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イケてる会社は物を買うのもうまい

「なんで、この人は、こんなにも、こっちを頑張らせる気持ちにさせない態度をとるのだろう?」

営業をしていた時にたまに思うことがありました。

横柄な態度。無理難題を押し付ける。約束を大事にしない。発注者であることを盾に、営業を手下のように考える人がいます。

こっちだって人間だ。

相手が敬意をもって、優しく労をねぎらってくれたならば、こっちだって「このお客さんのために…!」と頑張るもんです。

でも、敬意を払ってくれないのであれば、こっちだって忙しい。クレームがこないことだけを考えて最低限の対応で済ますのみです。

値引きしてほしいなら、もっと有益な情報を提供してほしいなら、発注者側が強権発動をしたところで、それは得られない。強権発動するからこそ、それは得られない。

「体温の伝わる交渉」をよんで、営業の特に新人時代に思っていたことを思い出しました。

この本は「交渉」をテーマとした本でも一風変わったポジションです。継続的取引を前提としたなかでのコスト削減を主眼として、実際のビジネスシーンの実践的な交渉方法に特化した内容なのです。対象は大企業の管理部で間接材の発注者側の方。(not交渉のプロで直接材の発注者である購買部)

一読して損はない良書なので、該当する方にはおススメです。

本書において、交渉力とは「信頼関係の構築」+「ベストな取引条件」を得るための能力と定義されています。

これは同感。

ベストな取引条件だけを追求し続けた結果、サプライヤーから継続的な契約を断られることや、担当者やその企業との関係性が悪化してしまったりすることがある。逆に信頼関係が構築されていると、ベストな条件での取引、ストレスのない交渉、オプションサービスが得られるものだと言います。

いや、ほんと同感。

まあでも、常に交渉相手の立場に立って交渉するってのも難しいもんです。発注者であったり、交渉上立場が強いと、どうしても無意識に精神的上位にたってしまうものです。その無意識が言動に現れてしまいます。

例えば、相槌を早めに打つ、全部を聞かないうちに質問をする、打ち合わせに遅れる、気のない返事をする…

これらひとつひとつサプライヤー側は過敏に感じます。自分が営業の立場だったら敏感に感じ取りませんか?

でもしかし、されたら嫌なのに、されたら嫌なことをしていることにはなかなか気づけない。不思議ですよね。

また交渉は「合わせ鏡」だとも言っています。

サプライヤーの対応は、発注者側の対応に次第に似通ってきます。発注者側が時間にルーズな対応をすれば、サプライヤー側も同じようにルーズな対応になるのです。「あの会社はいうことを聞かない」と怒っても、もしかすると発注者側の姿勢や言動に問題があり、サプライヤーの質を低下させ、交渉を難しくさせているのかもしれません。

これも非常に実感があります。

相手がルーズであればこちらが誠実に対応するのが馬鹿らしくなってくるし、「あなたもそうでした」と言い訳ができる状態にもなりますもんね。

論理的に説明してほしければ、こちらも論理的に説明する。突然変更を言い出してほしくない、約束を反故にしてほしくなければ、こちらもそうしないこと。そのような暗黙の共通ルールはとても大事です。こうやって暗黙の共通ルールが守られていることは、イコール信頼関係が構築されていることですもんね。

あなたが交渉相手を数多いサプライヤーの中の1社と見ているのと同様に、サプライヤーにとってもあなたは営業先の1社の一担当者でしかありません。一度、発注側という立場から離れ、受注業者なのだから何でも言うことを聞くべきだという先入観を排除し、こちらが営業するつもりでサプライヤーと相対してみてもいいでしょう。相手が何を考え、どうしたらより良い価格で売ってくれるか、どのようにしたら嫌われないかが見えやすくなります。基本的に商談とは、等価交換の話し合いです。媚へつらったり自分を下に見せる必要はありませんし、威厳を振りかざす必要もありません。対等に話し合うという気持ちで向かい合えばいいのです。相手の気持ちに配慮しながら誠実に接すれば、自然といい結果が生まれます。

本書内のこの一節に、真実が含まれてますね。

(※ジョブローテーションのいいことは、まず営業をやると本能的にこの一節の大事さが腹落ちすることですよね。立場の違いを乗り越えて合意するために相手の立場に立つことの難しさと、大切さが頭ではなく心でわかります。)

発注側であっても尊大にならずに敬意をもって接する、受注側であっても媚びへつらわずに敬意をもって接する。このスタンスを大切にして長期的な信頼関係を構築しないといけないなと改めて思います。

しかし、全国の大企業の管理部署の方が、この本を読んでくれたら、僕の仕事もちっとは楽になるのになあ。届け、この想い。



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