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日本でキャッシュレスがなかなか進まない理由

 デジタル化は国際競争力の決定打になるのだろうか。日本政府もコロナを機にデジタル化が進むことを期待しているようだが。この状況は日本に限らず世界各国の共通の悩みであり期待だろう。そしてデジタル化を推進する上でのインフラとなるキャッシュレスはコロナを機に進むことが予想される。キャッシュレス還元までしてやっているにもなかなか進まない現状もあったので日本政府にとってはこのコロナ下で唯一の追い風なのかもしれない。  3年くらい前だったがキャッシュレスを進めたいリサーチが大好きな日本人(日本政府だけど)はまずは海外で生活をする私にアンケートを求めてきた。どうしたらキャッシュレス化が推進できるか?と。

  正確な数字は忘れてしまったが、日本国は中国やアメリカ、シンガポールをはじめとして先進国にも新興国にも大きく差がついているという結果だった。このアンケートを作成したのはITに強いグローバルコンサルティングファームだった(野村総研や三菱総研に任せないところに焦りを垣間見たが)。このアンケートがいかにも日本に住む日本人が作成したという内容でエクセルこそ綺麗に仕上げられていたものの、日本と海外を知る者としては根本的な原因を掘り下げることができる視点ではなかった。一所懸命に事細かに設問項目を作っていたが、的が外れていた上にオープンクエスチョンを設定しなかったので、私から気の利いたことを記入することもできない設計になっていた。恐らくその作成者が設計した視点で、こうすべきですと悪い意味でトップダウンの外資的な断定で結論を提示したことだろうと想定する。  もう設問の内容はほとんど忘れてしまったが、一つ覚えているのはそのアンケートはクレジットカードによくあるポイントをインセンティブにするとキャッシュレス化が推進すると仮説立てていた。私の住んでいる国ではポイントの付与がないデビットカードが普及しており特に少額決済をほとんどカバーしている。したがって現金はよほどの理由がない限り持ち歩く必要はない。おしゃれなカフェでは現金はお断りされるくらい少額決済の電子化がこのデビットカードのおかげで当たり前になっている。

  日本のキャッシュレスが遅れている領域は少額決済とのことだ(ある程度の金額になるとクレジットカード決済や銀行振込が当たり前になる)。そして課題も小売店が導入しないことが抑制要因ということまで概ね原因は特定できているようだ。だが消費者に無理やりモチベーションを探そうとしていたところに無理があったと想定する。当時、私が仮説立てた要因は、日本人はボトムアップで考えるので、手数料の数パーセントを支払うことを嫌って店舗が導入しないということだった。それを裏付ける根拠として海外の小さな日本食食堂も現金商売をしているからだ(つまり日本人だけが現金を好む)。

  しかし最近別の視点の仮説が思い浮かんだ。海外の店舗(これは日本人経営を除く海外の店舗で中国人経営やベトナム人経営も含む)でキャッシュレスが進んでいるのは経営者が従業員を信じていなくて、キャッシュレスにすれば盗まれることなく確実に自分の口座に振り込まれるからだ。言い換えるとお人好しの日本人は性善説で経営するので盗まれるとは考えてないのだろう。もう少し言えば場を重視する日本人経営者は従業員を疑う必要がなく、雇用者と使用人を区別する海外(日本を除くその他の国)は従業員は悪いことをする性悪説の前提に立つのだろう。 

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