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【ビジョナリーカンパニー編10:BHAG大胆な目標】

前回までの投稿を上記に入れています。

ある日、入社20年になる健は工場長の哲也に呼ばれ工場長室に行く。健はここ数年、全社が注目する新規事業の計画・プロセス立ち上げをこの工場で行ってきた。立ち上げが終わり、そのまま課長をするよう内示を受ける。それと同時に工場長からビジョナリーカンパニーについての解説・指導を受けます。1章でビジョナリーカンパニーの定義、2章で時計を作ることの大事さ、第3章で時計のための理念の重要性、AND思考重要性、そして、第4章でその理念をどう維持、進歩させていくか解説してきました。第5章からは具体的な行動について解説していきますが、まず5章の「社運をかけた大胆な目標」です。


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◆BGAG(ビーハグ)-進歩を促す強力な仕組み

🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳;おはよう。今日から、第二部と言っていいだろう。具体的にビジョナリーカンパニーがとってきた行動について説明していく。まずは、第5章の“社運を賭けた大胆な目標”を話していこう。

🧒‍;おお、いきなりすごいタイトルですね。社運を賭けるってなかなかですね。

👨‍🦳;そうだ。ちょっと唐突だが、ボーイングについて見てみよう。1952年に、ボーイングの経営陣の決断事例だ。当時、民間航空会社向けの大型ジェット機を設計するアイデアを技術陣が持っていたんだが、民間航空機の実績もなかったし、過去失敗もしてい実績があるのは軍用機で、売上高の80%は空軍用という状況であった。

🧒‍;であれば、普通、ボーイングは爆撃機作っておいてくださいよって世界ですね。旅客機なんて浮気せずにという。


👨‍🦳;だよな。でもここで、ボーイングの経営陣は危険を承知で賭けに出たんだ。民間航空機市場で大手になるという大胆な目標を掲げ、ジェット機をつくった。このジェット機、707が、ジェット旅客機時代の幕開けになった。これに対して、対象企業のマクドネル・ダグラスジェット旅客機については慎重に見守るという姿勢をとったんだ。ダグラスが見守っている間に、ボーイングが同社を追い抜いて、民間航空機市場で圧倒的な地位を築いていった。

🧒‍;そして、今や旅客機といえば、ボーイングですもんね。でもボーイングのこの決定は、大成功ですが、大失敗の可能性もあったわけですよね

👨‍🦳;確かにそうだが、その見方にはひとつだけ、賛成できない点があるな。これは、ボーイングの中で、点ではなく、線でとらえているんだと思う。

🧒‍;どういうことですか?

👨‍🦳;ボーイングには、大胆な挑戦を続けてきた長い歴史があるんだ。1930年代初めにはすでに、軍事航空機市場の大手になるという目標を掲げて、大投資をしているんだ。挑戦がDNAになっているんだ。そして、さらに1965年にはジャンボ機を開発するという決定であり、これによって、ボーイングは経営が破綻する一歩手前まで追い込まれていると記載されている。

🧒‍;まさに挑戦の連続ですね。これが理念を体現することにつながっていくのですね。

👨‍🦳;そうこの決定を下した取締役会で、「開発がうまくいかなかったら、いつだってやめられる」と、ある取締役が語ったとき、当時のウィリアム・アレン社長は顔をこわばらせて反論したとのことだ。

「やめるだって。とんでもないことだ。ボーイングがこの航空機をつくると宣言するからには、会社の資源をすべてつぎ込んでも、必ず完成させる」

これと対象に比較企業は、ある意味賢明な判断をして、投資をせず、結果ボーイングにおいて行かれることになったんだ。

🧒‍;やはり、腹くくると強いのですね。

👨‍🦳;ボーイングはその典型とも言えるが、ビジョナリーカンパニーは時として、大胆な目標を掲げる。これが重要なんだ。著者は“社運を賭けた大胆な目標 (Big Hairy Audacious Goals)”の頭文字をとって、BHAG(ビーハグ)と呼んでいるんだ。

🧒‍;ビーハグ・・。でもどの企業も目標は持っていますよね?何が違うのですか?

◆明確で説得力のある目標

👨‍🦳;単なる目標を持っていることと、思わずひるむほど大きなリスクがあるものに挑戦することの間には、明らかな違いがある。

🧒‍;なるほど。確かに大きければ大きく、かつ分かりやすくトップの意思があれば、チャレンジ精神が促されるというか、なにくそってなりますね。

👨‍🦳;そうそこなんだよ。本物のBHAGは明確で説得力があり、集団の力を結集するものになる。強いチーム意識を生み出すことも多い。ゴールがはっきりしているので、目標をいつ達成できたのか、すぐにわかるようになっている。

