見出し画像

【英語で学ぶ大人の社会科】

グローバル・アジェンダは2017年から「朝英語の会@京阪神~The Japan Times紙記事について議論する」を関西で運営しています。「朝英語の会」はThe Japan Times社が開発した時事問題を英語で議論するためのプログラムです。ほぼ毎週、毎月3~4本発表される同紙の記事をもとにしたコラム記事を使い、5~6名のグループに分けて議論を進めています。

「朝英語の会」は手軽な新聞記事を利用したワークショップで、既にオンラインサロンも開設しています。ただ、参加者の中にはよりレベルの高い個別のテーマについて深く知りたいと考えている人もいます。日本の社会科学の分野では海外での先行研究を国内の研究者が分析して、一般に紹介するような形がまだまだ主流です。しかし、近年の世界情勢の変化のスピードを考えると、日本の研究者が海外事情を紹介してくれるのを待っているだけでは、グローバル社会の潮流についていけないという課題があります。また、紹介される内容もあくまで、研究者個人の関心のある領域と切り口だけになってしまうので、留学でもしない限り、一般の日本人が自分たちが関心あるテーマの世界の先行研究について幅広い知識を得るのは容易ではありません。

グローバル・アジェンダはこの状況を変えたいと考えています。日本人が英語の専門書や新聞記事を理解する時に大きなハードルとなるのが、実は英語そのものではなく、その文章が発表された場所や執筆者、テーマに関する政治経済・文化的背景が十分読み込めていない事が原因です。現在運営している「朝英語の会@京阪神」はそれを補完するために、解説ブログ記事を書いて、サロン会員に配布しています。

昨年はそれぞれ個別のテーマのオンライン・サロンの開設を考えていましたが、noteのサークル活動を使って、グローバル・アジェンダと参加メンバーの関心度の高いテーマのワークショップ(注目を集めている英語の書籍や論文についての勉強会)と社会見学(テーマに関連する施設・場所等への訪問)を計画しています。サークル名は「英語で学ぶ大人の社会科」です。

この企画を計画している時に、新型コロナウイルスの危機が進行し始めました。そこで、当面はこのパンデミックが我々の生活に与える影響について、世界の知性と呼ばれる第一線の研究者の提言を検証しながら、一緒に勉強していきたいと思っています。

なお、今後ワークショップの為に検討している課題は複数ありますが、以下のテーマが比較的英語の資料が手に入りやすく、大勢の方が関心を寄せているトピックだと思います。

1. デザインと文化

デザイン、特に都市デザインに関してはそれが立地する場所や創作・発表の現場を見学することに意味があると思いますので、このテーマに関しては建築物や美術館の訪問など、多くの社会見学を企画しています。

見学先の候補の一つとしては外国人にも人気の高い日本庭園デザインと文化の結節点として面白いと思います。

京都の庭園に関しては以下の秀逸な解説書があります。

また近年、注目を集めている「弔い」に関するデザイン、例えば自然葬の墓地の見学なども興味深いと思いました。

また、ドミニク・チェン氏があいちトリエンナーレ2019で披露した「#10分遺言」のインスタレーション(もし自分が残り10分で死ぬとしたらどんな言葉を残すかを順に画面で表示)も非常に意味のある「弔い」のデザインの試みでした。


2. ジェンダー

近年のジェンダーに関する著作の中で特に注目を集めているのが、レベッカ・ソルニット女史の複数の著作です。ジャーナリスト&社会活動家として活躍してきたソルニット氏の文体はシンプルなのですが、複雑な課題を私達の日常での体験や芸術作品などを通して鮮やかに浮かび上がらせるパワーを持ち合わせています。

また、世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ報告書によると、日本が他国に比べて最も遅れてるのが政治における女性の地位ですが、実は政治そのものだけでなく、いわゆる政治学の分野でもジェンダーギャップは顕著です。それゆえに女性と政治の接点に関してこれまで、研究者により十分な研究が進められてこなかったという事情もあります。以下の学術雑誌はその問題点にも触れています。

Gender Gaps in Political Science

4月23日はWorld Book and Copyright Day (世界図書・著作権デー)ですが、UN Womenは誰もが読むべき「フェミニストに関する12冊(Twelve feminist books everyone should read」を紹介していますが、どれも興味深い本ばかりです。

