特定行為研修に関する論文レビュー①
ここでは、看護師の特定行為研修や特定行為実践に関連する文献をランダムに紹介していきます。お忙しい方でも、最新の情報やエビデンスの確認に役立てていただければと思います。あくまでも要約ですので、詳細を確認したい場合は以下の文献情報を参照して確認しましょう。
論文の題名と著者名、発行年
題名:看護師特定行為研修における PICC 留置実習の安全性の検討
著者名:川谷 洋平, 遠藤 覚子, 笠原 明日香, 堀 隆樹
発行年:2024年
どのような論文か
この論文は、看護師特定行為研修における末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)の留置手技に関するOn the Job Training (OJT)の安全性を検討しています。看護師が医療現場で実際に患者に対してPICCを留置する際、研修中の実習生が行うOJTと、熟練者による留置を比較し、手技の有効性や合併症の発生率について検証しています。
論文の新規性、特徴
本研究は、日本の医療現場で看護師がPICCを留置する際のOJTに焦点を当て、その安全性を評価した点が新しいです。従来、看護師が行う特定行為において、このような実地訓練の安全性や効果を詳細に検討した研究は少なく、特にOJTと熟練者の比較に関する具体的なデータを提供した点が特徴です。
論文で用いられた方法と結果
本研究の要点は、研修中の看護師が行うPICC留置の手技時間や成功率、合併症の発生率を分析し、OJTと熟練者による留置を比較することです。主な評価項目として、手技にかかる時間、留置困難の発生率、カテーテル関連血流感染(CRBSI)の発生率が挙げられます。研究では、実習生が行ったPICC留置では手技時間が長く、留置困難が多いものの、合併症の発生には影響がないことが示されています。
有効性の検証方法
2021年4月から2022年3月までの1年間に実施されたPICC留置の636例のデータを収集し、OJTでの留置(88例)と熟練者による留置(548例)を比較しました。結果として、OJTでは手技時間が長く(平均37.2分 vs. 23.9分)、留置困難の発生率が高かったものの(60.2% vs. 18.4%)、合併症の発生率やカテーテルの有効性に差は見られませんでした。
考察の軸
OJTにおいて手技時間が長くなることや、留置困難例が多く発生する点は指摘されていますが、実習の一環として許容範囲内であるとされています。また、OJTを実施する際の指導体制の確立や、実習生の技術向上に向けた訓練方法の見直しについても議論されています。
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