🧒‍;大きく、はっきりした目標に向かっていくときがある意味一番やりがい感じますからね

👨‍🦳;君の組織の現状について考えてみてくれ。退屈な「経営理念」は始終聞かされているが、BHAGのような明快な目標、聞いただけでわくわくさせられる大胆な目標を持っているかな?ほとんど持っていないよ。私の経験からもそうだ。意識してBHAGという言葉を使ってわかりとにかくわかりやすくするのが重要だ。GEとウェスチングハウスの例を取ってみよう。

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🧒‍;GEのものはまあ、基準がわかりやすいです。でもウェスチングハウスのものは、何を達成したらいいかわかりません。サッカーで勝つためにはゴールを決めろといっているのと同じで、大事なことを言っているようで何も言っていないというか。

👨‍🦳;ここでのポイントは、GEの目標が「正しく」、ウエスチングハウスの目標が「間違っている」ということではない。そうではなく、GEの目標が確で、説得力があり、進歩を促す可能性が高いものであることがポイントである。

🧒‍;進歩を促す目標ですね。

👨‍🦳:BHAGについて肝心な点をつかむには、以下が大事だと書かれている。「前進をもたらしているか。勢いをつくり出しているか。従業員はやる気になっているか。社内に活力がみなぎっているか。刺激的で、興奮させられる大胆な冒険だと見られているか。従業員は創造力を駆使し、エネルギーを注ぎ込むつもりになっているか」とね。

🧒‍;でも、なんでもいいからBHAGに取り組んでいるというわけではないですよね。重要な質問に、「基本理念に合った目標なのか」が重要ですよね。

👨‍🦳;そうだ。もちろん、目標があればそれで進歩を促せるわけではなく、目標の達成にどこまで必死になっているのかも重要だし、それが理念に沿っていなければただの無茶な挑戦になってしまう。そして、BHAGと呼べるのは、その目標を達成する決意がきわめて固い場合だけだ。ディズニー例も見てみよう。

ウォルト・ディズニーにも似た面がある。繰り返し、野心的なプロジェクトに大胆に取り組んでおり、ときにはかなりのリスクを冒している。一九三四年、ウォルト・ディズニーは、映画業界で前例のないプロジェクトに取り組んだ。長時間のアニメ劇映画をつくって成功させたのだ。この作品、『白雪姫』を製作するにあたって、同社は資源のほとんどをつぎ込み、「ディズニーの酔狂」だという業界関係者の声を無視している。長時間のマンガ映画を見たいという観客がいるだろうかというのが、業界関係者の見方だった。それから、『ピノキオ』、『ファンタジア』、『バンビ』を成功させたが、二十年後に、再び「ウォルトの奇妙なアイデア」のひとつで危険な賭けに出ている。まったく新しい遊園地をつくるというアイデアであり、のちにディズニーランドと呼ばれるようになる。1960年代、同社はまたしても同じような動きをとり、創業者の遺志をついでフロリダにEPCOTセンターをつくった。

🧒‍:やはり、点でなく線なのですね。大胆な決断が決して1度ではなく継続されているのですね。

◆「不遜要因」


🧒‍;でも、これって、だいぶ危険というか、傲慢というレベルの域の行動ですよね。

👨‍🦳:そうなんだ、著者たちはこの行動を「不遜要因」と呼んでいるんだ。

🧒‍;だいぶ、すごい言い方ですね。不遜て。。

👨‍🦳:そうだな。不遜とは過剰なほどの自信、傲慢なまでの自負を意味し、神々をおそれぬ態度という意味もあるからな。実際さ、大胆な目標(BHAG)を決めるには、合理的な判断を超えた自信がなければならないよな。

🧒‍:はい。間違いなく合理的とは言えないです。ボーイングだって、ディズニーだってそうです。

◆重要なのは指導者ではなく、目標。 ― 時を告げるのではなく、時計をつくる

👨‍🦳:ここで、もう一度著者はBHAGでカギになるのは、カリスマ的な指導者ではないことを強調しているんだ。例えばボーイングではこれまで六人のCE0のいずれにも共通する仕組み(「刻々と時を刻む時計」の一部)になっているのだ。

🧒‍:きっと、難しい課題に大胆に取り組むことが、組織の性格になっているのですね。、

👨‍🦳;ただ、通常の企業はきわめて偉大な指導者、特に創業者が去ったあと、どのようにして勢いを保つのかに苦労することが少なくないのは想像に難くないな。本の中では、比較企業において、業にこの「偉大な指導者が去ったあとの停滞」に陥ったケースが多かったというんだ。ビジョナリー・カンパニーでは、同じパターンはほとんどみられないという。

🧒‍;継続的に、大胆な目標を持つリーダーが輩出されているのですね。

👨‍🦳;そう。BHAGを設定し、それが指導者が去ったあとにも力を持ち、人ではなくBHAGが理念を進歩させる仕組みを作っているんだ。むしろ次の経営者がより高い目標に挑むようにしている。シティコープの歴史を見ていったとき、何代もの経営者が次々に大胆な目標を定めて前進していることがわかる。スティルマン社長から経営を引き継いだフランク・バンターリップ社長が、一九一五年(スティルマンが「夢」を描いてから四半世紀のち、引退してパリに移り住んでから六年のち)、こう書いている。

