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青春小説×芸術小説🌷線は僕を描く

(写真はコミックス版の2巻より)

2020本屋大賞第3位、第59回メフィスト賞、他多数の賞を受賞!

「線は、僕を描く」(砥上 裕將(とがみひろまさ)、著。講談社)

☆あらすじ

高校時代に両親を交通事故で失い、喪失感の中で時が止まったままの学生生活を送る大学生の青山霜介(あおやまそうすけ)は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山(しのだこざん)と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫で超絶な美少女である千瑛(ちあき)は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。

はじめての水墨画に戸惑いながらも、しだいに魅了されていく霜介。水墨画に打ち込むことで、霜介の内面には大きく重要な変化が起こります。

果たして、水墨画は霜介に何をもたらすのか。そして湖山賞の行方は…?

青春小説と芸術小説の融合!超感動の大作です!

☆著者について

著者の砥上裕將さんは、本作品で第59回メフィスト賞(講談社が主催する小説の新人賞)を受賞しました。ですから本作がデビュー作であります。

1984年生まれ、福岡県出身、なんと本物の水墨画家さんであります。

さすが本物の芸術家、そうでなければ書けないような描写が随所に出てきます。(コミック版に出てくる水墨画も砥上裕將さんによるものです。)

…おっと、ご心配なく!別に水墨画について詳しくなくても大丈夫です。ちゃんとわかるように描写されていますし、主人公の霜介が水墨画の素人ですから、読者と同じ目線で水墨画の基礎を学んでくれます。専門用語などにもちゃんと説明がなされます。

コペルくんは、全作品を提出してまじめな授業態度で全出席したにもかかわらず中学時代に美術で「1」を取ったことがあるほどの芸術オンチですが😭ちゃんと本作品を理解して感動で大泣きすることができました…。

☆水墨画とは?

水墨画の「水墨」という言葉は、水暈墨章(すいうんぼくしょう)という言葉の略だそうです。「暈」は訓読みで「ぼかす」。「章」は「つづる」です。全体で、「水でぼかして、墨でつづる」、つまり墨をぼかすことにより、事物の形を表現していく、それが水墨画であるということです。

☆四君子(しくんし)

四君子とは、蘭、竹、梅、菊の4種を、草木の中の君子として称えた言葉です。

蘭、竹、梅、菊の4種の植物が持つ特長が、まさに君子(学識・人格ともに優れた立派な人。または高位・高官の人)の特性と似ているということで、4つまとめて四君子と呼ばれるようになりました。蘭はほのかな香りと気品、竹は寒い冬にも葉を落とさず青々としている上に曲がらずまっすぐである性質、梅は早春の雪の中で最初に花を咲かせる強靱さ、菊は晩秋の寒さの中で鮮やかに咲く姿、それぞれの特長が、君子として望ましい特性であるとされたのです。

それぞれ気品の高い美しさから、中国は宋の時代より東洋画の画題としてよく用いられました。春は蘭、夏は竹、秋は菊、冬は梅と、四季を通じての代表的な題材とされています。 また、これら4つの草木を描くにあたって基本的な筆遣いを全て学べるため、書を学ぶ場合の永字八法と同じように、画法を学ぶ重要な素材ともなっています。水墨画の初心者はまず「蘭」を描き、うまく描けたら竹、梅と順に進んでいき、最後に菊が描けたら卒業、とされます。

水墨画 蘭

本作の主人公、霜介も四君子に挑戦しますが、本作では最初の「蘭」と、最後の「菊」に挑む姿が中心的に描かれています。

☆揮毫会(きごうかい)

毛筆で言葉や文章、絵などを書く(描く)ことを「揮毫(きごう)」と言います。揮毫会とは特に、水墨画の実演を指します。要するに水墨画のライヴパフォーマンスです。

美術館で完成された作品の展示を見るのは一般的ですが、リアルに絵を描くところを見られるのは水墨画ならではの魅力だと思います。本作でも、揮毫会の場面が2回あります。いずれも圧巻ですので、ぜひ読んで楽しんでください。こちらの動画もどうぞ。

☆失敗を楽しもう

…とまあ、ついつい学んだ知識を披露したくなるのは私の悪い癖ですが、本作品で学べるのは水墨画に関する専門知識だけではありません。水墨画に取り組むことによる、霜介の内面的、人間的な成長こそが主題です。

