ガードレールの献花

 世界を手に入れた気分になったことがある。先日、茨城から国道50号経由で帰るとき、栃木の佐野あたりで左車線をゆらゆらと走る暴走族達がいた。その轟音と危なかっしい蛇行運転は心地の良いものではなかったが、きっと本人達は世界を手に入れたような気分なんだろうなと思う。電灯がほとんど無い暗闇の中で、自分と仲間たちのバイクのヘッドライトだけが前方を照らし、けたたましい排気音と共に風を切れば、きっと世界を手に入れたような気分になると思う。今乗っているバイクのローンなんてどうでもよくなるほどに。
 俺もしばしばバイパスや高速道路で車の窓を全開にして爆音でアニソンを流し大声で歌うが、これもまた、世界を手に入れたような気分になれる。これは、是非みんなにもやってほしい。車でやれることの中で、異常なスピードを出すことと併せて楽しんでほしい。これらは、世界における自分の占有率を音や速度で拡張してるような感覚になる。そんな気分が味わえれば、ガードレールの献花になってもいい。遠くに行きたいとか、街を広げたいとか、友達を増やしたいとか、拡張って本能なのかもしれない。














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