わたしは確信しているが、当行はかつてなかったほど強力で、サービスが充実し、広範囲に事業展開する世界的な金融機関になる力を持っている。なんとも大胆な目標である。なんと言っても、一年前、「副社長が八人、中間管理職が十人、従業員が五百人以下、……ウォール街の本店以外には店舗を持たない」銀行にすぎなかったのだから。

そしてだ、その次の社長になったチャールズ・ミッチェルも、一九二二年に従業員に向けたスピーチで、同じように前進を呼びかけた。

「われわれは大きな目標に向かって前進している。ナショナル・シティ・バンクの将来は、かつてなかったほど明るい。 …いまや、全速力で前進できる体制が整っている」。

🧒‍:これは、すごいですね。もはや、大胆な目標の伝承といったところですね。

◆CEO、経営幹部、起業家への指針


👨‍🦳:しかし、これまで企業レベルのBHAGに焦点をあてているが、BHAGは組織のどのレベルでも、進歩を促すために使えるんだ。

🧒‍:非常に興味があります。


👨‍🦳:P&Gでは、個々の製品ラインを担当するブランド・マネジャーが、BHAGを頻繁に設定しているし、ノードストロームでは、地域から、店舗、部門、店員まで、会社のあらゆるレベルでBHAGを組織的に利用しているんだ。当然一つの企業で複数部門で別々のBHAGを設定しているところもあるんだ。

🧒‍:どんなものなのでしょうか?

👨‍🦳;そんな具体的には載っていないよ。自分の環境に合わせてそれぞれ作っているんだ。でも、君もわかるだろう、自組織の目指すべき方向とその大胆な目標がなにかということは。

まあ、下記にいくつかの忘れてはならない点をまとめておこう。

・BHAGはきわめて明確で説得力があり、説明する必要もないほどでなければならないBHAGは目標であり(たとえば、登るべき山や、宇宙旅行の目的地としての月のようなもので)、「声明」ではないことを忘れてはならない。それで組織内に活力がみなぎらないのであれば、それはBHAGではない。

・BHAGは気楽に達成できるようなものであってはならない。IBM360や、ボーイング747のように、組織内の人々が、なんとか達成できるだろうが、それには英雄的な努力とある程度の幸運が必要だと思えるものでなければならない。

・BHAGはきわめて大胆で、それ自体が興奮を呼び起こすものでなければならず、シティ・バンクの例にみられるように、達成する前に組織の指導者が去ったとしても、進歩を促し続けるものでなければならない。

・BHAGには、それを達成したのち、「目標達成症候群」にかかって組織の動きが止まり、停滞する危険がつきまとっている。フォードが1920年代に陥ったこの問題を避けるには、次のBHAGを準備しておくべきだ。また、BHAG以外にも、進歩を促す方法を持っておくべきである。

・最後に、もっとも重要な点として、BHAGは会社の基本理念に沿ったものでなければならない。


◆基本理念を維持し、進歩を促す

🧒‍:でも、BHAGだけでビジョナリー・カンパニーができるわけではないですよね。BHAGを追求するにあたっては、基本理念を注意深く維持するべきでですよね。

👨‍🦳;繰り返しになってしまうが、これは、ビジョナリー・カンパニーの基本的な要素を再確認できたことになる。基本理念を維持することと進歩を促すことを同時に行う。ANDの活用が基本なんだ。基本理念があるからこそ、会社の継続性が保証され、ビジョナリー・カンパニーはそれを基礎に、大胆な目標に取り組めるんだ。

🧒‍;結局、そこに落ちてくるのですね。また、進歩があるからこそ、基本理念が保たれるというわけですね。基本理念と進歩はORの関係にはないのですね。

👨‍🦳:そう。基本理念と進歩の微妙なバランスをとることでもない。どっちかという話ではないということだ。基本理念と進歩という二つの強力な要素重なり合い、両者がともに最大限の力を発揮して、組織を強化していくんだ。

🧒‍;くどいくらい、理念、進歩、大胆な目標の関係性がわかりました。

👨‍🦳;そうか。その3つの関係性が解れば今日はOKだ。次回は第6章、カルトのような文化に入っていくぞ。

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 今回は駆け足で第五章を1回でまとめました。BHAGが大胆な目標ということは分かりやすいと思いますが、これが、進歩に不可欠で、かつ理念ベースで目標が設計されるという関係性は解ってもらえたと思います。次回は、第6章について解説します。6章は、一見、すばらしい企業に見えるビジョナリーカンパニーが実はカルト的な要素もあるという解説をします。ぜひ、フォロー、スキお願いします。

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