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あっとすっこし!

 朝起きても、勉強はかどらず……。解剖、形態学をほんの少しやる。夜には生理学に入る。細胞はもう一度やってまとめておこう。最重要項目のみを頭に入れる。テストを目の前にし理解を超える多数の専門用語に絶望する自分が目に浮かぶ。そうならないためにも、せめて植物学を学んだものとして基本的に知っておくべきところをしっかり押さえておこう。

 今日は待ちに待った日本に留学するマーティンのお別れパーティ。明日はいよいよスペイン人たちとマーブルク旅行、があったのだが、悲しいかな、テストを理由に断ることにした。
 私の日本人らしいところか、断るのに非常に罪悪を感じる。テストが終るまでの辛抱である。(Scheinに関係の無い一見無駄とも思えるテストごときのために、一体なぜ享楽的なお前さんは楽しみにまでしていたパーティを勤勉気取りでか、無下に断るのだ、)と悪魔が囁く。
 こう社会学や化学で打ちのめされると、語学の壁の高さが嫌になってくる。交換留学という身分で正規学生と共に学ぶ。ネイティブの人たちと外国人の私。
 いや、化学は言葉の問題ではない。世界の共通一般教養だ。あれも、上手くいかなかった。どんどん自分を矮小化する負け犬スパイラル……。近頃言葉の問題を自分の不勉強さの言い訳にしている。
 いや、この年で自分の価値を固めてはいけない。二〇代後半から一〇年間近く続く人生の勝負!それが終れば自分の価値がわかると、私の尊敬する大学の先生は言う。それまでは、アジアで活躍する一流応用経済学者を夢見ることにしようかな。プロ野球選手を目指す少年野球の子供達のように、純粋に、直向に、そして、それプラス計画的に、着実に!

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