マック 九月十九日

 朝、おきてシャワーを浴びる。日課である。うちの寮の風呂はなんと男女共同!シャワー室が、である。もちろん仕切られているが……。そのために、私は空いている朝に入ることにしている。まあ、どうでもいいことだが。
 ドイツに来て初めてマクドナルドに行く。うちの裏の大通り沿いにある。外見は日本のマックと同じ。働いている人は外国人。ドイツ人は働いておらず、そのためか、平日は夜中の一時、木曜、金曜は朝の四時まで経営している。客層も外国人が多い。ビックマックセットを頼む。なんと四,三五ユーロ。ちょうど五〇〇円である。高すぎる。しかも、おいしく感じない。地元のゲッティンゲン新聞を読みながら窓側の席で食べた。タバコ臭い店。新聞を読む。意外と読める。地元ねたなので、分かりやすい。しかも、無料の新聞。
 マックには当分行くことはなさそうだ。

 その後少し休み、街に出ることに。外は寒くなっているのに、私はアディダスのウインドブレーカを着ている。ほかのドイツ人はいい冬服を着ている。そこで、冬服を買いに町に行った。
 先ずは街の市立図書館に。そこの農業のコーナーで有機農業の本を読む。面白くて読破。(かなり読み飛ばして、絵しか見ていないけど。)図書館で寝ている学生がいない。静かな、暖かな図書館。窓から差し込むやさしい陽射しについうとうとする。恥ずかしいので退散。
 その後は服を買いに店に直行。中央広場が見える若者向けの店に行く。そこで散々悩みハイネックの服と、長袖のTシャツを買う。長袖のTシャツは生まれて初めて買う。ここで三〇ユーロを使う。その後違う店に行く。私はスポーツ風の格好より、落ち着いた感じの仕立てのいい上着がほしかった。発見。服を買うのは服を着た瞬間の直感である。気に入ったり、色がどうだったりだとかそういう理屈ではなく、第六感に判断をゆだねる。そうして買ったのが、暖かそうなベージュの上着。これで冬を乗り越えられるかな。(無理だろうが。)

 今日は余計なことはしないようにと、そのまま家に直行。その途中に大きな池のある公園でピザを食べながらぼーっと池を見つめる。坂道を見ると、夏合宿を思いだす。坂道を登る部員を怒鳴り、いままででもっともシビアな時間をすごしたなぁ。それに比べると、湖畔で時間を気にせずに異国の地でピザを食べているなんで、贅沢だなぁと思う。今頃新幹部たちは後輩育成のために、大会入賞のために必死にがんばっているだろう。去年の我々がそうしたように。
 大きなケーキとパンを買い込み、家に着く。(これだけ買ったのに二百円)。

● 選挙
ドイツでは選挙が熱い!今は都市部に行けば大学のサークル勧誘のように各政党がテーブルを並べ自分たちの主張を伝え、共感させようとしている。
○ SPD……(三九パーセント)ドイツ社会民主党、シュレーダー
○ GRUNE……(七パーセント)グリーン党、フィッシャー
○ CDU/CSU……(三七パーセント)キリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟、シュトイバー
○ FDP……(八パーセント)自由民主党、ゲルハルト
○ PDS……(五パーセント)
で争っている。CMも選挙モード、どこの政党から首相が出るのだろうか。今日はCDUの演説がテレビでやっていた。すごい右翼っぽいことを行っていた。
「皆さん、ドイツは強い国です。フランスより、英国より、もちろんスペインよりも、です。もう少し状況を楽観してもいいではありませんか。(略)これからEUが大きくなります。どういう状況が考えられるでしょうか。回りの国、チェコ、ハンガリーなどの東欧からも人が入ってきます。われわれの子供、われわれドイツの未来、大丈夫でしょうか。SPDは今まで何をやってきたのでしょう」などと怖いことを延々と演説していた。うーん、すごいドイツ国民を意識している。こわいこわい。みんな拍手している。とにかく強いドイツを作る政党。Stoiberという候補。外国人の私に投票権があれば、票は入れないね。
日本も強い日本、外国人労働者を追放、などと昔のナチみたいなことになる恐れも無きにしもあらず。戦争反対、放棄、平和主義が少し聞こえなくなってきた。世論が一センチ右に傾いたような気がする。戦争は放棄、平和主義、この小学校から教わってきた基本原則、壊れずにすばらしいままの国であるといいのだけど、と地球の反対側から自国の将来を心配する野口家の長男。

● 選挙
 さっきも触れたけど、選挙についてもう少し。ドイツの選挙制度は二票制。日本と同じ。ひとつは多数代表制。直接議席二百九十九席を獲得するために、地方で立候補し、候補者の名前を書いた票をあつめる。もうひとつは比例代表制。残りの二百九十九票をこの制度で争う。比例代表制は政党に投票するもの。うちの区はニーダーザクセン州。ここから二九名の候補者が出る。何名かが当選するのだろう。
 戦いはSPD(ドイツ社会民主党)のシュレーダーとCDU(キリスト教民主同盟)のどちらが連邦首相になるかである。連邦首相になった後、どこと連立するかも問題である。CDUとFDP?SPDとグリーン党?政党が変われば、外交策、税金などいろいろ変わってくる。日曜に選挙中継をやるらしい。ビールを片手にドイツの将来を考えるとするかな。それぞれの党の主張は解読中。Die Zeit と Der Spiegel と Focusからでした。


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