見出し画像

いいご近所づくり大会議ダイジェストVol.2『 食支援を広げるヒント編 』

はじめに
過日開催されたシンポジウム「いいご近所づくり大会議2018 “食べる”と“笑う”を支える摂食嚥下の専門家に学ぶ1 日」(主催:一般社団法人グッドネイバーズカンパニー、以下GNC)登壇者のトークダイジェストをご紹介するレポート、『食支援を広げるヒント編』です。

*記事は取材参加した記者の要約です。実際の講話内容と一致してはおりません(本文中敬称略)。
*登壇者プロフィール詳細は記事巻末


男性介護者を支え、食を支える地域づくり / 河瀬聡一朗先生

東日本大震災によって失われた歯科医療の復興を担うため、松本歯科大学病院を辞し、宮城県石巻市に拠点を移した河瀬先生。
「大学病院から地域に出ると沢山の課題があることに気がつきました。そのひとつが、育児や家事の経験が少ない男性介護者にとって、“食”の問題は深刻であるということでした」と話し始めました。
講演では途中、河瀬先生が設立した「男の介護教室」恒例のパッククッキングを、若林先生・戸原先生達を交えて調理実習。おそらく見ていた女性の多くは手際にハラハラ、うずうず。奇しくも、男性介護者支援の必要を確かめた、和やかなひとときとなりました。

2012年に石巻に移り、老老介護家庭の増加や入院期間の短縮、待機者増による高齢者施設入所困難など、高齢者の生活状況を知り、男性介護者を支える仕組みをつくらなければならないと考えました。
在宅介護者の3割以上が男性で、介護に関する不幸な事件を起こす率が男性では女性の介護者に比べ3倍高いことも知られています。
そこで、2014年から始めた男の介護教室では、介護全般について医療や介護の専門家から伝授しますが、とくに“食”について学ぶ機会を多く設けています。また、管理栄養士が中心となって行う調理実習では、初対面の男性同士が和気あいあいと実習に取り組みます。そして調理したものを食べながら同じ境遇の仲間で対話する時間をつくります。

参加者は、これから介護に関わる男性、介護中の男性のほか、介護経験者も。興味がある方は老若男女問わず受け入れていますが、女性の参加者はグループを分け、調理経験や栄養知識がない男性も気後れせず、楽しくワークができるように配慮しています

とくに、試食しながら対話する時間は参加者同士の情報交換や、“ひとりじゃない”という安心のためにとても大切な時間です。
実際に、ある介護者のSOSをキャッチしたこともありました。活発だったリピーター参加者の様子がいつもと違ったので声がけをしたところ、危機的状況が分かり、介護教室の対応で命を救うことができました。
現在、宮城県内で6教室のほか、全国各地で出張教室を行っています。

また、河瀬先生は地域医療に関わる中で、石巻地域では在宅医療で摂食嚥下障害患者に関わるシステムが無いことに気づき、多職種で学び、知り合う機会をつくり、「地域で“食べる”を支える環境づくり」を行う目的で2015年から「食べる輪」という勉強会を開催。地域医療連携ネットワークが着々と築かれているとのことです。

食べる輪」は“食べる”に関わる専門職が学び輪を広げる勉強会です。
3ヶ月に1度程度、開催しています。
ルールとしては、
1.地域で活躍している人を講師にして、難しい話ではなく、明日から役立つような簡単な話をしてもらう
2.グループワークやグループディスカッションをして、横のつながりを広げていく
があり、こうした簡単なルールが功を奏し、設立当初は多職種が集まる17名の小さな勉強会でしたが、現在では100名を超える参加者が集まってくれます。

地域での連携にこの「食べる輪」が大きく役立っているものの、特別に苦労をして人を集めたわけではなく、思いを告げると、同じ熱い気持ちでいる人が予想以上に多かったというのが実のところです。
「問題だよね」と言ったら、「では集まろう、話し合ってみよう」という具合で、いろんな職種と知り合え、仲間が増えたのはうれしい奇跡でした。経営コンサルタントの武田斉紀さんが「わか者、ばか者、よそ者が地域を変える」とおっしゃっていますが、石巻圏もそのような風が吹いているのかもしれないと感じています。これからも「食」というキーワードを中心に歯科医師として地域で活動していきたいと思っています。

フレイル予防にプレイフルな「社会的処方箋」 / 清水愛子さん

「ヘルスケアからプレイフルケアへ」を提唱しているGNC。プレイフルとは、“遊び心”の意ですが、「誰もが能動的に参加したくなるような楽しさのある新しいヘルスケアを生み出していきたい」と話した清水さん。
新しいとはいえ、その場の資源や人で成り立ち、気軽に参加できるものを、参加者となる一般市民と共につくっていくことをめざしている、ということです。

