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007 今さら 映画『TENET テネット』を観たときの感想


2020年は母が他界したり、父が病気になったり、コロナだったりで、ろくに映画を観られなかった。

それでも『TENET テネット』は映画館で観ました。
IMAXで。

感動した。
よくわからなかったけど。

この映画は、“主人公”が時間を逆行しながら、世界全体を逆行させようとするオッサンと闘うなかで、夫婦喧嘩に巻き込まれる。
みんなお洒落な服を着ている。

そんな映画です。

劇中には回転扉が登場し、その扉をくぐると、時間を逆行できる。

ポイントは逆行であるため、ある時間へ戻るには、ある時間までかかった時間がかかるということ。
『ビルとテッド』のタイムマシーンみたいに、いきなり3日前にボコッとは行けない。
3日前に戻りたければ、3日間の時間を過ごす必要がある。逆行しながら。

不便ですよね。


逆行する、ということは、光の進む速度の倍の速さで動いているということになる。

川に流されるボートがあります。

ボートがA地点からB地点まで流されました。
川の流れる速度は一定です。
B地点からA地点まで戻るためには、川の流れる速さよりも速くボートを漕ぐ必要があります。

で、川の流れが時間。ボートが私たち。
時間の進む速さは、光の進む速さだから、光より速く進めば、過去に戻ることが可能なんですよ。

てな話を聞いたことがある。

だからきっと、あの回転扉をくぐると、光より速く動けるっていう理屈なのかな?

過去に戻るために、光より速く進むってなんだか変だ。
光より速く進むと、逆に未来へ行ってしまう気がする。
そもそも川の理屈は、ボートを川の流れに逆らって漕ぐ前提にある。
じゃあ、川の流れに逆らわずに漕いだら速く進むんだから、未来へ行くのだろうか?
時間って、川みたいにA地点からB地点へ向かって流れているんだろうか?
時間のA地点?

時間の大河の一滴?

回転扉。
小学生の頃、父に連れて行ってもらった六本木ヒルズの回転扉はデカかったな。
東京ドームも回転扉だ。
回転扉じゃないドアから出ようとすると、風圧が強いんだよなー。
「さっさと帰れ!」と東京ドームに体を押されるような風圧。
また東京ドームに行ける日が来るのかな。
あのときはノンキなもんだった......


そんな理屈はどうでもいい。
わからないんだから仕方ない。

この映画が素晴らしかったのは、そこじゃないんだ。

それは、

映画館で観る映画、サイコー!!

という気持ちをもたらしてくれたから。

IMAXで観たから一層、映画への没入感が凄かった。

『TENET テネット』は、映画を映画館で観ているんだ!
という喜びで溢れている。

しばらく映画館へ行けなかった分、この映画はより映画としての存在感が増している。
ある意味、公開タイミングの良かった作品だ。

リュメール兄弟の『列車の到着』。
初めて映画を観た観客たちが、こちらへ向かってくる列車の映像に驚き、おもわず逃げてしまったという。

たぶん嘘だと思うけど、これが有名な映画体験の逸話。

『TENET テネット』は、ジャンボジェット機が、こちらに向かって突進して来る。

わかった。

この胸の高鳴りが、この感覚が、『列車の到着』だったんだ。

動画配信がどんなに流行っても、映画館で観る映画こそが、映画なんだ。

家族が死のうが、世界中が混乱していようが、一瞬でもその悲しさが紛らわされる。

とんでもないチカラで、現実なんてつまんないもんをぶち壊す。

これが、映画だったんだ!


2020年に思いがけず、初めて映画を観た人と心が繋がった気がしました。

ありがとう、クリストファー・ノーラン。

『ダークナイト』以外はあんまりだったけど、ありがとう。

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