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【両利きの組織をつくる1;はじめに】

今回から、新たなマガジンの連載に入ります。本マガジンでは、近年注目の“両利きの経営”についてAGCを題材に事例研究した書籍、“両利きの組織をつくる”について解説していきます。今回は、前回マガジンでビジョナリーカンパニーを学習した健が同期の倫也に工場で会います。(両者とも課長)そして、倫也がこの本について解説しその中で2人が議論していきます。ぜひこの機会にチェックしてみてください。今回は10回程度のマガジン予定です。

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◆両利きの組織をつくる

👱🏼‍;お、倫也じゃないか。久しぶり、前回のトヨタ生産&TOCの勉強会以来だな。元気してる?

👨‍🦱;おうおう、元気元気。そう言えば聞いたよ。この間、工場長からビジョナリーカンパニーのレクチャー受けたんだって?

👱🏼‍;そうなんだわ。勉強になったよ。理念と維持する仕組みを自分なりに作って今組織に浸透させようとしているところ。まだ始めたってところだな。俺の次の課長、その次の課長まで伝えていくことを意識しないといけないからね。

👨‍🦱;だね。どのあたりが、印象に残っている?俺も読んだんだわ。

👱🏼‍;そうだな。やっぱり、「時を告げるのではなく時計を作る」ってところと、「ANDの才能」ところだな。一見矛盾している課題をどちらかではなく、両方解決していくっていうのが、自組織の意思決定をするときに役立つよ。

👨‍🦱;なるほどね。であればさ、両利きの経営って話聞いたことある?

👱🏼‍;うーん、耳には挟んだことがあるけど詳しくはわからないな。

👨‍🦱;スタンフォードのオライリー教授が実証している経営組織論なんだ。

👱🏼‍;スタンフォード。。すごいね。でも、理論ってことは論文だったりして結構難しいかな興味あるんだが。

👨‍🦱;うん。ただ、オライリー教授は両利きの経営の本質は組織進化論だといっていて、その実例について書かれた本があるんだ。それは、AGC(旧旭硝子)を題材に解説をした“両利きの組織のつくり方”という本だ。この本は、AGCの既存事業の「深化」と新規事業の「探索」の両方を実現する改革について記載されている。サブタイトルは、大企業病を打破する「攻めと守りの経営」だ。スタンフォードのケーススタディになっている本だから臨場感もあって読み応えがある。今の企業経営の環境において、ANDの才能活用を実践しているAGCの物語が載っていると思っている。

👱🏼‍;ほう。グローバル大手企業で、旭硝子からAGCに名称を変えたよね。高橋一生さんが「なんだし、なんだし」と踊っているCMで有名だ。その本、読んだの?

👨‍🦱;ああ、読んだ。非常に勉強になったよ。特にタイトルにあるように組織について言及しているからね。自分の組織管理の示唆になると思ってね。110年企業AGCにも興味があったし。

👱🏼‍;そうか・・・。俺も興味あるなー・・・・。・・・・。

👨‍🦱;黙って、、なんだよ。

👱🏼‍;それ解説してもらったりできない?復習にもなるだろうし。

👨‍🦱;そうかと思った。一度読んだだけだし、どこまで解説ができるかわからないな。。でも、前回はTOC解説してもらったし、やろうか。


👱🏼‍;サンキュー。

👨‍🦱;OK。じゃあまた、毎朝集まってやるか。てか、今時間あるか?最初の部分だけ今解説するよ。

👱🏼‍;お、早速いいね。

◆はじめに

👨‍🦱;じゃあ、始めよう。この本は今年2020年に発売された。著者は、加藤雅則 氏, チャールズ・A・オライリー 氏, ウリケ・シェーデ 氏だ。加藤氏はAGCと2002年から関わりがあると著書で述べており、AGCの改革を間近で見てきた方だ。(加藤氏の会社の action design のHPは下記。)

この本の冒頭は下記のように始まる。

ここ数年の経営者との対話の中で、ある実感を抱いている。既存事業を守りながら、いかに次の成長領域を見つけ出すのか。いま多くの経営者がこの課題に直面し、企業の生き残りを賭けてもがいているということだ。

日本の多くの大企業の経営者が課題を抱えているってのはわかるよな。


👱🏼‍;ああ、わかる気がする。2000年頃から始まったデジタル革命は第一フェーズが終わって、次のフェーズに行こうとしている。そして、世界のものづくり企業はどんどん先に行き市場を作っている。それだけなく既存企業の領域も侵食し始めている。そのため、自分たちも何か次の成長領域を見つけて成長しなければならない。なのに、旧来の日本の大企業は変われない。そして、何より俺たち自体も変わっていない。何か新しいことを始めようとしてもやっぱり現業で時間が奪われ、アイデアを出したり、技術開発、新市場のマーケティングができない。

👨‍🦱;そうだな。結局変われなくて、ボトムのメンバーはトップが変わらないといって、トップはボトムアップがないと嘆く状態になってしまう

👱🏼‍;一体どうしたらいんだろうな。やはりマーケティングや技術、そしてアイデアが問題なのかな。

👨‍🦱;実際、技術やアイデア、マーケティング技能は外からいくらでも持ってこれる。でもさ、いくら外から知識を持ってきても変われないって著書には書いてあるのよ。

👱🏼‍;なるほど。では何が問題と言っているの?

