イタリアのレストランの吉野家化もしくは一蘭化への危惧
昨年末イタリアでクリスマスを過ごしている時は思ってもいなかった。まさかこんな報道のされ方でこの国が世界から注目されるときが来るとは。私たちが1月6日に北京経由で帰国した時、武漢で良くわからない肺炎が流行っているというのは小耳に挟んでいた。イタリアではそんなニュースはまだ全然報道されていなかったと思う。しかし今やイタリアのコロナ感染は把握されているだけでも感染者数223,885件、死者数31,160人と日本とは比べ物にならないぐらいのパンデミックだ。総人口60.6百万人と日本の約半分なのにもかかわらず、である。それも感染のほとんどは北イタリアのみ。この人たちにこんな悲劇が訪れるなんて本当に誰も想像できなかったと思う。
家族としては悲しいこともあったし、何よりも私としては、義母が一人で家に籠もっているのが本当に本当に可哀想でしようがない。外に出れず誰にも会わず、私だったら何か自分の中の歯車が狂って精神的におかしくなってしまいそうだ。でも彼女はなんとか電話ではいつも明るそうに振舞う。本当だったら飛行機に乗って一刻も早く駆け付けたいところだ。私はあのチャーミングな義母と話すのが大好きなのだ。いつも反応が大袈裟、何につけても一度は文句をつけるし、道端で出会った犬一匹一匹に話しかけるから歩くのが遅いし、それでいっつも一人で爆笑していて、社交的だけど実は一人ぼっちが好きだったり、そしていつもなんでも喜んでくれる。本当に私はそんなマンマが大好き。早くあの薄暗い家に戻りたい。
STAY HOMEはイタリアよりおそらく日本の方が便利そうだ。日本は元々宅配サービスが充実している。宅急便は翌日配達や配達指定などができるのは当たり前だし、Amazonの注文も翌日届けが可能だ。生協もかなりバリエーションがあるし、スーパーも宅配事業に元々取り組んでいた。イタリアはそもそも郵便配達事情が本当に良くない。(そもそも郵便のシステムが現地の人にもわかりづらい、かつ郵便局の人が不親切)管理人がいるアパートでないと不在時には荷物を持って帰られそのまま紛失されてしまうということもざらにある。(不在票とかない)スーパーのOnline shopも少しずつ整えられるが、需要が増えすぎて注文しても全然配達がされないとか。
外食も結構する彼らだが、レストランも全面休業。そのためオリーブオイルがお店向けに売れないので叩き売りされているとか。(Uber eatはやはりあるみたいだが。ライダーの仕事が増えたとか)
やっと少しずつイタリアも規制緩和がされてきている。州間移動はまだ許されていないが、州内であれば外出許可申請書が不要となった。(義姉は一度警察に捕まりそうになった。申請書のフォーマットがコロコロ変わっていたためだ。イタリアらしいと思ってしまう)感染者数が多かったミラノも外出許可が出た。しかしまだまだ通常運転というわけではない。家族や親戚には会いに行っていいとのことだが、高齢の義母はやはりまだ一人で家に篭っている。
レストランも再開し始めたが、条例で席ごとにパーテーションを設けなければ営業が許されないそう。えっっ本当に?って思う。それではあの開放的でずっと周りの目が常にあるような、お節介な人が多い、みんなが子供にいつも構ってくれる、あのイタリアのレストランらしさは失われてしまうのか。それはいつまで続くのだろう。そのままそういう形式になってしまうのだろうか。そのパーテーションでどこまで感染を防げるのであろう。吉野家とかラーメンの一蘭とかじゃないんだから。本当にそんなの行きたくない。
イタリア人は日本みたいに基本的に一人で食事することはない。(日本は孤食という文化があるが、かなり珍しがられる)美味しい食事はみんなで共有するもの。家族や生活の中の一部として「食べること」の割合がとても大きいあの人たちだから。私もその考えに両手を上げて賛同する。日本ではオンライン飲み会が今は致し方なく流行っているが、それって私にとっては何も面白くない。同じお酒を一緒に飲んで「これ美味しいね」ってできない、同じお皿を一緒に共有して「これ美味しいね、何使ってるの?」「この食器すごく素敵。どこで手に入れたの?」ってならない。料理を作る身としては、こんなにつまらない食事はないのである。
アフターコロナで新たな生活の形式を考えるきっかけになった。コロナ以前に戻って欲しくない改善点とされることもたくさんあるのだが、やはり早く日常に戻って欲しいと、イタリアも日本も世界中、そう思う。
食事はできたらみんなで囲んで食べたい。これは流石に一人で食べないでしょう、って思うのは丸鶏のオーブン焼き。フランスとかは栗とかお米を詰めたりするけど、イタリアは大抵シンプルにローズマリーやオレガノ、イタリアンパセリ、塩などをまぶして、オリーブオイルをかけてじゃがいもと一緒にオーブンで焼くだけが多い。(イタリアだとローズマリーとか安いけど、日本は高いから私は全部プランターで育てている。育てるの簡単で勝手に生えるし、この3種は使用頻度高い)本当にボリューミー。これを誰か鍋奉行みたいな人(お父さんか、お母さんか家族によって異なるのも面白い)が仕切って、骨に沿ってきれいに切って取り分けて、みんなで「ここが食べたい」「焼き具合がちょうどいい」「僕はもっと焼いて欲しい」「このまえあそこで買った鶏も美味しかったけど、これはもっと美味しい」とかやんややんや言って、ずっとずっと食べ物のことで話が持ちきり、そんな時間が早く戻ってくることを願う。
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※レシピ Ricetta
丸鶏のオーブン焼き (Il pollo arrosto)
<材料>ingredienti
・丸鶏
・ローズマリー、イタリアンパセリ、オレガノ 適量
・岩塩
・胡椒
・じゃがいも
1. 丸鶏にハーブ類を刻んだものを全部まぶす。中にもまぶす。塩胡椒も一緒にまぶす。
2. オリーブオイルを塗って、1時間以上おく。
3. じゃがいもは櫛形に切って、さっと5分ぐらい茹でる
4. 丸鶏とじゃがいもを一緒のお皿に盛り付けて、再度オリーブオイルをかけ、オーブン200度で30−40分焼いて出来上がり。
注)写真は半身です。悲しいことに最近は夫と二人なので。