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憧れのパークハイアット女子会①〜単独行動する自己中人間、いたたまれなくなる〜

9月12日(土)

今日午後からのホテルステイ女子会が楽しみすぎて、目覚ましが鳴る30分前に目覚めた。完全に睡眠不足だけど気にならない。背筋の筋トレをして、使い終わったメイク道具や充電器をシルバーのトートバックに詰め込んで出勤。

外に出ると、当然のようにしとしとと雨が降っていて笑った。せっかく都内有数の展望が最高のホテルに泊まるのに(私は強烈な雨女である)。

あと数時間後にはパークハイアットにいると思うと、なんとなく顧客に優しくなれた。とはいえイレギュラーな仕事がいろいろと入り、それをなんとか終わらせて14時過ぎに慌てて退勤する。その瞬間は雨が上がっていたので、ビニール傘は願掛けのような気持ちで職場に置いていった。しかし新宿に着いたら当然のようにまた雨が降っていたので、迷わずタクシーに乗り込む。

パークタワーに到着し、迷いつつ銀の柱に隠れた専用階段を上がり、2階エントランスからエレベーターで41階へ。雨でも明るいラウンジと、噂に聞いていた素敵なライブラリースペースを抜ける。

やっとの思いでレセプションに着くと、ロッキーとメイコは既に椅子にかけて待っていた。フロント係のお兄さんが個別のカウンターにソファに案内してくれて、三人並んでふかふかのソファに腰掛けてチェックイン。私が宿泊予約をしたので、代表で名前を書いたりする。すると、「お誕生日の方がいるとうかがっていますが、どちらさまですか」と言われて、いたたまれない思いで「はい、私です」と手を挙げる。確実に「こいつ、予約時に自分の誕生日を自己申告したんだな。。」と全員に思われて超気まずい。だって泊まった人のレポ見たら、誕生日サービスあるっていうから! もらえるものはもらいたくて! フロント係のお兄さんは笑みを崩すことなく、私の薄汚れたがめつい心には不釣り合いな、すてきな真っ白のブーケをくれました。

まぶしくて直視できなかった。

お兄さんに案内してもらって向かったお部屋は45階。「富士山側のお部屋をご用意しました」と言われるも曇天による視界不良で富士山どころか近隣のビル群ですら霞んでいる。

それでも部屋は広くて備え付けの家具やバスルームは重厚感があってとても素敵!
お兄さんがいなくなってからひとしきりはしゃぎ、いろんな扉を片っ端から開けていく。

そして三人で順番に窓枠に体育座りで腰掛けて、映画「ロスト・イン・トランスレーション」のスカーレット・ヨハンソンごっこをして写真を撮る。

メイコが一番いじけた感じの体育座りが板についていた。ロッキーはなぜか体育座りしてルームサービスのメニューを見ていた。

今回私がハイアットに泊まりたかった最大の理由は、三種類のサウナがあるという宿泊者向けのスパ&フィットネス「クラブ・オン・ザ・パーク」に行きたかったからだ。通常有料なのだが、コロナの影響か、朝食付き&スパ利用無料&宿泊料金割引のプランが出ていたので真剣に宿泊を考えた。この夏どこにも行けなかったし、贅沢してもいいんじゃないかなと。メイコとロッキーはサウナにまったく関心がないのだが、おずおず声をかけてみたら乗ってくれたので昨年のスピリチュアル温泉旅行に続いての三人旅が実現した。

メイコはプールに入ってガチ泳ぎしたい、ロッキーはジムで身体を動かしたいという。ひとまず予約必要なプールに行こうとするも、電話をかけたら混雑していて17時台まで案内できないと言われ、先に偵察がてらフィットネスジムに行くことに。レンタルウェアとシューズを借りて豪華な脱衣所で着替える。メイクスペースは女優鏡がずらっと並んでいてテンションが上がった。痩せたからって調子に乗ってSサイズを手に取ったら完全にぴちぴちのぱつぱつだった。外国人向けで大きめに作ってるかと思ったら全然そんなことなかった。筋トレをもっとがんばろうと決意。

二つ上の階のフィットネスエリアへ。それぞれマシンに乗って自転車漕ぎやらランニングやらを黙々とやる。自分で企画しといてなんだけど、ホテルステイ女子会ってこんなストイックな感じなんですかね?

