すっぱい葡萄とワンピース

6月10日(水)

コーヒーを飲み、バナナを食べる。ようやく少しお腹が動き始める。

ヘビ柄の服に黒のスカートと白のカーディガンを合わせる。CLIOのパレットとボルドーのマスカラでアイメイク、久々にメイクがばっちり決まって顔が強い。

本業が開始した仕事はしんどいけれど、パワハラ同僚と顔をつき合わせて会議したり一緒に作業したりしていた先週に比べたら気持ち的には随分楽だ。Twitterで、不機嫌をまき散らしている人がいると周囲の人間の仕事のパフォーマンスが何割か落ちる的なツイートを見たけれど、日々会社でそれを実感しているので、そりゃそうだろうなあとしか思わない。

明日は早く帰ってT氏と飲みに行くので、今日は二時間ほど残業して前倒しで仕事。パワポスキルはこの数ヶ月でかなり上がった。やればできるものだ。

帰宅して炊飯器で玄米粥を作る。すてきなワンピースが多くて最近noteやInstagramをチェックしているいるアパレルブランド・foufouのインスタライブが20時からあったので、筋トレしながら見た。「夏をドラマティックに纏う方法」というすてきな名前の、真っ赤な生地たっぷりワンピースがとても美しくてほしくなってしまったので、色味や実物の雰囲気を確認したかったのだ。インスタライブでは、身長が異なる複数のモデルさんがいくつかのデザインのお洋服をサイズ違い・コーディネート違いで次々に着て出てきてくれて、ファッションショーみたいで楽しい。宣伝用の写真だけを眺めていたときよりも、コーディネートのアイディアや自分が来たときのイメージがつかみやすくてよかった。真っ赤なワンピースだけでなく、洗えて着心地のよさそうな黒のワンピースも気になった。

これが通称夏ドラ、もはやドレス。美しい。
今夏限定のシリーズで数量も限られているらしく、それを聞くとやはりなんとしても私の手元に来てほしい、きっと似合うから、という気持ちになる。画面上だと色味がわからないから悩むなあと思っていたけれど、そんなことはどうでもよくなる。しゃがんだり段差を上り降りすることが多い仕事では着られなそうだぞと思っていたけれど、それもどうでもよくなりかける。

黒の無地ワンピはオールシーズン何着も持っているけれど、それでも着やすそうでとろみのあるスカートの動きが綺麗で見た瞬間に心惹かれた#08のワンピース。

悩んだ結果、赤ワンピのSサイズを注文することに決め、通販開始の21時直前にインスタライブが終了したので、通販ページに移動した。しかし、全シリーズ全サイズ完売の表示。時刻はやっと21時01分になったところ。

人気とは聞いていたけれど、受注販売で開始1分で売り切れとは。ほしい気持ちが盛り上がってからしゅんとしぼむまでの感情の高低差に、しばらく動けずぼうっとしていた。
冷静になって思い返すと、ほしい、と思ってから買おう、と決意して完売の表示を確認するまでの間に、何がなんでも手に入れたいという焦りから執着というか競争心というか、そういった気持ちが生まれてしまって、純粋に美しいものを身にまといたいと思う気持ちを上回っていたような気もする。ショックで悲しい、というよりも熱狂が醒めた、というかんじ。すっぱいふどうかもしれないけれど、あのビビッドでボリュームたっぷりの真っ赤なワンピースを、私があのインスタライブに出ていたモデルさんたちのように華麗に着こなして、丁寧に洗濯して管理できていたかと考えると自信がない。

身に付けるものを買うときに、売り切れになるのをおそれて急いで買う、あるいは買えなくてがっかりする、というのが、あまり得意ではないのだな、と改めて思う。それが本当に欲しくて自分に必要なものなのか、人の手に渡って後悔するのが惜しいだけなのかわからなくなりがちだから。争奪戦、という言葉の響きからして前向きな気持ちになれない。見るのは楽しいクリスマスコフレや、大好きで集めているアクセサリーブランドのネット通販に手を出せずにいるのも、きっと同じ理由だった。タイムセールの店内も逃げ帰りたくなる。

夕飯に食べていた出来立ての熱々の玄米粥をひっくり返して太ももにこぼす。さらにふと気づくと、水の分量を間違えたのか、炊飯器からもかなりの量の水が漏水していた。慌てて太ももとクッションと炊飯器周りの床を拭く。そういえば炊飯中に変な音がしていたけれど、インスタライブに夢中で気に留めていなかった。
夢より鮮やかなドレスのようなワンピースと、自分の現実の生活の乖離を思い知らされる。

入浴を済ませて、ふとまた販売サイトを見ると、カートに入れてからキャンセルした人がいたのか、赤ワンピのSサイズが完売の表示から在庫僅少表示に変わっていた。だけど、さっき自分か買おうとしてたのがSサイズだったかMサイズだったかも、もう思い出せない。無理に手に入れることないな、と思って購入は見送ることに。
だけど、さっき気になった黒のワンピースも在庫僅少に戻っていて、これは不思議と「運命かも」という感じがしたから、もう一度画像を見返して、カートに入れてみる。あえて急がず、ゆっくり購入の手続きをする。途中で売り切れになったら、そのときはそのときだ。
結果的に無事に購入できてちゃんととても嬉しい。もともと欲しかったのが別のものでも、何着同じ色の服を持っていても、そんなことは関係ない。出会えたこと、ときめいたこと、縁あって手元に来てくれることが嬉しい。結局はタイミングと気の持ちようの問題なのだった。いい買い物をした。

#日記 #エッセイ #服 #foufou #ネット通販 #買い物

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