見出し画像

PMIは敗戦処理か? N98

 仕事柄M&Aや買収統合の話をする機会がしばしばあり、特に海外で買収をした企業にPMIで経営に参画している人たちの間には何らかの暗黙の了解がある。あくまで経験上ではあるが企業の規模の大小、業種の違いとも関係なく共通の課題点がある。それは企業の買収交渉から出資までのプロセスと統合プロセス(PMI)が分断されていることだ。 

 それぞれのプロセスで求められるロールが違うため役者を変えるという理由はわかるが、しばしば買収した目的自体が変わっていることがある。これはM&Aに戦略が欠落していたことが原因である。これは日本企業に特有の問題ではなく海外企業でも起きている。特に日本の顕著なのはこんなチャンスは2度とないかもしれないと言われるような持ち込み案件についつい手を出してしまうケースが多いと思う。あとは数字合わせで買収してしまって何年かして何で買収したのか?と自らも理由を忘れているようなケースだろうか。  

 M&Aの上手な企業として日本電産がよく取り上げられるが戦略が非常に明確になっている。必要なポートフォリオの必要なコンポーネントを持つ企業を内製と買収で埋めていくという買収する目的が常にはっきりしている。こうゆう会社は失敗しないし、たとえ買収先の経営が落ち込んだとしてもその他の事業や企業が落ち込みをカバーすることが難しくない。  

 ということでPMIは多くの企業で敗戦処理的な状態になっていることが多い。またどうしたらPMIは上手くいくのか?という質問には買収時のプロセスからPMIまでを一気通貫にすることですと答えるし、またどうしたら一気通貫のM&Aを成し遂げられますか?という質問には戦略を明確にすることと答える。  

 とにかくM&Aという言葉に踊らされる人が多く、また外部の関係者(ファンドからFAから何から)も高給取りの優秀な人が多く大きなお金を動かすことより、どうしてもプレディール重視となりPMIの時点で既に負けが決まっていることが多いのは企業側が反省すべき事態だと思う。ましてや、PMIのトップ責任者を外部から採用しようとしているプロジェクトに成功の文字はないだろう。  

 最近は企業内に買収チームを組成することも増え、CVCみたいな機能も持ったりする企業も増えてきた。ゆりかごから墓場までではないが、戦略を持ち一気通貫のM&Aを繰り広げることで成功率が高まっていくのではないかと思う。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?