言一言に気を揉んだり、アンガーコントロールができない人はディレクターに向いているとは言えないでしょう。
相手のことを思いやれる優しさがある人物
ディレクターには相手の気持ちを思いやれる想像力も必要です。想像力や情報のキャッチアップ力がないと、「なぜクライアント様はこのような修正を依頼しているのか?」反対に、「なぜライターはこのような主張をしているのか」のバックボーンを理解しきれず、双方の調整ができなくなるからです。みんな必死に自分のタスクをこなしているんだと認識して心に余裕を持つと、相手のことを思いやる時間が生まれます。
少し話はそれますが、皆さんは思いやりのあるなしは性格に依存すると思っていませんか?
実は、それは間違いです。予防医学研究者の石川善樹氏によると、心の余裕は睡眠を十分に取れているかどうかで変わってきます。人間は睡眠に入った最初の3時間で脳の回復に努め、次の3時間で体の回復に努め、次の時間から心の回復に入ると言われています。心の回復を図れるように、最低でも7時間は睡眠を取るようにしましょう。人間の集中力や作業効率を考えるならば、だらだら夜遅くまで残業するよりも、次の日の朝から8時間フルスロットルで働いた方が何倍もの成果を挙げられます。
自分は怒りっぽい、人に優しくなれないという方は是非十分な睡眠をとってみてください。きっと心と体の軽さに驚くことでしょう。
最後に

ライティングやデザインというのは非常に集中力のいる仕事です。ディレクション業務がそうでないとは言いませんが、私の経験上、クリエイティブを制作する方がディレクションの10倍疲れます。「何かを生み出す」というのは大袈裟ではなく、精神と肉体の両方を削る大仕事なのです。ディレクターの皆さんは、まず「クリエイティブを制作するのは本当にすごいことだし、大変なことなんだ」ということを認識しておくと、今後仕事を進めやすくなるかもしれません。ディレクターや、その先にいるクライアント、ライター、デザイナー、プログラマー等々は、誰が偉いとか、誰が指示をする地位の高い人という関係性ではなく「共に成果物を作り上げる対等なビジネスパートナーであり、並走する存在」だということを、胸に留めておいてください。
とは言え、中には最初から馬が合わないライターやデザイナーもいます。残念なことですが、作業を請け負うライターやデザイナーの方にマインドセットが足りていなくて上から目線で来られることもあるのです。
そのように、どんなに手を尽くしても信頼関係を構築できないな、と思ったら潔く切るのも一つの手です。この記事を読んでくださっているディレクターの皆様が快く仕事ができることを祈っています。
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