今日は、GNCとしてはとても真面目なムードのイベントで、普段はもう少しゆるく、楽しいイベントを中心に活動しています。メインイベントの「くちビルディング選手権」は、一般の市民参加のスポーツ大会のほか、高齢者施設や学校など全国30箇所で開催してきました。
「食べる力」の維持・増進が楽しくできる新しいスポーツは、老若男女誰でも楽しめます。必ずしも高齢者や子どもが弱者で、若者が強者とは限らない、予想外の結果をもたらして、予想以上に盛り上がるのです。

高齢者のフレイルは、ソーシャルフレイルから心身のフレイルに連鎖するとされているので、フレイル予防の社会的処方箋を出していきたい。そこで、市民と共に開催する「くちビルディング選手権」では、地域の皆で、我がまちの食や健康づくりに関する課題をピックアップし、改善をめざして「くちビルディング選手権」の競技に落とし込み、ときには新しいスポーツを考案するという流れで、健やかに食べ続けるためになり、多くの人が能動的に社会参加する場をつくっています。

この後、ゲストと参加者が「くちビルディング選手権」の競技のひとつ“黒ひげペロリ”を実践! 全員が鼻の下に海苔の黒ひげをつけ、くちビルダーとなった会場は、瞬間的にムードが一変しました。
皆で競技を楽しみながら健康づくりに取り組めるプログラムの盛り上がりを体験して、「くちビルディング選手権」が食支援の普及・定着に一役買う可能性、食べることを支えるケアの多様性を確かめました。

GNCが提唱するプレイフルケアのプログラム「くちビルディング選手権」で実施している競技の開発は、GNCの医療職のほか、外部の医療職にも関わっていただきます。戸原玄先生には日頃からGNCの活動全般にサジェスチョンをいただき、河瀬聡一朗先生には競技開発に関わっていただきました。

くちビルディング選手権」は「笑った分だけ強くなる、めざせ! お口のアスリート」などと楽しさを前面に告知していても、口腔機能の維持・改善に役立ち、健やかに食べ続けていただくニュースポーツであるために、先生方との連携が不可欠です。
ここで言う“デザイン”とは、人が能動的に関わるしくみづくりのことで、「正しいケア」と「楽しいケア」を両立させたい!

さらに、そのように「しっかり健康づくりになる、けれど、そう見えない」「楽しそう、気軽に参加できそう」なイベントで社会参加を促すというさり気ない関わり方を実現するには、医療や介護・福祉の外、つまり異業種との連携も大切だと思っています。
そういった雰囲気づくりや、動機づけが得意なまちづくり職、クリエイティブ職、教育者などとの連携を充実させて、新しく、楽しい地域医療や保健活動の仕組みをつくっていきたいと思います。

*登壇者プロフィール
● 河瀬 聡一朗 歯科医師・歯学博士
専門は障害児・者、有病者、高齢者の摂食嚥下障害治療。東日本大震災後の災害歯科支援を機に、無歯科医地区となった石巻市雄勝町の歯科医療再生に携わる。現在は男性介護者支援を目的とした「男の介護教室」や、石巻圏の医療連携ネットワーク構築など、地域ケアの基盤づくりを先駆けて実践。これからの地域ケアの形を各地へ発信している。

● 清水愛子 一般社団法人グッドネイバーズカンパニー 代表
広告代理店勤務時代に、コンサルティング業務を通じて、高齢化地域の医療課題に関心を持ち2013年に独立。口腔トレーニングの要素をスポーツ競技に発展させた「くちビルディング選手権」をはじめ、参加型の地域医療・保健・福祉活動を推進すべく「プレイフルケア」を合言葉に活動中。

(まとめ・文 フリー編集者・ライター 下平貴子)

” 食べる ” と ” 笑う ”につづく、
 在宅食支援勉強会 第2弾 受付スタート!!

次なる、いいご近所づくり会議では食支援連携 』テーマに、多職種住民地域産業連携と「食」の可能性に迫ります!

〜 新宿区の食支援ネットワークを牽引する 五島先生が登壇 〜
「最期まで口から食べるを支えるまち、新宿」をスローガンに、およそ150名の医療・介護専門職、20以上のワーキンググループで構成される新宿食支援研究会(以下、新食研)。専門職だけでなく、住民をも巻き込む「食支援」の取り組みは、これからの地域包括ケアのカタチとして、全国的に注目されています。
新宿区から全国へ、食支援連携の重要性を先陣を切って発信し、広めてきた、新食研代表の五島 朋幸先生をお招きし、これからの食支援や地域連携のあり方について深堀りしていきます!

現場で連携に課題を感じている方、食支援に興味のある方、地域の医療・介護の現場をより深く知りたい方は、ぜひ詳細をチェックしてみてください!

イベントの申し込み、詳細はこちら▷ http://gnc09.peatix.com

【 いいご近所づくり会議に関するお問い合わせ 】
 一般社団法人グッドネイバーズカンパニー
 いいご近所づくり会議 事務局|info@gnc.or.jp(担当:児島)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?