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DXは経営改革――。DXを実現させる能力開発と組織開発 (6/6)

「DXは経営改革。 DXの課題と解決の方向性、求められる組織開発とは?」の全6回連載です。最終回「DXを実現させる能力開発と組織開発 」をお届けします。
【第1回】DXで成果を出すための「攻め・守り」の両側面
【第2回】戦略とDXの実現においては“現場の実行力”が鍵
【第3回】DXの実現に必要なのは、コミュニケーションと当事者意識、設計の思想
【第4回】「DXごっこ」にならないために、何が必要なのか?
【第5回】DX組織になるための人事制度とマネジメントはどうあるべきか?

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13.DX時代の能力開発と組織開発

望月:では、流れで「DX時代の能力開発、組織開発」について対話しましょうか。

各務:絶対の正解はないので難しいですが、第一には、「自律」がポイントだと思います。なぜなら、自分を知るということをやってこそ、能力開発が可能だと考えているからです。KADOKAWA Connectedでは「ピープルポートフォリオマネジメント」という考え方をベースに、自分の現在の立ち位置を理解できるようにしています。「ピープルポートフォリオマネジメント」では、誰をどのロールに割り当てるかを決めるにあたり、縦軸を発散思考(創造が得意)/収束思考(マネジメントが得意)、横軸をアウトプットの大きさ(質×量)とし、社員をマッピングして決めています。

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望月:この2軸にたどりついた理由は?

各務:ずっと長い間、考え抜いた結果これしかなかったからです(笑) というのも、発散思考か収束思考かの軸は、人間の基本的な能力の傾向として、かなり普遍性があると思います。もちろん、一緒に仕事するチームメンバーとの比較で相対的に発散的になったり、収束的になったりすることはあるでしょう。

横軸がアウトプットの大小であるのは、スキルなど総合的なパラメータの在り方を考えると、総論としては大小しかない、という答えにたどり着いたからです。パラメータは細かすぎると分析できない。またアウトプットの大小は、その人の「リスク許容度の大小」ともイコールの関係にあると私たちの中では定義ができています。つまり、右側に行く人は、リスク許容度も高くて、アウトプットも大きい。

望月:ハイリスク・ハイリターンってことですよね?

各務:そうです。ハイリスク・ハイリターン型の人は、右側(アウトプット大)にいく。

望月:良い悪い、という議論ではないですよね。

各務:そうです。どちらが良いではなく、「選べること」が重要です。適切な仕事がアサインされていないと、能力通りのアウトプットにならないことってありますよね。チャレンジのある仕事がしたいと思う人は、リスク許容度も高いので難易度の高いロールを設定して、アウトプットの大きさも求める、そして高めた能力を実力として発揮していく。

例えば、とある事例で16分割すると、このポジションにはこのロールと決めていて、それぞれの箱ごとに育成プランを立てています。

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西:なるほど。この図では、成長を基本的には横移動と捉えていて、例えば「エンジニア」を右側の「シニアアーキテクト」に変えるときには、教育プランが異なるってことですよね?

各務:はい。基本的には右に成長していってもらいたいと考えています。なぜなら、アサインによって、人のアウトプットは増えるからです。とはいえ、人生のアクシデントでアウトプットは大小することもあるでしょう。ただし、発散/収束の上下はあまり変わらないと。

望月:いずれにしても、普遍性がある軸で、誰がみても「この人は、この位置だから、こう成長してもらえるといいね」と議論しやすいということですね。
 
各務:そして私たちは、この図でマッピングして、ロールを設定して、給料をざっくり決めていきます。そして、各自のリスク許容度をみながら教育をしていく。教育・育成において、発散思考は、クリエイティビティを使ったレベルアップが大事になる。対して収束思考は、マネジメントを強化したい。MBA的な要素でいうと、発散思考は経営企画。収束志向は、ファイナンス、アカウンティング、経営管理などになります。

望月:これは、本人にも開示しているのですか?

各務:各サービスで、誰がどのロールにアサインされているかがわかる「ロールアサインリスト」が全社員に公開されています。

望月:自己認識と他者認識がずれたりすることはありませんか?

各務:たまにありますが、きちんと対話すると納得して収束していきます。あと、複数で仕事を進めていくと、周りの人のアウトプットレベルを実感しますよね。そうすると、自分が出来ていないことを自覚していきます。

望月:先ほど、DXの成功はギバーの力を最大化することで、かつ、テイカーとギバーをつなぐマッチャーの存在が重要という話がありましたが、この「ピープルポートフォリオマネジメント」とは連動しますか?

各務:連動します。そしてマッチャーの存在が会社のOSを良くするという定義につながります。

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会社のOSを良くするためには、アウトプット高いテイカーとギバーをつなぐ「優れたマッチャー」の存在です。一方で、最も気をつけないといけないのは、左上の「発散思考でアウトプットが少ない」not availableなテイカーです。このテイカーは、ギバーからアウトプットを搾取して、会社をダメにしてしまう。DXが進まない要因になるので、採用をしてはいけない人だと考えています。

14.DX時代は、マッチャーによる多様性マネジメントが鍵になる

西:少し話は変わりますが、時代の変遷とそこで重宝される人材についてお話ししてもいいですか?

