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『修行僧』

入居者のN.Mさんは、60代の時ヒマラヤに行かれた経験があるそうです。
(ヒマラヤは、ヨーロッパ・アルプスやアメリカのロッキー山脈とは、
 桁違いに高い為、景色も殺伐とし派手な美しさはありません。
 ”悟空の大冒険”でも修行の山とされる険しい山です)

まだ、お年が70歳半ばなので、次々と荒行に挑まれます。
ストックを使ったクロスカントリー風のリハビリ(!?)等
未熟者の私(職員E)では、想像のつかないことも多々あります

先日、手に財布を握りしめ、車椅子を必死に漕ぎ(足で床を蹴って進めながら)、玄関に向かうN.Mさんの姿がありました。私は、言われるがままに車椅子を誘導いたしました。
N.Mさんが、玄関への引き戸に飛びついて開けると
そこには、よそ行の服を着た二人の少女が立っていました。
(多分、面会に来られたお孫さんだとおもいます)

私は、すぐにその場を離れ、次の作業に向かいましたので、その後の状況は知りません。

ただ、N.Mさんが今まで見たこともない満面の笑顔をされるであろうことが想像され、私は目頭が熱くなりました

その次に、N.Mさんにお会いしたのは、翌日の朝食の時間でした。
その時は、すっかり”修行僧”の顔に戻っていました。
2021.05.08 職員Eより

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