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Adobe Summit 2019 SNEAKS 最新技術まとめ - #AdobeSummit

前回のnote「Adobe Summit 2019の見どころ解説」に続き、今回はAdobe SummitのSNEAKSで紹介された最新技術を解説します。

SNEAKSって何?

SNEAKSはAdobe MAX、Adobe Summitともに行われる最新の変態的技術を使った次世代機能をチラ見せするキーノートです。

ここ数年はAdobe SenseiのAIテクノロジーを使ったデモが多く、度々バズを起こしていました。

と言ってもウケ狙いな訳ではなく、過去にSNEAKSに登場したデモは6割がその後プロダクトに組み込まれている事から、実現性の高いものが選出されているように感じます。

今回のAdobe Summitで登場したSNEAKSを動画を交えて解説します。

SNEAKS#1 - PhonicFilters

PhonicFiltersはAIエージェントと自然言語の対話形式で画像検索をするデモです。

最初に命令したのは「Show me my content organize by categories」で持っているコンテンツがカテゴライズされて表示されています。その後「Show me food」で食べ物カテゴリを表示。

ここから更に自然言語でフィルターを行っていく訳ですが「Show me pictures of wine」でワインの画像が抽出され、「Add people toasting」でワインで乾杯している画像が抽出されています。

別パターンでは「Find pictures of chicken」でニワトリが抽出され、「More roasted」でローストチキンが抽出され、更に「Replace chicken with potato」でチキンがポテトに置き換わるというデモが行われました。

画像を構成する要素を的確に捉えフィルターしている点も素晴らしいのですが、対話型のUIにおいて徐々に条件を追加していったり、前に提示した条件の置き換え(チキン⇢ポテト)を行っている所に、音声UIの未来を感じました。なぜなら現在のほとんどの音声UIがGUIを音声に置き換えただけのものであり、自然言語としての音声UIを考えると対話の前後の文脈や連続的なインタラクションが求められるはずだからです。

SNEAKS#2 - DataUnbound

DataUnboundはAdobe Analyticsをベースに実装されチャートを扱うデモです。

まず、売上のラインチャートを選択し「Generate Caption」を実行するとAdobe Senseiによってチャートから読み取れる相関性などのデータの解釈を自然文で作成しています。データの解釈は人間が行うものであり、日々データとにらめっこしている自分の立場からすると、この時点で既に物凄く欲しい機能です。

そしてチャートデータを「Open Data Link」という形式で他のアプリと共有するデモが行われました。

最初に行われたのはPowerPointにプラグインが仕込んであり、URLを貼るだけでPowerPointのフォーマットに従ってAdobe Analyticsのデータを移植する事が出来ます。

続いてWebページでもプラグインを介して(エディタツールは何だか分からず)チャートの移植が行われ、モバイルデバイスでもレスポンシブにチャートが表示されていました。

自分は普段RやPythonの分析ツール上でプロットを行いチャートを出力して、それを資料に貼るような事が多いのですが、このOpen Data Linkが規格化される事によって他アプリとのデータの連携が出来るようになると、非常に嬉しいですね。

SNEAKS#3 - JourneyGenius

こちらはAdobe Analyticsに実装されており、カスタマージャーニーをシミュレートするデモです。

左から右に流れるカスタマージャーニーで、それぞれの丸は今現在どれくらいのユーザーがいるかを表しています。その丸を選択するとこれからどのような行動を辿っていくのかを予測したカスタマージャーニーが表示されます。

そして対策が必要な箇所を提示し、それに対する改善の効果予測も併せて表示されます。そして施策を実行した場合に全体の分布がどう変わるのかもシミュレーションする事が出来ます。

カスタマージャーニーの可視化だけでも現在の多くの企業にとっては非常に価値があると思いますが、更に施策の選択肢の提示が行われるようであれば従来は人のノウハウ任せだったマーケティング活動が、組織全体としてベースのレベルアップが図れる可能性を感じました。

SNEAKS#4 - IntelligentAgent

そして今回のSNEAKSで個人的に最大の衝撃だったデモです。

こちらは2018年にAdobeが買収し、今回のAdobe Summitでも目玉プロダクトであるMarketoに組み込まれた機能ですが、ワークフローの中で契約書のチェックがあった時のケースを例にしています。

