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新興DTC(D2C)の明日からのチャレンジ〜 Bricks & Mortarの先にあるもの N120

 ここ最近でデジタル消費が高止まりしていると感じている。フィジカルの店舗の再投資の話題が増えたり、クリック&コレクトでの顧客接点をどうマキシマイズするか?という話題が増えているからかもしれない。少なくともモノを購入する際に人の温もりを実はいくばくかは求めていたということが合理的な社会においても明確になってきたのは感情でしか決断しない日本人からすると面白く感じる今日この頃である。  

 この6ヶ月ほどの間は外出制限があり外を出歩く機会が減り、アナログな物理的な出会いがなくなった一方で、デジタルな出会いの機会は増加してデジタル消費はうなぎ登りだった。しかしながら、予定調和のアルゴリズム(まだまだ低レベルなアルゴリズム)ではリーチできる顧客層は限定的でこれ以上新しい顧客にはタッチできない状況にあるのも事実だ(つまり、出会いとは偶然だが、プログラムした広告では必然の出会いしか生まれない)。 

 デジタルを武器にしたDTC企業の多くはコロナをうまく乗り越えてきたように見受けられるが、実はこれからが正念場だというのが私の見立てだ。むしろトラディショナルなジャイアントの方がこれからは優勢になる可能性が高い。  

 例えばNikeのような企業はDXをしっかりとやってきた。検索し尽くした飽和したデジタル環境の中で彼らは新興DTC企業よりは新たな顧客を獲得するデジタル機会は多い。デジタルのセンスで劣っていたものの、このコロナ下においてデジタルシフトにさらに拍車をかけたがゆえにDTC企業と同等あるいは以上にデジタル能力を高めてしまった。ある意味資本の論理で規模の経済が働いたということだ。  

 逆に一部の新興DTCは不確定な未来を前にVCがおよび腰になるがゆえに積極投資がし難くなっている状況にもなっている。やはり資本主義であるが以上、お金を持っているプレイヤーが勝つということなのか?という結論になってしまう。  

 Nikeをはじめとする伝統的なプレイヤーが新興DTC企業に見劣りすることを唯一挙げるとすれば信仰心だろう。そのブランドを持つことであなたは何者であるか、何を理念として生きているかを説明するだけの強度が欠落している。流石にNikeが好きという人に個性を見出すことはできない。 

 しかしトヨタ自動車がセンチュリーやソアラといったブランドがありながら、レクサスという高級車ブランドを作ったように、Nikeも独立ブランドを作ることで回避できると安直に思う。消費者が興味あるのは連結売上/利益ではなく、自分が何者なのか?だけなのだから。 

 いよいよ気候が変わる今日この頃だが企業の明暗もまた違った形で変わるだろう。 

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