十劃呪法を考えてみる【呪術廻戦】

※本文章は、週刊少年ジャンプに掲載の最新内容のネタバレを含みます。
 単行本派の方は、十分ご注意ください。


祝・復活?

週刊少年ジャンプの最新号(2021年20号)にて、呪術廻戦の第146話「死滅回游について」が掲載されました。

羂索(偽夏油)の引き起こした「死滅回游」の説明回ですが、終盤にて死滅回游の泳者(プレイヤー)の一人が紹介されます。
うだつの上がらなそうなお笑い芸人、髙羽史彦。彼が泳者であるわけですが、彼が最後に放つ一言が問題でした。

「五分だ五分だと言うけれど…」
「本当は七三くらいが…」

ズズズ…と呪力を漲らせながら、「七三」という単語を口にします。
呪術ファンにとって「七三」といえば、言うまでもなくナナミンこと七海健人です。実力・人間性ともに非常に優れた一級術師であり、虎杖の第二の師として「呪術師」としての生き様を身をもって示し、彼に大きな影響を与えました。

そのキャラクター性は読者にも大きな人気を博し、作者である芥見下々も「キャラクターに特に思い入れはない」けれど「七海はちょっと好き」(うろ覚えです、すみません)と言わしめるほど味のある登場人物になりました。

彼自身は渋谷事変にて真人の前に散ったわけですが、この髙羽の発言によって、ナナミンの術式、「十劃呪法」が泳者に付与される術式として再登場する可能性が出てきたわけです。

そしてこの機会に、前から興味のあった十劃呪法について、少し考えてみようと思います。妄想の域を出ることはありませんが……


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十劃呪法の秘密を探る


十劃呪法とは

まず、術式の概要をおさらいしておきます。

術式効果
・対象の長さを線分したとき「7:3」となる比率の点に、強制的に弱点を作り出す。攻撃を当てればクリティカルヒット。
・線分するのは全長やウィングスパンだけではなく、頭部・胴・上腕・前腕などの部分までは対象として指定できる。
・破壊した対象に呪力を纏わせ、それ自身を攻撃物とすることも可能。

こういう能力モノでは、「地力に差がありすぎると能力自体が通じない」というのが常です(具体的には、BLE○CHで○蜂の弐撃決殺が藍○に通じなかったことをイメージしてください)。

しかし、十劃呪法は「7:3の点に攻撃を当てられれば、格上にもダメージを与えられる」ということが明言されている珍しい術式です。実際に、劇中では特級呪霊である真人や陀艮にもダメージを与えることができていました。
火力系の能力としては、かなり親切設計だと言えるでしょう。
ただし、相手に与えるダメージはやはり術師の地力に左右されると思われます。

はい、一言でまとめると、 
「制約が大きく使い勝手は悪いが、その分攻撃性能が高い脳筋術式」

 ということで、身体能力バケモノのひしめく一級術師にぴったりの、わかりやすい攻撃性能ガン振り術式だと言えるでしょう。
 
しかし、「対象の長さを線分したとき「7:3」となる比率の点に、強制的に弱点を作り出す」という基本効果に、少し秘密がありそうです。考えてみます。

「真値」と「誤差」
 モノが持つ何かしらの数値には、必ず「真値」があり、それを知ろうとすると、そこには必ず「誤差」が生じます。

 いきなりなんだ、という感じですが、これが今回の本題のひとつです。
足りない頭で頑張って説明します。


 例として、モノ、例えば、漫画本の長さを測ることを考えます。

 呪術廻戦の単行本は、いわゆる「新書版」という区別になるらしく、「横112mm×縦182mm」のサイズです。しかしこれはあくまで作る側が目標にするサイズであり、出来上がってくる本のサイズはこれとは違うのです。

 これはどういうことか。まず極端な例から考えます。
「横112mm×縦182mm」を目指して、ハサミで紙を切ることをイメージしてみましょう。手のブレなどの理由で、目指すサイズには正確には一致しません。実際の漫画本製作では、紙は機械でカットされているのだと思いますが、どんな精密な機械にも誤差はあります。できあがってくる漫画本のサイズは「横112mm×縦182mm」には誤差ゼロでは一致しないのです。


 さて、では、本屋さんで購入した漫画本の長さは、いったいいくつなのでしょうか。「横112mm×縦182mm」に近い値ではあるのでしょうが、正確に測ることはできるでしょうか。
 結論から言うと、この本の「本当のサイズ」、以後は「真値」と呼びますが、これは誰も知ることができません。あえて言うのであれば、全知全能の神様しか知りえないのです。

