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「チームで私はどんな役割?」を共有する手法を考えてみた 〜2020年度春季HCD研究発表会〜

こんにちは、尾形です。
6月6日に開催された人間中心設計推進機構(HCD-Net)主催の研究発表会で、私たちはこんな発表をしました。

「組織のダイナミズムを捉えたチームメタファグラムの可能性」

内容は、チームづくりに関する手法の提案。チームにおいて個人の特性や位置づけを共有できる絵が、今回提案した「チームメタファグラム(造語)」です。

私たちがプロジェクトを進めるにあたり、日ごろ考えていることを整理する意味でも今回の発表にチャレンジ!
ここでは、その内容にふれつつ、チームづくりについて考えてみたいと思います。

メンバーのことを、「チーム」で共有しているか?

プロジェクトを進める上で、チームワークが大事!
これは、社内のメンバー誰もが思っていることですが、そのために、グラグリッドでは自分を知って、相手も知ることがもっと必要だろう、ということで様々なアプローチで試行錯誤を展開しています。

その中から少しご紹介。

社内で開発したえがっきー®は、描くことで自分の内面に気づけるリフレクションツールです。チームで運用する場合、描いた結果をメンバーで共有することによって、その時相手が大切にしていることやその人の物事の考え方を知って相手を理解する、というように活用しています。

また、違ったアプローチとしては、グラグリッドの中には、メンバーのことを個人の特性や価値観などから戦国武将や世界遺産に喩える自称専門家がいます。

「●●さんは、織田信長みたいだー」
「■■さんは、エッフェル塔みたい!」

これによって、「なるほどー、例えば、プロジェクトが難しい局面を向かえた場面を想定すると、この状況で、●●さんだったら、信長っぽいから、こんな風に考えるだろう」とメンバーたちで想像する遊びをして、相手の理解を深めたりしています。

これらのように、チームのメンバーそれぞれのことを多様な側面から捉えようとする試みは行っているのですが、チーム全体の中での自分の役割や存在・位置づけを、チームで共通に持っているのか?という疑問が生まれました。

チームメタファグラムとは?

そこで、考えたのが今回提案した「チームメタファグラム」
下記がそのサンプルで、グラグリッドを対象に描いたものです。

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<チームメタファグラムのサンプル>
海というフィールドに、メンバーたちがいろいろな方向に向かって
潜ったり、泳いだり、釣りしたりしています。

描かれたひとつのフィールドの中でメンバーを理解する

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この絵を紐解くと、仕事の領域(海)において、深く追求する人、広く深く探求する人、別観点から試す人、外界の状況を見張っている人、などメンバーがそれぞれのポジションで、チームの役割を担っていたということが分かります。

スライド23

また、泳ぎ方に着目すれば、それぞれバラバラです。
泳ぐ素潜りだったり、酸素ボンベを背負ったり、シュノーケルを使ったり。

図のメンバーについては、仕事をするための武器(知識、ノウハウ、情報など)を背負って、泳ぐ(仕事をする)ことが楽しい、という特性をチームで共有できました。

絵を通じてメンバー同士の相互理解を図る

このように、絵の様子をメンバーと一緒に紐解くことで、チームにおける自分の存在・役割がはっきりと確認でき、そのポジションでやれること、やろうとしていることもチームで共有できました。

一般的にチームワーク研究で言われていることは、「共有メンタルモデル」という概念が提唱されており、その有効性が確認されています。

共有メンタルモデル
チームが取組む課題の内容や遂行の仕方、チームの特性やメンバーの特性に関する知識や心的表象がメンバー間で共有されていること
古川,山口 (2012)

この説明からすると、チームメタファグラムも、共有メンタルモデルを構築するひとつのアプローチと言えるでしょう。
今後、他のアプローチなども調査して、比較していくと、それぞれのアプローチの特徴が見えてくるのではないかと考えています。

チームメタファグラム作成の5ステップ

さて、そんなチームメタファグラム。作り方を見ていきましょう。
作成の手順は、次の5つのステップです。

1.メンバーの特性分析・把握

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2.身体経験によって概念化できるメタファー模索

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3.メタファーの経験が成立するフィールド模索

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4.世界観の特定

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5.メンバー個人の位置関係を定める

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チームの中で、自分はどのような役割かを話しながら共有

このチームメタファグラム。
実際に効果の検証などは行えていませんが、次のような可能性があるとして、まとめてみました。

スライド25

チームづくりにおいて、チームの中で個人の役割・存在が、チームで共有されることは、自己効力感やチーム効力感の向上に大きな効果があると思います。それをいかに共有するか?が今回の研究のポイントでした。

さて、研究会での発表後には、ご質問もいただきました。

・時間軸の概念をどう考える?
これは確かに、チームや個人の状況は、タイミングによっても変わるもので、それをどう共有するかは一つの課題です。チームメタファグラムで考えるとすれば、描くフィールドを時間軸のあるものに設定し、そこで変化を表現する方法が有効かもしれませんね。

・チームの個人単位ではなく、組織の部門単位でも考えられるのでは?
メンバー個人を対象に絵として表現しましたが、それを組織の部門単位で捉え、表現することで全社的な戦略の策定や部門間のコミュニケーション方法を考えたりする際に役立ちそうです。その場合は、組織メタファグラムとでも言えるでしょうか。

プロジェクトを進める上でのチームづくりは、終わりのないテーマ。
これからも実践で取り組みながら、ノウハウを形にしていくチャレンジを進めていきたいと思います。

(尾形)



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