アートと読書。右脳と左脳をフル回転:はたらける美術館×Financial Education & Design
GOB Incubation Partnersが社内スタートアップとして育成する「はたらける美術館」は2月9日、金融と経済を中心とした勉強会を企画、運営している「Financial Education & Design(以下、FED)」とともにイベントを開催。
山口周さんのベストセラー「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」を題材として“アートを観ながら読書会”を実施しました。
今回は、FED事務局長でGOBのCFOを務める村上茂久が当日の様子をレポートします。
はたらける美術館とFEDについて
はたらける美術館
はたらける美術館は、アートが持つ力をビジネスの文脈で活用しようとワークスペースや「ART for BIZ(アートフォービズ)」という独自の絵画鑑賞プログラムを展開しています。
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FED(Financial Education & Design)
FEDは金融と経済を中心に学ぶ団体で、私が事務局長を務めています。前身となる読書会を含め、過去10年間で300回以上の勉強会や読書会を開催してきました。
本イベントでは、会の前半で「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」を用いた読書会を、後半で、はたらける美術館が提供する対話型鑑賞「ART for BIZ」を行いました。
参加者からのフィードバックで気がついたことは、図らずも、読書会は左脳型の、そしてART for BIZでは右脳型の体験を提供できたことで、脳全体をフル回転する設計になったということです。
「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」を読んで
前半の読書会では、最初に本を読んだ感想をグループ毎にシェアをした後、以下のテーマに別れて分科会ごとに対話を行いました。
美を身につけるとは何か
空気を読むことについて、アートで克服することはできるのか
計測することができない美をいかにして大企業において前に進めることができるのか
本書を読んだ後のアート体験の共有
どういうアート教育をすれば良いのか
美意識を高めるための環境づくりをどうすれば良いのか。
ダイアログを通じて、参加者からは以下のようなコメントや気づきを頂きました。
美について、五感で感じることが重要だと思う
世間的に価値があるものが必ずしも美ではないのではないか
ビジネスにおけるプロセスとアートにおけるそれは同じだと感じる
好きになことに拘るところに美があると考える
サイエンスには正解があるが、アートには必ずしも正解がない
日本のアート教育において、絵の感想をシェアするような機会はないのが残念に感じる
美やアートについての対話を行ったのち、休憩を挟み、ART for BIZの実施へと移りました。
対話型鑑賞プログラム「ART for BIZ」を体験して
ART for BIZはもともとアメリカの美術館で生まれた対話型観賞の考え方をベースにしたプログラムです。山口周さんも今回取り扱った本で対話型鑑賞の一種である「Visual Strategy Thinking」について言及しています。
今回は9人前後のグループを4つ作って、4枚の絵画をみて対話型の鑑賞を実施しました。ART for BIZの主な流れは以下の通りです。
まず1分間、好きに絵画を鑑賞し、思ったことを付箋に書く
その後、周りの人達と自分の感想のシェアをする
多くの人と対話を通して、絵を多角的な視点で楽しむ
今回は1セッション10分で開催。参加者全員ART for BIZ初体験という中、参加者からは以下のようなコメントを頂きました。
人と対話をすることを通じて自分の中になかった視点を知ることで見方が変わって面白かった。また、自分の絵の見方も実際に変わっていった。
日本人だけでもこれだけ絵の見方が違うとなると、海外の人も交えてやるとどんな対話になるのかとても楽しみになった。
ビジネスにおけるプロセスとアートにおけるそれは同じだと感じる。
前半は総論で議論をしている感じで、後半は各論で対話をするような感じでアートを知れて、終わった後に前半と後半がうまく繋がった感じがした。
アートを鑑賞しながら初対面の方達と多様な視点を共有・議論する体験がとても有益だった。さらに、建設的な議論が自然と行われる環境だと、皆さんの魅力がどんどん増すことが分かり、これもとても有益な体験だった。
正解を出す必要の無い会話の幸福感に気づきました。空気はやはり大事。正解を出す必要の無い会話の幸福感に気づきました。
「企業研修に活用したい」との声も
運営者として驚きだったのは、「感想や気づきをフィードバックしていただける方はお願いします」とアナウンスしたところ、途切れることなく10人以上の方々からご意見をいただけたことです。
おそらくですが、ART for BIZを通じて「正解を出すのではなく、自分の素直な感情や感想を相手に伝えられる環境」を提供できたことで、心理的安全が確保され、意見を言いやすくなったのかもしれません。
今回のイベントではART for BIZを中心に据えたため、前半は左脳的な議論を行い、後半は右脳的な対話を行いましたが、自分の意見を解放するための仕掛けとして、前半にART for BIZ、後半に左脳的な議論を持ってくるのも面白いのではないかと感じましたし、参加者からも同様のコメントがありました。
さらに嬉しかったことに、今回のイベントをきっかけに、「付箋を持って美術館へ行き、自分でもArt for Bizをやってみる」という参加者や、「企業の研修にもART for BIZを導入してみたい」との声もありました。
最近では同様の取り組みとして「世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること」を課題図書とした読書会×Art For Bizのイベントを3月2日に早稲田NEOで実施しました。
今後の展開にも注目が集まります。
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