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美味しい温度は、みんなちがってみんないい、という話

待ちに待った緊急事態宣言の解除。
予断を許さない状況であることは変わりませんが、そろそろ外に飲みに行こうかなと、気持ちが少し軽くなります。

お酒のご紹介です。

山間(やんま)

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新潟県上越市にあります新潟第一酒造。
創業は1922年。通年商品は「越の白鳥」ですが、中取り部分を直詰めした商品が「山間」となります。
私、こちらの蔵には何度もお邪魔させていただきました。
杜氏を置かず、ある意味飲み手に近いスタンスで醸造している蔵と言えるかもしれません。

飲んでみましょう。

上立ち香はリンゴとラムネの混ざったような爽やかな香り。
口に含むと、炭酸の刺激が舌先にしっかりと。遅れて舌の中心に甘み。酸もサイドから出てきます。
含み香はラムネとマーカーのにおい。口内で弾けるシュワシュワの炭酸と青リンゴのような爽やかな甘み。うまみもしっかり感じられ、重層的なボリューム感。
炭酸ガスがしっかりあるので、後口も爽やか。渋みをそっと置いていき、余韻は短めです。

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裏ラベルを記載しておきます。
(代表の武田良則氏のシルエット……)

ORI-ORI ROCK
純米吟醸 R1BY 仕込13号
原材料名:米(国産)米麹(国産米)
アルコール分:16度
精米歩合:55%

購入は新潟県糸魚川市にあります AUN-COLLECTION。

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日本酒は、温めて飲まれることも多いお酒です。
お酒を温めることを燗(かん)、温めた日本酒のことを燗酒(かんざけ)と言います。

日本酒は、飲用温度帯がとても幅広いお酒です。
冷蔵庫から出したばかりのよく冷えた状態から、レンチンや湯煎したりして熱々にした状態まで、幅広い温度で飲まれます。

そして日本酒は、それぞれに「美味しい」温度があるのです。
ただしその美味しい温度は人によってバラバラです。

「お燗向きのお酒」なんて言い方があります。
冷たい状態で飲んで「あ、これはお燗にしたいね」なんて言いますね。

逆のパターンもあって、冷たい状態で飲んで「あー、これは温めると良さが消えちゃう気がするね」とか。

私の解釈としては、

お燗向きのお酒は、冷えているときは渋みや輪郭が目立っていて、甘さが引っ込んでいる。こういうのを「かたいお酒」と言ったりします。それが温めると、甘みが立つようになり、輪郭がぼやけて丸みを帯びてくる。

ただ、私は「かたいお酒」がとても好きだったりします。温めなくても、そのままでも美味しく感じます。

冷酒向きのお酒は、冷えているときは甘みと酸味が適度に感じられて、ものによっては炭酸ガスが残っていたりフルーティだったりする。それが温めると、酸が前面に出てきて、深みが消えたり、後口に渋みが残ったりする。

ただ、私は上述のような冷酒向きと言われるお酒をお燗につけるのもとても好きだったりします。とくにシュワシュワのにごり酒のお燗とか最高。

もちろんどちらにも属さないお酒もたくさんあります。
冷やしても温めても崩れず、温度によって違った表情を見せてくれるお酒、なんてのもあるわけです。

いろんな表情を見てみたいから、かたや氷を浮かべてみたり、かたやレンジでチンチンにしてから冷ましてみたり、かたやお水をちょっと混ぜてしばらく放置してから飲んでみたりしますが、どれも楽しいし美味しいんです。

日本酒は嗜好品ですから、同じお酒でも人によって感想はバラバラ。
同じお酒でも、「お燗にしたほうが美味しい」と感じる人もいれば「そのままが良い」という人もいるでしょう。

「湯煎が一番だ!」
という人もいれば、
「いやいや、じつはレンチンが至高」
という人や
「いやいや、実はヤカンで直火もかなり美味しい」
という人だっているでしょう。

その懐の深さが日本酒の真骨頂だと信じています。

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さて、山間 ORI-ORI ROCK。
タイトル画像にもあるように、このお酒「活性にごり酒」です。
「炭酸ガスが抜けるまで絶対に王冠を開けないでください」とか書いてあります。
私もアイスピックを使った開栓を行いました。

そんな炭酸飲料・山間 ORIORI-ROCK。
冷酒のままでもとても美味しく、あっという間に飲み切りそうだったのですが、飲み切るのをグッと我慢してお燗にするとまた違った表情を見せてくれました。

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炭酸ガスのピチピチした舌触りと、冷酒よりもくっきりとした甘みが出てきて、さしずめ甘酒ソーダ。
でも余韻の短さは変わらず、次の杯が欲しくなってしまう。

温度が変わると美味しさのベクトルは違う方向を向きます。
お気に入りの日本酒を見つけたら、ぜひいろいろな温度で飲んでみてくださいね。

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