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心霊スポットで今からYouTuberたかしを襲撃する 2 YouTube企画

 当日、俺はたかしの誘いに乗ってYouTubeの企画に参加するために早朝、アパートを出て中古車に乗り込み、エンジンをかけた。

場所は山奥にある心霊スポット旧日暮村跡地 きゅうひぐれむらあとち

 かつて小中学校の頃の友達であるたかしたちと会える懐かしさや、大物YouTuberと会って仲良くなれば自分も有名になれるかもという下心、輝いている彼らに対する嫉妬心、そしてたかしとの会話に違和感のもやもやなど複雑な気持ちがあり、気分がなんとも言えない。

 そんな気持ちを整理する為に普段見慣れた町の風景を眺めながら、前回のたかしとの電話のやり取りを振り返ってみる。

 「小学校の頃、俺たちがゲーム『閉鎖村』を何回もプレイをして実際にその舞台の元になった心霊スポット『旧日暮村跡地』へ行ったことを覚えているか?」

 「あぁ、覚えているよ。たかし」

「その閉鎖村の発売20周年を記念のハロウィンイベントとして、俺たちゲーム実況者と当時のゲーム開発者や俳優、声優、ファンを読んで旧日暮村跡地のど真ん中でゲーム実況するんだゾ!」

 「マジか!!」

 たかしからこの事を聞かされた時に、俺の頭の中に当時の記憶がフラッシュバックし興奮した。

 小学校低学年の頃、たかしと同じく友達のテツヤの家でホラーゲーム「閉鎖村」で一緒にプレイをした記憶。

 とある田舎の村にある祀られている仏像を、肝試しでやってきた若者がうっかり壊してしまったのがきっかけで村の祟りによって村人がおかしくなっていき、村から脱出するというストーリー。

今ではありがちなホラーゲームや小説の設定だけど、当時は主人公とか村長とか色んな村人の心情が垣間見えて斬新で引き込まれてみんなで熱中したっけ。

 閉鎖村に登場する敵キャラクターのビジュアルが人間の形のまま保っていたから怖くてしばらく一人でトイレにいけなかった苦い思い出。

 初代の敵のビジュアルが村人そのものだから、田舎者に対する差別だとか真似をして殺人を助長するとかの批判があったから2作目以降はゾンビみたいな見た目や異形の見た目の敵が増えて別の怖さもあったな。

 ホラゲーでありがちな銃やナイフといった武器の類や霊を鎮める超能力もなしに、閉鎖された田舎の村の禁忌を触れておかしくなった村人や幽霊に見つからず隠れてながら村へ脱出する難しさ。

 そして好きすぎて、夏休みの自由研究でテツヤとテツヤの兄貴たちと一緒に閉鎖村の舞台になった旧日暮村跡地の都市伝説について調べて実際に行ったっけな。

 たしか、その時に書いた研究レポートは今でも大事にとってあるはずだ。

 「この企画は、そんな懐かしいゲーム開発の裏話やみんなのゲームの思い出をワイワイ話してから、実際にゲーム実況者とゲーム関係者と交代でゲーム実況をしてその様子をYouTubeの生放送で流すんだ!あの心霊スポットの怖さとゲームの怖さもあってかなりスリリングになりそうでさ」

 今回のイベントだとファンはゲームにプレイできないけど、普段会えないゲーム実況者とゲーム関係者と会って話が出来る、興奮気味のたかしの説明を聞いて盛り上がった。

 俺は二つ返事に参加することを伝えると、たかしは喜び、その後小学校の頃の思い出話に花を咲かせていたが、ある事に気付いた。

 小学校の頃漫画を描くのが好きな優夫が本当に漫画家になってデビューしていて、1週間前にYouTubeで対談した話とか、閉鎖村のゲーム関係者と打ち合わせした話とかはしているのに、何故かたかしの口からテツヤやマサルの話が一切出てこない。

 俺が特にテツヤの話をしようとすると、はぐらかして別の話題にすり替えてくる……。

 それ以外の当時閉鎖村をプレイした時の思い出話や今回のハロウィンイベントの話では、zoom越しでも分かるほどにうれしそうな笑みで話すのに。

 テツヤの話になると、一瞬真顔になって沈黙の後に別の話題へ誤魔化そうとする。

 まるで、テツヤの存在をタブー視して消したいかのように。テツヤは俺たちの友達じゃないのか!?そう思うと、だんだんイライラとしてきた。

 「なぁ、たかし。ちょっと気になった事があるんだが、なんでテツヤとマサルの話を避けようとしているんだ?さっきからあいつらの話題が出てこないけど」

「テツヤはともかく、マサル?優夫じゃなくて?ジュンヤは何を言っているんだ?」

 電話をしてから40分あたりで聞いてみるが、たかしは困惑した声色の返答が返ってきた。

 「あぁ、そういうことか。どおりでたまにジュンヤと話が嚙み合わなくておかしいと思っていたが、これはまずいのかな」

「おい!たかし!?何を勝手に納得しているんだ?どういうことか説明してくれ」

いくら、小中学校の頃からたかしの説明下手でたまに何を言いたいのか分からない時があるのに、ちんぷんかんぷんで困惑する。

「マサル?の件はともかく、ジュンヤって小5くらいの頃に神奈川へ引っ越して地元にいなかったから、テツヤとテツヤのお兄ちゃんの件は知らないか」

「お前、何を言っているんだ?テツヤたちがどうしたんだ?」

「実は、テツヤはひき逃げで捕まったんだよ」



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