また、UN Womenは「個人が性差別解消のためにできる12のステップ」という記事を発表しています。記事は個人の意識の変革や行動で社会を変えることが出来ることを私達に知らせてくれています。

Twelve small actions with big impact for Generation Equality

経済格差の拡大とともに「貧困の女性化―Feminization of Poverty」にも関心が集まっています。以下のHPに主要な論文が掲載されいます。

3. 東日本大震災&メルトダウン(3.11) 

Asia-Pacific Journalが3.11に関する特集サイトを作っており、多くの英語論文を読むことが出来ます。

Japan’s 3.11 Earthquake, Tsunami, Atomic Meltdown

4. 東京五輪2020

新型肺炎の世界的流行により、開催が危ぶまれている東京五輪2020に関しても既に特集として多くの英語論文が発表されています。様々な側面から東京五輪を論じた非常に興味深い内容ばかりです。

Special Issue: Japan’s Olympic Summer Games - Past and Present, Part I (Table of Contents)

5. 日本研究

第2次世界大戦で連合軍の敵国となり、敗戦国となった日本の占領政策を進めるために、戦中から戦後にかけて英米豪の研究機関には多くの日本研究の学科やクラスターが誕生しました。実は多くの日本人が研究を進めていない分野でも英語では論文や著作が発表されています。以下複数の分野の論文が無料でダウンロードできます。

Asia-Pacific Journal: Japan Focus—Free Downloadable Course Readers

6. 日本のメディア・SNS・言論の自由

今すぐ、手軽に読める英語の学術論文は用意できないのですが、日本のメディアのあり方に関しても興味深い研究が数多くあります。以下は近年の日本のメディアに関するWeb記事です。

Japan Market & Media Overview

Japan’s Media: Facing Public Indifference More than Distrust

TV Still Well Ahead of the Internet in Japanese Media Popularity

7. コロナウィルス後の世界

コロナウィルスの危機の後、世界はどう変わるのか?

コロナウィルス収束後の世界について多くの識者が、行き過ぎた個人主義が後退し、国家や宗教の役割が見直されることになると予言。科学も新しい力を持つだろう、など30人の識者の意見が下記の記事で紹介されています。

また、以下はオバマ前米国大統領により紹介された「パンデミックはどう終わるのか」という記事です。

How the Pandemic Will End

The U.S. may end up with the worst COVID-19 outbreak in the industrialized world. This is how it’s going to play out.

The Discover Societyもコロナウィルスがもたらす社会の変化に対して複数の興味深い記事を発表しています。

THE COVID-19-INDUCED CRISIS AND THREE INVERSIONS OF NEOLIBERALISM

'Due to COVID19 we are forced to acknowledge the importance of human life as the basic, fundamental value that unites the world... Can we still rely on an economic system that is based on neutrality towards values?'
@MarcoSenatore75

また今回の危機で積極的に発言しているのが歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏です。

ユヴァル・ノア・ハラリ氏が見る「新型コロナウイルス後の世界」とは?FINANCIAL TIMES紙記事の全文翻訳を河出書房新社が公開しています。

Yuval Noah Harari: the world after coronavirus 

The Financial Times is making key coronavirus coverage free to read to keep everyone informed during this extraordinary crisis. 

8. ニューノーマル:新しい生活様式

パンデミックの後には、仕事やライフスタイルに関しても「ニューノーマル:新しい標準」―新しい生活様式が求められています。

New normal? Better normal!
The COVID-19 pandemic has laid bare in the cruellest way, the extraordinary precariousness and injustices of our world of work, says ILO Director-General, Guy Ryder.

今後の都市のあり方に関してはどうでしょうか。変わらないという意見もありますが、これだけリモートワークが当たり前になると、影響は大きいのではないでしょうか。

コラム:コロナ後も、都市の交通と生活パターンは変わらない

Cities after coronavirus: how Covid-19 could radically alter urban life

どれも興味深いテーマばかりですが、まずはどれか一つを選んで、時間の許す限り、順次取り組んでいきたいと思います。

この記事が参加している募集

私のイチオシ

サポートして頂いた資金は、ワークショップやブログ記事の準備費用に充てたいと思います。今後もグローバル・イッシューに関するトレンドを逐次紹介していきます。