契約書のPDFをモバイルのAcrobat Readerで開き、音声UIで「これ幾らなの?」と聞くと、契約書の該当箇所がハイライトされ金額が提示されます。

次の例はもう少し複雑です。「この金額は他のメーカーと比べるとどうなのか?」と聞くと、Document Cloud上からこの質問にふさわしいと見なす契約書を探してきて列挙されます。

更にドキュメントを開くと詳細な比較が行われ、金額を表している箇所がハイライトされ、最終的にサマリとして「The price is $40,000 more this year than in 2010」が提示されました。契約書をチェックする側の負担を大幅に軽減している事が見て取れます。

そしてデモでは最終的にモバイルデバイス上でドキュメントに署名を行いました。

私は日々、契約書などのドキュメントをチェックする機会が多いのですが、業務委託契約などの内容だと大体チェックするポイントが限られてくるものの、該当箇所を探すのに時間を費やしてしまう事が多く、負担になる事があります。こうしたエージェントのサポートによって確認作業の効率化や、もっと先の未来では契約書のリスク分析や、訂正ポイントの抽出など行ってくれる所まで行ってほしいです。

SNEAKS#5 - AugmentedOffer

デモは空港でエアラインのアプリを使っていて、出発まで2時間あるシーンでの想定です。

搭乗口までのルートが表示され、かなり時間が余っているので「Discover Offers」を実行すると「ARゾーンにようこそ」とARが立ち上がります。

そしてブックストアに立ち寄ると(想定)クッキーや、本の割引のオファーが提示されるというデモです。

ここまではいかにもARらしいデモなのですが、まあ空港でアプリでARしながら歩かないよねと。ところが、このデモには続きがありExperience Cloud上で空港のマップに照らし、更にユーザーの購買データに基づきオファーを設定し、それぞれのコンバージョンを確認するデモが行われました。

これを活用する事によって、屋内の地点のどこでオファーを行うとコンバージョンが高いのかなどのデータが獲得できる事が想像出来ます。将来必ず訪れるであろう、スマートグラスの世界では破壊的なソリューションになるかもしれませんね。

SNEAKS#6 - IntelligentAgent

こちらはSlackを介して、Adobe Senseiの機能を利用するデモです。

まず最初のデモは「友人をライブに誘うのにどんなタイトルのメールが開封率が高いか」という事をSlackを介して確認します。「HOLY SHIT AMAZING CONCERT!!!」といういかにも開かなそうなタイトルを試すと、開封率が13.47%と提示されました。

デモではあまり語られていませんでしたが、Adobe Senseiの回答を見るとAdobe Campaignを起動するボタンや、またどのワードが効果的で、どのワードの効果が低いのかが提示されていました。大体普段の業務の中でSlackは常に立ち上がっているので、手軽にワーディングを確認したい時に非常に役立つ気がします。

続いて、ライブに誘うメールに画像を添付したいというシーンです。画像にキャプションを付けて送りたいのですが、このレイアウトをAdobe Senseiが勝手に複数パターン、クロップを行って提案をしてきます。ここで注目したいのは、画像の中で人物が主題である事を恐らくSenseiが判断し適切にクロップを行い、更に主題にキャプションが被らないように調整を行っている点です。

こちらも、普段の業務でちょっとした画像の加工作業を行う時にわざわざPhotoshopなどのツールを立ち上げるのが億劫な事があります。Slackのような常時起動のインターフェースを通して、ちょっとした作業をSenseiに移譲してしまうのは、仕事の効率化の上で非常に可能性があると感じたデモでした。

なお、このSNEAKSのプレゼンターはAdobe JapanのR&Dチームの方で、日本からSNEAKSに選ばれたのは初めての事だそうです。日本からこのようなグローバルで最新技術の祭典に選ばれる方が居るのは、とても嬉しい事ですね。

まとめ

今年も多くのSNEAKSが紹介されました。あまりビジュアル的な派手さはないものの、十分に実現可能なAIを活用したデモが行われていると感じ、着々と来るべき未来に対して実装を進めている印象を持ちました。

これまでのSNEAKSでリリースされた機能が60%という数値からもわかるように、単なる話題作りのものではなく実際に未来を作り出している取り組みです。改めてSNEAKSを観察する事で見えてくるものがあると思いますので、ぜひ参考にしてみて下さい。

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