家族について書くということはなんらかの羞恥心をちくちく刺されるような不思議な居心地の悪さのあるものである。 けれど、今日は少し私の父について書いてみたい。 世のお父さんたちの様子をひと家庭ひと家庭ドアを開けてじっくり観察してきたわけではないけれど、私の父は少し、いやかなり、一般の50代男性とは、ずれたところがあると思う。 ・料理が好き ・掃除が好き ・お酒が大好きで、晩酌の後に突然すっくと立ちあがってものすごい勢いで家事をはじめる そんな父のことを、母はときたまこんな
いつからだろう、本が読めなくなったのは。 小学生のとき、夢中で読んでいたのは ファンタジーならタラ・ダンカン、獣の奏者、ダレン・シャンなどなど。 ミステリーは、アガサクリスティや江戸川乱歩から宮部みゆきや東野圭吾までなんでも読み漁った。 漫画なら伝記と歴史と手塚治虫。 教室に居場所のないわたしにとって、図書館は唯一自然に息ができる逃避先だった。 中学生のとき、ハマっていたのは ラブコメのライトノベル、図書館戦争シリーズに恩田陸。 図書館の隅に隠れたように置かれている小説を
「どんなしていこうか。」 それは、交通機関のことだったのかも知れないし、どんな格好をしようかという問いだったのかも知れないし、一緒に行くか別々でいくかという話だったかも知れないし、その全てだったかも知れない。 ともかく、祖母はそう問いかけた。 わたしはクーラーが少し効きすぎたその部屋で車椅子の隣にしゃがみこみ、祖母の肉の薄くなった皮ばかりで、しかしあたたかくぬるりと柔らかい手の甲をさすっていた。 先生が怒っている、お母さんも怒っている。餅をくれると言うから、受け取るの
「酒に酔ったとき、その人の本性が現れる」 これは巷でよく聞く言葉。 「お酒に酔うと暗くなる」 酔った自分が言われた言葉。 湿気をまとったやわい夜風にふと、思い出した ショックだったなぁ、あれ。 どちらかといえばたぶん、お酒は強い方だと思う 寝て起きればすっかり元通り、呑んで気分を害したことなぞ一度もない、好都合な身体をしている 加えてどうやら日頃から、不要な完璧主義で自分を幾重にも縛って生きているからか、一度酔いを感じたら、中途半端で終われない 疲れた足をソファか
「それで、」 まずい と思った。 この流れはまずい、まずい質問をされる。 「なんのためにここにいるの?」 でた。 なんのために、何のために、ナンノタメニ この質問が来るたびに訳もわからず泣きそうになる。 加入して丸1年と半年が経ったばかりの学生社会人混合の活動団体。 できることも増え、尊敬する社会人の先輩たちに囲まれて、伸び伸びと誰かのために働けるこの環境は、自分にとって贅沢すぎる大切な居場所。 だから、頑張ってるじゃないですか。 お役に立ってるじゃないですか。
就職活動を終えての、備忘録として。 春。 出会いと別れの季節。 とはいえ、私には春の感傷的な気分というのは理解しがたいものだった。 情に脆く、頼まれたことはついつい引き受けてしまっては、むしろ喜んで貢献しようとするかと思えば、「出会いがあれば別れもあるさ」なんて、別れに無頓着でドライに生きるマインドセットも持ち合わせている。 合唱部でしょっちゅう歌詞解釈をしていた中高時代は、春がテーマの合唱曲の多いことにつけても「人は春に複雑な想いを抱くんだなあ」なんて、どこか他人事