電脳医、ドクター秋葉原の電子カルテ

「私、コンピューターウィルスに感染したんです。ここなら治せるって聞いたんだけど」
うちは内科で、精神科じゃないんだけど。そう言おうとした私を、先輩が遮った。
「どんどん色んなことが分からなくなって。自宅の場所も、車の運転も。思い出そうとすると、金を振り込めって頭に響いて」
「あらら、そりゃWannaCryだな。あんた、スマホで変なリンク踏んだだろ」
普段は昼行灯の先輩がやる気を出すなんて、どんな風の吹き回しだろう。
いや、それより、コンピューターウィルスが人間に感染するなど、聞いたことがない。
「頭の硬いヤツだな。現代人にとってスマホは体の一部みたいなもんだ。そこから悪いもんが体に入ったって、何もおかしくない。そういう時のために俺がいるんだからな」
先輩は名札を裏返し、患者に見せた。
「俺はドクター秋葉原、電脳医(メディシン・マン)だ。ウィザード級ハッカー資格と医師免許を持っている。さあ、治療を始めるぜ」

【続く】

#逆噴射プラクティス #SF #医療 #小説

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