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Work Design Lab石川貴志さんが語る「会社の外」での動き方

昨年12月9日、Work Design Lab代表の石川貴志(いしかわ・たかし)さんと、GOBでCFOを務める村上茂久がイベントに登壇しました。テーマは「外部を巻き込む新規事業開発」。

本記事では、会社外で得た学びをいかに社内に持ち帰るか、また社外で動く際のポイントに焦点を当ててレポートします。

イベントは、平日夜の開催にも関わらず、およそ40人が参加。トークセッションやワークショップなどを通じて考えを深めた。

村上が語った個人がイノベーティブな提案をするためのポイント3つはこちら


石川さん「『良い人からのよくわからない』お誘いには乗ってみる」

Work Design Lab石川貴志さん

石川貴志さんが代表を務める一般社団法人Work Design Labは、2013年から働き方のリ・デザインや個人のミッションに基づいたチャレンジャーを増やすことを目的とした活動を展開しています。

約70人のメンバーのうち約20人が経営者やフリーランスで、残り約50人が会社員(うち13人が法人の代表を兼務)といった構成です。こうしたメンバーがチームを組み社外の活動としてプロジェクトを進めます。

石川さん自身も会社員として企業に所属しながら、その働き方に縛られず、さまざまなプロジェクトに並行して携わっています。

会の前段では、村上が個人がイノベーティブな新規事業提案をするためのベースとなるスキルに「巻き込み力と巻き込まれ力の高さ」を挙げ、石川さんがまさにその両面を兼ね備えた人物だと強調します。

GOBのCFO、村上茂久

石川さんも「いきなり巻き込み力を発揮するのは難しいので、まずは巻き込まれ力というか、『良い人からのよくわからない』お誘いにはとりあえず乗ってみるようにしている」そうです。

そんな石川さんが社外で活動するときのコツを指摘しました。

「社内では確固たるリーダーシップやブレない軸が非常に重要だと思います。一方で社外へ出ていくと、そのブレない軸が邪魔になってしまう場合があるのです。

A案とB案でぶつかった時に、社内であればAを無理に押し通せるかもしれないし、それで何とかなるかもしれません。しかし社外で同じことをしようとすれば、プロジェクトが完全にスタックしてしまいます。お互いに人事権がない人たちでチームアップしますからね。

だからそんな時は『Aだと思っていましたが、意外とBかもしれませんね』みたい言えるしなやかさを持っておくことが大事だと思うのです。そうすることで、周りの力が流れ込んで来るのです。社外の人とチームを組むときには、こうした『健全な自己否定力』が大切だと思います」

越境学習の課題「社内からの迫害」にいかに対応する?


会場ではトーク内容がグラフィックレコーディングで記録された。

続いて話題は「会社外での学びをいかに社内へ持ち帰るか」に移ります。

村上は、個人が「巻き込まれ力」を発揮するための方法として「弱いつながりのコミュニティへの越境学習」を勧めると同時に、越境学習で得た学びを元のコミュニティに持ち帰る「還元」ハードルの高さ(村上はこれを「迫害」と表現)を指摘。

(村上)私自身も経験したことですが、別のコミュニティで学んだことを社内に持ち帰れないんですね。これを専門用語で「迫害」と言います。越境学習のよくある例として「MBA」などが挙げられますが、外で得たスキルや経験を社内に還元することには、高いハードルがあるのです。外で多くのことを学んだとしても、学びを還元することができないとどうなるか? 外で学んだことを隠すようになります。何もしていないフリをして、学びの還元を閉じてしまう状態です。越境学習をしようとしても、結局のところ迫害されてその還元先を失ってしまっては意味がありません。

外で多くのことを学んだとしても、学びを還元することができないとどうなるか? 外で学んだことを隠すようになります。何もしていないフリをして、学びの還元を閉じてしまう状態です。越境学習をしようとしても、結局のところ迫害されてその還元先を失ってしまっては意味がありません。”