湖山先生は、初めての水墨画に戸惑う霜介に、

「できることが目的じゃないよ、やってみることが目的なんだ」

と言って、とにかくまずは描いてみるように促します。

当然、うまく描けません。でもなぜか、楽しい気持ちになって何回も描いてみる霜介。そんな霜介に湖山先生は言います。

「おもしろくないわけがないよ。真っ白い紙を好きなだけ墨で汚していいんだよ。どんなに失敗してもいい。失敗することだって当たり前のように許されたら、おもしろいだろ?」

「君は今日、挑戦した。それが、まずはとても大事」

「水墨の本質はこの楽しさだよ。挑戦と失敗を繰り返して楽しさを生んでいくのが、絵を描くことだ。」

と、次々と温かい言葉をかけていくのです。

失敗した人を厳しく追い込んでやり直しを認めようとしない、どこかの国とは全然違いますね😝やはり、芸術や伝統文化に理解のある国は精神的に豊かである理由がよくわかる気がします。

☆止まった時が動き出す…?

もちろん、水墨画を極めることはそんなに簡単なことではありません。

ですが、失敗そのものを楽しんで、挑戦することの喜びを知った霜介は、蘭、竹、梅、とマスターしていき、最後の課題である菊に挑みます。

そして、それまでは何もする気にならなかった、何も食べる気にもならなかった、そんな水墨画以外の私生活部分にも少しずつ変化が起こってきます。

果たして、水墨画は霜介に何をもたらすのか。湖山賞をとるのは大方の予想通り千瑛なのか、それともめきめきと成長していく霜介なのか…?

本書のタイトル、「線は、僕を描く」というのがまた実に味があります。普通に考えれば、水墨画を描く青年の話であれば、僕は線を描く、となりそうです。

でもそうではないのです。きっと読めばご納得いただけます。

あなたも、霜介と一緒に「命」や「幸福」の意味について考えてみませんか?

☆設定だけ読むとラノベっぽい?

あらすじだけ読むと、設定がマンガやラノベっぽいと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。(マンガやラノベが悪いという意図では決してありません🙇‍♀️)

「引きこもりの男子学生が、偶然に超絶な美少女と知り合い、偉い先生の弟子になって初めての水墨画に挑戦する。」

これだけ見るとちょっと荒唐無稽な感もありますし、実際に最初の30ページくらいまでは、ギャグかコントのように話が展開していきます。しかし、既に縷々述べてきたように、本書は本格派の青春小説であり、芸術小説です。

何か辛いことがあったり、人生に疲れてしまったり、時が止まったようになってしまったりすることは、普通に生きていれば長い人生で一度や二度、10回や100回、いえ2億回くらいはありますよね。

本書を読むことで、霜介と一緒にあなたの止まってしまった時を動かすことができると思います。泣けます😭

2020年度の本屋大賞はとてもハイレベルな戦いでした。本書は第3位という結果でしたが、大賞を受賞していてもまったくおかしくなかったと思います。(他のノミネート作品・順位一覧はこちら)

☆まとめ I'm a note writer!

さて、湖山先生や千瑛、そして霜介の成し遂げたことに比べれば、私の書いているnoteなど大したことはないかもしれませんが、それでも、文章を書くということはある意味では、水暈墨章の営みに似ているところがあります。無から有を生む楽しさと苦悩。

私の人生、多くの悲しみや絶望、後悔がありました(その一片はこちら)。

うまい具合に世の中とやっていくことができず、組織に属すことのできない性格と人間性ゆえにどこにも就職できず日々貧困と格闘している私も、ある意味でnoteによって止まった時を動かしているのかもしれません。

最近では、自分の書いた文章を読んで自画自賛するのが至福のときです😝(ちなみに「自画自賛」という言葉も水墨画が由来です。絵に入れる解説文を「賛」といい、自分で描いた絵に自分で賛を入れることを「自画自賛」と言ったのです。)

I'm a note writer. パソコンを叩き、紡ぎ出す文章のみが唯一存在の意義です。

否、私が文章を紡ぐのではなく、文章が私を紡ぐのかもしれません。


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