5~6年前までは、グローバル化が企業の大きなテーマでしたよね。それが今は「デジタル化をどう進めるべきか?」になっている。グローバル化の時は、本人がグローバル人材になるか、現地の人材をいかにマネジメントするかで、アウトプットが評価されていた。

それに対してデジタル化がテーマになり、可視化された世界がきた。パフォーマンスが可視化されてしまうがゆえに、分析などの能力よりも、いかにビジョンを描くか、いかに実行に落とし込めるかの2軸になったのではないか、と。それが各務さんのいう世界観と近いのかもと思って聞いていました。

つまり、DX時代においては、大きくビジョンを描けること、現場の実行力のある人を束ねられ能力開発できるマネジメント力、そして組織を作れる能力が求められるとイメージしています。今後時代が変わっても、すべては不可逆的です。デジタルシフトしたものは、デジタルに移行する。現場がより強くなって組織がフラット化すると、階層があまりいらなくなる。結果として、エンパワーメント型とか、羊飼い型リーダーシップという世界観になり、自分が先頭に立って牽引するリーダーもいいけど、みんなの力を束ねて高いアウトプットをだす人が重宝される時代になるのだと考えています。 

望月:マネージャー以上の能力開発のあるべき姿の話ですね。そして各務さんのおっしゃる「上にいくほど部門横断型になり、関係者の多さと仕事の複雑性が増して、メンバーと一緒にタスクをこなせる人しか上に行けない仕組み」と通じますね。
 
西:かつ、多様な価値観を含めて一緒に仕事ができる人じゃないと難しい。異なる存在に拒否反応を示すようだと、先に進まない。多様性マネジメントが鍵になると思います。

望月:なるほど、とはいえとても希少な人材で、誰もができる素養があるとは思えないのですが。

各務:これは、「筋トレ」だと思っています。あと、西さんと私は同じことを考えているんだなと確信を持ちました。私の先ほどの図でいうと、すごい企画をできる人が右上のテイカー、現場で実行できる人が右下のギバー、すごいマネージャーが真ん中のマッチャーだとすると、マッチャー人材の育成がすごく大事になる。日本でいうと、昔はそれが課長で「課長力」みたいなものってありましたよね。だとすると、これからは「新課長力」をつくることが重要ではないでしょうか。新課長力を持つ人が、マッチャーです。ただ、マッチャー育成が一番難しい。そもそも、課長と部長は役割が違う。課長は、現場のでこぼこを吸収し、解決する人。部長は仕組を徹底的に磨き上げるような仕事です。だから課長が一番キツイ。課長を育成することをやると同時に、部長は課長に負担がかかりすぎないようにする。いずれにしても、筋トレであり、育成に限るのだと思います。

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15.リーダーとして成し遂げたいこと

望月:では、最後にお二人からリーダーとして成し遂げたいことなど教えてください。

各務:私がKADOKAWAにいる最大の理由は、「日本文化を残していきたい」からです。私は外資系企業を多く経験しましたが、日本の文化の中で育ってきているし、日本の文化が好きです。本や映画の物語に感動して、元気や癒しをもらうことで、精神面が豊かになりますよね。そして、KADOKAWAはコンテンツを世の中に送り出すPublisherです。だからこそ、日本文化を創るコンテンツを生み出すクリエイター、そのクリエイターを支える人たちが、自分らしく、生産性高く働けるような場を創造するために、働き方改革と、エンジニアリングで支援できる仕組みの構築を徹底的に行っていきたい。海外ではメディア業界の崩壊が始まっているように見えますが、日本がそうならないように、アナログの資産を活かした上でビジネスモデルを変えて、クリエーターが生き残れる世界を作りたい、それが使命だと思っています。

西:私は、日本企業はもっと強くなれるはずだと信じています。そして、この仕事を通じて作りたい未来は2つです。一つは、ビジョンを描けるトップ層と時代に合わせてアジャストできる強い現場をよみがえるようにしたい。トップがビジョンを描き、方向性を示せるようにすれば、現場はアジャストできる強い組織力があると信じています。2つ目は、個々人が楽しく生きられる世界を作りたい。生活やお金のためだけに仕事をするだけではなく、仕事とプライベートの両方でやりたいことをやりながら活躍できる世界がつくれるといいと思っています。

望月:本日はありがとうございました。

【編集後記】「速い車というと、“エンジン” に注目が集まる。でも、本当はブレーキがいいから速く走れる。速く走るためには素早く止まれること、コーナリングを適切に曲がれることが重要。ブレーキと車軸とタイヤのバランスという基盤が整ってこそ、エンジンが持つ馬力が最大限活かされ、車は速く走れる」これは、あるレーサーの方が講演会でお話しされていたこと。編集しながら、類似点を感じて思い出しました。DXで最大の成果を得るためには、守りのDXを固めつつ、攻めのDXとしての挑戦が必要であること。戦略の実現には、実行できる人と組織という基盤があってこそ。それらを考える時間となりました。(編集担当:赤崎述子)
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