なぜかというと、漫画本を作る時にもどんな機械を使うにせよ「誤差」が生じてしまったように、モノのサイズを測る時にも同じように「誤差」が生じてしまうからです。
 ここでもまず極端な例から考えます。この漫画本の「真値」は、神様から教えてもらって「横113.2mm×縦181.3mm」だったとします。

漫画本を、目で見るだけ、目視で測ってみます。それだと「だいたい、横15cm(150mm)mm×縦20cm(200mm)くらい?」という感想になるでしょうか。真値からは20~30mmくらいは誤差がありますね。

同じ漫画本を、ものさしで測ってみます。「横113mm×縦181mm」というところまではわかるでしょうか。100%目視よりはかなり真値に近づきましたが、まだ±1mmくらいは誤差があります。

最後に、ものすごく精度のいい計測機器で測ってみます。「横113.198mm×縦181.301mm」くらいまで測れるでしょうか。それでも誤差はゼロにはなりません。「横113.19999999…mm×縦181.29999999…mm」のような結果は出るかもしれませんが、「横113.2mm×縦181.3mm」をピッタリと測れる手段は存在しません。どんな精密な計測機器を使っても、モノを測るために歯車を動かしたり光を受信したり、色々な動作を挟んでいくと、そこには必ず誤差が出るのです。

はい。長くなりましたが、言いたいことは分かっていただけたでしょうか。

・モノのサイズには、必ず「真値」が存在する
・「真値」を測ろうとすると「誤差」が必ず生じ、それをゼロにすることはできない
⇒「真値」は誰も知ることができない

 つまりこれが、十劃呪法の「対象の長さを線分したとき「7:3」となる比率の点に、強制的に弱点を作り出す」という効果に関わってきます(そういえばこれ呪術廻戦の記事でした)。


真値による「縛り」
 さて、長くなりましたが、要するにここで言いたかったことは「7:3の点がどこにあるかなんて誰も知りようがない」ということです。

 では十劃呪法の「7:3の点」はどこにあるのか、というと、上で言う「真値」、「誤差が0の点」にあると考えています。

「でも、真値なんて誰も知らないんじゃないの?」ということになります。

 細かいことは省きますが、呪術廻戦における術式効果は、あえて言えば「神様」、真人の「術式は世界」という言葉を借りるのであれば「世界」が決めているものであり、その原則を術師がどうこうできるものではないと考えています。

つまり、
「神様が、誤差ゼロの7:3の点に弱点を作り出していて、人間はそれをどうやっても知りようがない」
というのが、十劃呪法の本当の効果ということになるのではないでしょうか。

……なんだか当たり前のことを言っていますが。


 さて、しかし、誤差ゼロの真値が弱点だったとして、そこをピンポイントで狙うことは事実上不可能です。なぜなら、人間が持つどんな計測手段をもってしても、真値を知ることはできないからです。では、どうすればいいか。

 呪術廻戦が面白いのは、「対象の長さを線分したとき「7:3」となる比率の点に、強制的に弱点を作り出す」という「術式の原則」は術師がどうこうできるものではないですが、その細部は術師がチューンできるというところです。
つまり、上記の問題に対しては例えばこんな解決策があります。


① 弱点の範囲を緩くする=術式の「縛り」を緩める
② 術式の「縛り」はそのままで、真値に攻撃を当てられる工夫をする


ナナミンの攻撃が強力な理由は、「7:3の真値に攻撃を当てる」という制約、「縛り」がとても強力なためだと考えています。だからこそ、格上にも攻撃が通じるという、強化系ともいうべきシンプルな術式にしては気の利いた内容となっているわけです。

① はそんな縛りを緩めることで、術式が発動する可能性を高めようというものです。
例えば、「7:3の点の真値から±1cmくらいは外れてもいいから、そのぶん火力を下げる」といったような感じです。

初心者向けではあるかもしれませんが、格上の強力な呪霊といつ戦うともしれない呪術師という職業では、上に行くほど使い勝手が悪くなってくる気がします。後手に回って様子を見るのではなく火力で叩き潰すタイプの術式であるのに、下手に火力を下げてしまっては本末転倒、多少ピーキーでも火力に特化させた方が強力ではないでしょうか