20分ほど汗を流し、いったん水着を取りに部屋に戻る。プールに入れる時間になったら電話がかかってくるそうなので、時間つぶしに部屋で筋トレ。鬼コーチとなってロッキーにスクワット指導するぐりこ。ガチで泳ぐからと化粧を落とし始めるメイコ。いやだからなんで華やかな女子会のはずがこんなストイック(以下略)

電話がかかってきたのでいざ、プールへ。47階の開放感あふれるプールサイド。ほとんどの人はプールに入らずデッキチェアに優雅に寝そべっている。水着に着替えたメイコと私は颯爽と入水。ロッキーはフィットネス用のレンタルウェアのままプールサイドで私たちを見守っていてプール監視員の人のようだった。

冷房が効いているので、水に入るとめちゃくちゃ寒い。速攻でサウナに入りたくなってしまって、私は早々にプールから引き上げた。集団行動できない人間で本当にごめんなさいという感じだけれど、友人たちも単独行動が気にならないタイプなのでよかった。一時間と少し後に脱衣所の休憩スペースで落ち合うことを約束して、メイコはプールでガチ泳ぎし、ロッキーは再度ジムに行って自転車を漕ぎ、私は念願のサウナに駆け込んだのでした。そういえば私は、去年のスピリチュアル温泉旅行や今年三月の出雲旅行でも一人で黙々と日記を書いたりしていたのだった。マイペースを貫かせてもらえるの本当にありがたい。

二つ下のフロアに戻って、いざスパエリアへ。厚手で大きなバスタオルやガウンが使い放題で、壁は大理石でラグジュアリー感がすごい。真ん中のジャグジーを取り囲むように三種類のサウナと水風呂が配置されている。まずは一番高温の95度の超ドライなサウナの上段にバスタオルを敷いて、誰もいないので横たわってみる。日焼けのように全身ぴりぴりするのに10分ほど耐えて水風呂に飛び込む。さっきのプールより水温が低いはずなのに、サウナを経由しただけでその冷たさが何よりも心地よい。20度設定なので長くゆったりと入っていられた。出てふかふかの大きなタオルで身体を包んで休憩椅子に腰掛けると一気にリラックスした。寝不足や仕事による疲労と、慣れないラグジュアリーなホテルでの緊張感が、全部一気にすうっとほどけていく。ああ幸せ。来られてよかった。「せっかくの女子会なのに別行動ってなんなの意味分かんなーいそんなにサウナが好きなら一人で行けば?」とか言わずに一緒に来てくれる友人たちがいて本当によかった。

高温サウナに三回、スチームサウナに一回入ったところで、ジャグジーにロッキーとメイコがやってきた。私もジャグジーに入って今日のサ活はおしまい。サウナでつるつるになった顔にアメニティのイソップの化粧水がぐんぐんしみこんでいく。心なしか髪も調子がよくてテンションが上がる。

これからバーに行くので女優鏡でメイク。夕飯用のお総菜を調達しに一階のカフェ・デリカテッセンに向かうも残念ながらすでに閉店していたので、そのまま51階のニューヨーク・バーへ。バーに一歩足を踏み入れると、「ロスト・イン・トランスレーション」で見たままの世界が広がっていて興奮した。
運動とサウナで空腹だったので、酒が来る前にお通しのおかきを口に運んだら、わさび味が混ざっていて辛くて笑った! 何も考えずチリコリアンダーのカクテルを頼んだらこれも辛かった!

つまみの緑色は全部わさび味。私のカクテルにはジャングルのように草が生えていて笑った。カクテル用の華奢なグラスに入ったおしゃれな飲み物を想像していたんだけどな? 頼んだポテトフライは美味しくて、小食だけどジャガイモ狂信家のメイコががつがつ食べていた。

ジャズの生演奏が間近で聞けてテンションが上がる。最初はボーカル不在だったのだけど、途中から出てきて、そのボーカルの女性があまりに楽しそうに身体を揺らして伸びやかに歌うのでうっとりして見とれてしまった。素敵な時間だった。

ステージが終わると、メイコのグラスにはまだお酒が半分ほど残っていたのだけれど、「もう一時間以上いるしそろそろお会計もらおうか」とロッキーが言い出し、そしてメイコのグラスの中身を飲み干した。遠慮のない飲みっぷりにちょっと驚く。お会計がなかなか来なくて、「私、お手洗い行きたいから先に部屋に戻るね」と言うメイコを見送り、私とロッキーは支払いが済んでから部屋に帰った。

ルームキーで部屋に入ると、部屋の奥にはスーツ姿の男の人の姿が見えた。え、部屋間違えた? あれ、でもメイコもいる? え、メイちゃんその人とお取り込み中? と混乱しながら部屋に入っていくと、そこにはろうそくが三本立ったケーキの載ったワゴンが!!! 