👨‍🦱;こう言っている。

成熟企業にとっての最大の壁は、自社の「組織カルチャー」なのだ。本書で扱う「組織カルチャー」とは、事業理念や価値観・社風といった、フワッとした概念のことではない。それは具体的な「仕事のやり方」のことである。

👱🏼‍;なるほど、仕事のやり方のことであると。つまり古い仕事のやり方を続けていては変われないってことか。

👨‍🦱;そう。結局新しいことやろうってのに、古いやり方してはうまくいくわけがない。既存事業が新規事業を殺してしまうって著者は言っている

👱🏼‍;なかなか、辛辣な言い方ですな。

👨‍🦱;でも、変われない限りは、新興企業や中国などの強力な企業の破壊的なイノベーションによって駆逐されてしまうのは明白だ。

👱🏼‍;まあ、そうなるのは間違いない。

👨‍🦱;そこで、どうやって主力事業を守りながら、新たな取り組みを行える組織になるのかっていうのが重要になるんだ。著者は守る経営と攻める経営を同時に行うといっている。それは、どんなことなのか。

👱🏼‍;そうだけど、それがわからないから皆困っているのでしょう。

👨‍🦱;そうなんだ。だからその問いの答えを導きだそうとしたのが本書なんだ。著者は下記のように言っている。

この問いに、二十年余にわたる組織開発の実践経験と、世界トップレベルの経営学者の知見、そして日本を代表するグローバル企業のひとつにおける事例研究を通して、回答を試みたのが本書である。

👱🏼‍;成熟企業の停滞感への打破の一手といったところなんだな。

👨‍🦱;そうだ。具体的な解説に入る前に、まず各章のタイトルを紹介しておこう。

◆目次

・はじめに;成熟した日本企業が生き残るための最重要課題

・第1章;いま必要な組織経営論
 多くの日本企業が「成功の罠」に陥っている
 これまでの組織変革に欠けていたこと
 組織経営論の基本トライアングル
  「攻めの経営」と「守りの経営」の両立
    組織カルチャーをマネジメントするとは?
    本書の特徴-事例・理論・実践-
 本書の意図

・第2章;AGC、変革への挑戦-戦略と組織を一体として変える
 新CEOの決意
 会社が置かれていた状況
 経営陣の課題意識
 三つの戦略事業分野
 実現へのハードル

・第3章;両利きの経営--成熟企業の生き残り戦略
 「両利きの経営」とは何か
     異なる組織能力を併存させる
  組織を読み解く視点—コングルエンス・ モデル
  アラインメントと慣性の力
  移行の難しさ---なぜ新規事業は潰されるのか
  AGCにおける「両利きの経営」
  分離しつつ統合する---事業開発成功の鍵
  AGCにおける既存事業と新規事業のつなぎ方

・第4章;組織はどのようにして変わるのか--アラインメントの再構築
 経営者の最大の役割は意志表示と価値判断
 無進化 ・ピクチャー(WHY・WHAT・HOW)
 組織進化のWHY ---トップの意志表明と「AGC Plus」
 組織進化のWHAT---ミドルによる「 ありたい姿」の策定
 組織進化のHOW-- 変革を実行する経営体制
 異なる二つのアラインメントを追求する
 アラインメント再構築に向けた10の施策
 トップとミドルの相互作用で組織は変わる
 AGCの「両利き度」を点検する
 これからのAGC

第5章;組織開発の本質--トップダウンとボトムアップの相互作用を作り出す
    両利きの経営を実現する組織開発
   ① 組織開発は組織を「変える」のではなく、組織が「変わる」を支援する
        取り組みである。
   ② 組織開発とは、組織の能力開発 ある。
   ③ 組織開発とは、能力発揮のルート・ファインディング ある
   ④ 組織開発とは、組織感情のマネジメントである。
   ⑤ 組織開発とは、経営に対する信頼醸成である。

第6章;脱皮できない蛇は死ぬ---日本企業のための組織進化論
 進化する組織では、 組織アイデンティティの形成がカギとなる
 組織における垂直方向の課題
 組織カルチャーをめぐる誤解
 個人の変容は組織の変容につながるのか?
 組織は機能体であると同時に共同体である
 第1章の三つの問いに答える
 脱皮できない蛇は死ぬ

👱🏼‍;おお、盛りだくさんだね。

👨‍🦱;おっと、気づけばもう時間だな。まあ、次回第1章から進めていこう。

👱🏼‍;よろしく。

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 今回から新マガジン「両利きの組織を作る」に入っていきます。AGCの改革に関して記載されている本です。元々は予定になかったのですが、ビジネスマンにとっては必読書との情報が入り急遽マガジンにすることにしました。今、そして今後間違いなく重要になる概念ですし、実際のケースなので面白いと思います。ぜひ、スキ、フォローしてもらえればうれしいです。

次の記事は下記です。


*過去のマガジンのリンクです。パッと見て興味あるものがあればぜひ覗いていただければと思います。

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