 「真値に攻撃を当てなければいけない」という「縛り」があってこそ、十劃呪法の魅力は輝くのだと思います。


ナナミンの鉈がグルグル巻きだったワケ
 さて、とはいっても、「7:3の真値」に攻撃を当てないと、術式が発動しないわけですから意味がありません。術式の縛りを緩めないままで使い勝手を上げようとするのが上の②の案になります。

与えられた制約はそのままで、「どうやったら7:3の点にドンピシャで攻撃を当てられるか?」と考えるわけです。

私は、ナナミンの鉈がグルグル巻きな理由はここにあると思っています。
すなわち、

「刃物に布を巻いて攻撃に使用する面積を増やすことで、真値の点に当たる確率を上げる」
ということですね。

 絵で見てみましょう。7:3の弱点を斬ろうとしたときに、そこから少し外れた同じ点に、鉈の刃と峰(の中心)がそれぞれ当たった場合を考えてみます。

刃を使った場合、切っ先はかなり鋭いため、弱点をほぼ「点」(正確には線ですが)で狙わないといけません。

十劃呪法_1

図1 刃の部分で7:3の弱点を狙った場合


しかし、逆に峰打ちにしてみるとどうでしょうか。斬撃でなくなる分、攻撃力が下がるように感じますが、攻撃する部分が「面」となり、当たり判定が大きくなるので、弱点に当たったとみなす判定が緩くなるのです。

同じ点に攻撃した場合でも、攻撃範囲を広くすることによって弱点に当たり、結果として刃で攻撃した時よりも火力が出るのでしょう。

十劃呪法_2

図2 刀身をグルグル巻きにし、さらに峰打ちした場合


そしてこのグルグル巻き効果は、ただ当たり判定を広くすることだけではありません。

「峰打ちで攻撃している」=「まだ手加減している(刃で攻撃したらもっと強い)」
と、相手に思わせることができる
のです。

実際、初めて十劃呪法を見た虎杖も、
「そもそも刀身がグルグル巻きなのにその上峰打ちでブッタ斬った」
と、まるでナナミンがまだ全然本気を出していないと解釈しています

(実際、このレベルの呪霊(改造人間)に本気を出しているはずはないですが)

このように、ナナミンが鉈をグルグル巻きのまま使っているのは、
・十劃呪法の発動確率を高める
・自分の火力の底を見せず、相手に警戒させる

というような、非常に合理的な意味合いがあったのだと思います。ナナミンらしいですね。
その証拠の一つとして、渋谷事変でのナナミンは、陀艮・漏瑚・真人というトップクラスの特級呪霊達と相対しても、依然として鉈を開放する様子はありませんでした。あの状態がナナミンの「本気」なのだと思います。


十劃呪法の可能性を探る

ということで、十劃呪法の強さと難しさ、それを補うナナミンの知恵が分かったわけですが、続いては十劃呪法をより素人でも効果的に使う可能性を探っていきたいと思います。髙羽視点ですね。ここからは完全な妄想です。

 ここまでで十劃呪法のピーキーさは十二分にわかりましたので、ここで重視して考えていきたいのは以下の点になります。

基準①:攻撃の当たり判定が広いか(術式を発動させやすいか)
基準②:戦闘の素人にもある程度扱えるか

 この2つの基準をもとに、十劃呪法の可能性を探っていきましょう。


前提:十劃呪法は遠隔に使えるの?
まず気になるのが、十劃呪法の有効射程です。
これは現状では公式資料のどこにも明示されていない(多分)のですが、つまるところ「遠距離攻撃でも十劃呪法が発動するの?」ということです。

 遠距離攻撃、例えば銃による狙撃のような攻撃で発動するのであれば、スナイパーとしてもかなり優秀です。
 最近では渋谷事変終盤で、真依が羂索(偽夏油)を狙撃していましたが、あれがもし十劃呪法でクリティカルヒットを出していたなら、ガードを貫通してぶち抜いていたでしょう。

 とはいえ、個人的にはこれは弱いかな、と思っています。十劃呪法の有効射程は非常に狭いんじゃないかな、ということですね。

 理由としては、「射程を伸ばしてしまうと、結果的に縛りを緩めることになり、クリティカルヒット時の火力が下がるから」ではないでしょうか。

 上で述べたのと同じように、
「7:3のピンポイントに」「有効射程を絞って近接攻撃で」攻撃を当てるという「縛り」によって、火力を上げているという考えです。つくづく使い勝手が悪い術式ですねえ……

