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舞台俳優たちへ/好き勝手な演出家より

好き勝手な演出家より、舞台俳優たちへ。

人は不安感があるとき、言うことが聞けなくなる。俳優もまたそうである。
不安感は別になにも、新人俳優にばかり湧き上がるものではない。
例えば映画を中心にやっている俳優、ミュージカルを中心に活動している俳優。
どれだけキャリアがあっても、いつもと畑が違うとき、彼らは不安に思う。
だから「え?こんなことあなたなら簡単にできるでしょ?」と思うような演出からのオーダーでも、それを表出させるのに時間がかかる時がある。
その時に、決して、彼らの組み立てつつある新しい演技理論を折ってはいけない。
彼らは一生懸命、新しいことにチャレンジしている。
のびのびとやらせてやらなくてはいけない。全面肯定も全面否定もしてはいけない。そしてけして自分が不安になってはいけない。彼らは必ずやれると信じてやらなくちゃいけない。

チケットが売れなきゃ劇団は破綻し借金を負うかもしれない。公演ができなきゃ、それこそ本当に劇団も劇場も生死の境をさまよいかねない。

だが、たかが俳優一人の演技など、自分の思い通りにいかなくても、誰も死なないのだ。客席の観客も、オペレーション席やロビーのスタッフも、楽屋で出番を待つほかの役者も、もちろん演出家の君も死んだりしない。と、言うようなことが、『演出についての覚え書き』という本に書いてあった。わたしはハッとした。(なお、脚本が悪ければ観客の心は死ぬので脚本家の演劇において持つ責任は山のように大きい。脚本家は死ぬ気でいい脚本を書くように。)

わたし自身、演出家としてできなかったことばかりだ。
信じるやり方をまちがったときもあった。信じているのだから、事細かに口出しするのは良くなかった。ほどほどに言い、あとは指摘しないでほおっておくのだ。もちろん、愛を持ってほおっておくこと。無視しろと言ってるわけじゃない。(無視されると俳優の心は折れる。)
ほおっておけば俳優は自分の力で組みなおせる。ほおっておけるていどのキャパシティは持っておかなくちゃ演出家とはいえない。
信じること、と、あなたならできるでしょ!と丸投げして素早い対応を要請することは違うのだ。
わたし自身、役者をやっていた時、ほおっておいてもらって、自分で乗り越えられて、ありがたいと思った座組が過去にたくさんある。だからわたしも待つ。待たせてしまっていると思われないぐらい上手に、待つ。

舞台俳優の皆さんへ。今、芝居ができなくて苦しい時期だと思う。劇場を開けよう!の言葉は強く美しい。でも一度立ち止まって、ニュースを読んでほしい。テレビは不安だよね、だから見なくていい。新聞の記事や、海外メディアの記事を読んでほしい。(和訳も最近はあるよ)それからよく考えてほしい。どうして劇場が閉まったのかを。
君たちが元気でずっと演劇をやってくれることだけをわたしは祈っています。

それじゃあ今日もおやすみ、明日も元気で過ごしてね。

※この件について、もっといろいろな、まとまっていない感情や思ったことを鍵付きのインスタグラムにあげています。よければぜひフォローください。https://www.instagram.com/mamimu_mary/

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