びっくりした!!! 謎の男性は、ルームサービスのケーキを運んできて、主賓が帰ってくるのを律儀に待っていてくれたホテルのスタッフさんだったのだ。このお兄さんが記念写真を撮ってくれて、ロッキーとメイコとお兄さんに見守られて私は三本のろうそくを吹き消した。ロッキーとメイコはもちろんだけど、お兄さんにも感謝しかない。
二人からプレゼントに可愛い赤いイヤリングをもらう。

アシンメトリーになっていて片方はイヤーカフのように花で耳の下半分を覆うようなデザインで、ボリューム感があってとっても可愛い! 洗面所で早速このイヤリングをつけて戻ると、33の数字バルーンとくす玉が用意されていて、二人の準備の周到さにまた驚く。

この数字バルーンが丸っこくて可愛くてフォトジェニックすぎて、両手に抱えたり机に飾ったりしてたくさん写真を撮った。33歳ってなんかパッとしないなあと思っていたけれど、一気に愛おしさが増した。

ケーキを切り分けて、シャンパンを注いで、お菓子や生ハムをセッティングして、パーティーが始まる。

イチゴののったケーキはクリームが甘過ぎなくてとてもおいしくて、生ハムやおかきと交互に食べていると無限に食べられそうだった。胸もお腹もいっぱいで幸せに満たされる。

サプライズの裏側話を聞くと、私が仕事を終えて合流する前に、一階のデリカテッセンでケーキを調達して部屋に届けてもらえるよう頼んでくれたそう。Twitterに上げるだろうからとプレートは「ぐりこ」名義で。チェックインのときにフロント係の人が「お誕生日の方・・・」と言い出したときには、おまえ何ばらしてくれてるんだよ?! と二人とも肝を冷やしたとか。私が予約時に図々しく誕生日を自己申告したせいで本当に本当にごめんなさい。プールに入るまでに予想外に待たされたこともあって、ケーキの到着時間を当初の予定より遅い21時に変更したのに、バーでもなかなか切り上げられなくて、それで二人は早く部屋に戻らねばと焦っていたらしい。それなのに私はまったく何も気づかず暢気にサウナに入り、バーでうっとりジャズに聴き入っていたのだった。私が悠長に楽しんでいた横で、二人がサプライズ成功のために気が気でなかったのだろうことを思うと・・・。特に、もらえるものはもらっとけ的な精神で宿泊予約時にホテルに自分の誕生日を自己申告したりしていたことが本当に恥ずかしくいたたまれなくなる。

自分のことばかり考えて人を思いやる余裕のない自分を変えたいと思う。こんな風に私のことを考えてくれる、大好きな友人たちに恥じないような人間になりたいと思う。

ずっと自分の誕生日やサプライズに対するコンプレックスというかネガティブで屈折した思いがあって、それを言ったり書いたりしてきたけれど、もうやめよう。30歳の時の自分が主役の生誕祭パーティーはとてもとても楽しかったけれど、それももう企画しなくていい。この先の人生で誰が私を祝福してくれてもくれなくても関係ない。私は大好きな人たちからもう一生分の幸せをもらったから、これからはそれをどうやったら大好きな人たちに返せるかを考えて生きていこう。

みたいなことを強く思った。宴の間、本気でそう思っていたのだ。それなのにはしゃぎすぎて飲み過ぎて食べ過ぎて、さっきまでロスト・イン・トランスレーションごっこをしていた窓辺で日付が変わる頃には泥酔し、宴の片づけを二人に任せてしまったのでした。

本当に、そういうところだぞ自分。33歳はそういうところをなんとかしていきたい。
しかし脱ぎ捨てられた靴が生々しいな。

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