 ということで、「十劃呪法の有効射程は短い」というのを前提として考えています。


①徒手空拳
まずは何も考えずにステゴロで殴りに行ってみます。レッツゴリラ廻戦。

これは普通に強力です。ナナミンも素手で戦っている時はありますし(瓦落瓦落やVS重面春太など)、鉈よりも攻撃をより広い「面」で行えるため、素人にも術式を発動させやすいと言えるでしょう。

とはいっても、いくら素人向きとはいえ、いきなり術師や呪霊相手に肉弾戦を挑ませるというのは、まったくの素人には勧められない気がします。


② 拳銃
「素人でも使いやすい武器」というと、やはり銃器が思い浮かびます。
刀や槍といった武道系(?)の得物とは違い、一般人でも高い火力をコスパよく得られる武器です。

 とはいえ射程が長いものはおそらく縛り的に△。なので、射程の短い拳銃でクリティカルヒットを狙っていきましょう。呪力が少なくても、弾に呪力を込めておけば大丈夫。

 弱点としては、弾がなくなると何もできなくなること、近接が弱くなってしまう(懐に入られると弱い)ところでしょうか。死滅回游はそれなりに長期戦ぽいので、弾切れが早そう。


③ ショットガン
 銃器ばかりになってきました。素人向きと考えると自然こうなってしまう……

 散弾を発射することで、拳銃よりも一撃必殺、さらには面での制圧力を高めて、十劃呪法を無理やり発動させて突破しようという考えです。

 普通に強そうではありますが、取り回し等、拳銃よりは難しそうですね。弾切れ問題も解決されていません。


④ 鉄球
最後はこれです。最近ジョジョの7部を読んだから、という理由だけなのですが、十劃呪法と鉄球のコラボを見てみたいのです。

ナナミンの「シルシルシルシル」や「もいっぱあああああつッ!!」をただただ見たいだけでした。私に絵心があれば描けるのに……


 ……はい。好き勝手書くのはここまでですが、意外と実用性あるのではと思います。
 鉄球は射程もさほど長くない(拳銃程度?)ので、そこまで十劃呪法の火力を下げることもなさそうですし、当たり判定も大きいので術式の発動可能性も高いと思います。黄金の回転を加えれば怖いものなし。

 まあただ、いかにも鉄球だけって感じだと、戦闘では狙いがすぐバレて難しいでしょうね。当てるのも難しそうだし……①の素手戦闘かと見せかけて、不意打ちで狙っていきたいところです。


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まとめ

 「これ!」という考察ができませんでした......まあ、もともと妄想なのですが。
十劃呪法、難しいですね。これを鍛え上げて一級術師になったナナミンのすごさを思い知る結果になりました。

そして術式について色々と書きましたが、やっぱりナナミンの魅力は術式だけではなく、その地力となにより人間性が強かったのだと思います。

 もし146話で登場した髙羽が十劃呪法「だけ」を持っていたとしても、ナナミンとは全く違う人間性で術師ではない一般人の彼がどういう道をたどるのか、ナナミンとは対照的に描かれそうな気がしています。楽しみです。


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おまけ:十劃呪法の術式反転ってどうなるの?

これも本編や公式では触れられていませんが、十劃呪法で術式反転したらどうなるんでしょう。

「対象の長さを線分したとき「7:3」となる比率の点に、強制的に弱点を作り出す」
というのが順転の効果ですから、これの逆となるはず。単純に逆にしてみましょう。「7:3」と「3:7」は同じなのでそのままで。

「対象の長さを線分したとき「7:3」となる比率の点に、強制的に強点を作り出す」

『強点』という耳なじみのない言葉が出てきましたが、もちろんこんな言葉は存在しません。
要するに、「7:3の点でガードすれば、相手の攻撃を大幅に軽減できる」くらいのイメージです。前腕の7:3のところでガードすればほぼ無傷、みたいな。

術式順転が火力全振りであるのに対して、反転させれば逆に防御に全振りした術式になる、なかなか面白くないでしょうか?十劃呪法は防御や回避に使える能力が皆無なので、反転でバランスを取ってほしいところです。

しかしこれは、反転術式を使える=ナナミン以上の実力者が十劃呪法を使ってくれないとまず確認できません。当分は妄想の中のものとしておきます。

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