「知の探索、弱いつながり、複数コミュニティ」──企業内の新規事業開発に3つの要点

こうした「迫害」への解決策の一つとして挙げたのが、還元先のコミュニティを複数持つことでした。

(村上)越境学習に行ったとして、その学びの受け皿が一つしかなければ、そこで迫害されてしまうと、得られた学びや知の探索が無駄になってしまいます。しかしながら受け皿を複数持てていれば、そのどこかには引っかかるかもしれません。実際、私自身も複数の組織に所属する中で、常に適切な学びの還元先を選択しています。

村上は、複数のコミュニティ(還元先)を持つことで、外で得た学びの受け皿を確保することを提案した。

石川さんは、村上の話における「還元」を「再結合」という概念で捉え直し、その難しさに触れます。

「村上さんのお話の中で、越境して元に戻れない『迫害』の話がありました。越境するというのは自分自身の意思さえあれば良いのである意味簡単です。重要なのはその後の再結合だと思ってます。これは相手がある話なので難しい。

ただ、会社から外へ越境する場合で言えば、もといた会社には大きなリソースがあるわけですから、そこに再結合していくことがポイントになります」

「再結合」を有利に進める社内での立ち回り

続けて会場から「再結合の具体的なポイント」に質問が及ぶと、石川さんは「会社によって再結合の文化は違う」と前置きした上で、いくつか具体的なヒントを示します。

「例えばクライアント企業がチームに入ると、再結合がしやすくなることがあります。クライアントをセットすることで、社内を動かしやすくなるのです。再結合を進めるためにはまずこうした入り口のデザインが重要になると思います。

それから『迫害』の話とも通じますが、プロジェクトを立ち上げる中でいかに社内で攻撃されないように立ち回るか、ですよね。

僕もさまざまなプロジェクトで再結合的な動きをしていますが、それが立ち上がるまでに社内で攻撃されたり、立ち上がりかけると今度は『どこの部署で立ち上げるのか』みたいな話になって、社内のプロットを求められ、綱引きに巻き込まれてしまいます。ですから、僕がとにかく心がけているのは、完全に立ち上がるまでは潜水状態で進めるということ。潜水中は社内の既存事業部門からバカにされがちですが、完全に立ち上がるまではそれくらいが良いです。

ただし、ここで一つだけ注意しておきたいのは、メンバーがこうした状況を嫌がるということです。すごく良いプロジェクトと思っているのにそれを理解されないとストレスが溜まってしまうのです。

でもこうした社内での気持ち悪さに耐えきれなくなって下手に説明をしてしまっても、社内政治に巻き込まれる可能性が高まるだけなので、とにかく立ち上がるまでは気持ち悪さも我慢することが再結合では重要だと思います。ただ、メンバーの気持ちのフォローは必要だと思います」 

イベントの最後には、これまでのトークセッションを受けてグループごとにダイアログを実施。「知の探索から事業化するには?」をテーマに、各グループで活発に意見が飛び交い、会は締めくくられました。

参加者の感想(一部抜粋)

  • 巻き込み力と巻き込まれ力、weak ties communityから共有される新鮮な情報や新しい発見という点に関して、大変参考になりました。

  • 組織のことで悩んでいる人がこんなに多いんだなと改めて。企業内起業であっても外部資本調達許可するぐらいのフレキシビリティもたせる会社でてくればいいのにと。

  • 知の探索後、再結合が難しいというお話は自分の体験上同じように感じたこともあり、興味深かったです。石川さんの、アート的な活動を本業でやるのは難しいが副業ならばやりやすいというお話も、なるほどと思いました。

  • 越境学習からの再接続についてたくさんの示唆をいただくことができました

  • 巻き込まれ方も重要(ノリで巻き込まれるのが先、と解釈)。能力開発より興味開発。

  • 興味を持って社外に出てみて得られる発見からの気付きや閃きが事業創出には大事なポイントの1つなのかと感じております。

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