見出し画像

さぁ、「アート」という授業を受けよう。- 13歳からのアート思考 -

知識、それは人生を豊かにするスパイス。

 目の前にあるモノ、身の回りに起きた出来事。それらは理解度によって、その現象を楽しめるかどうかに大きな差が出ます。

 なんか難しい言い方になってしまうのですが、例えば「こちらは20年熟成させたワインです」と言われて飲むのと、何も知らずに飲むのとでは「そのワインを飲む時間」をより楽しめるのは、間違いなく前者だってことです。

 同じように、歴史を学んでから行く旅行は面白いし、サッカー経験者はサッカー観戦をよりエキサイトできます。

 素人には分からないところで「なんだあのトラップ! すげぇ! ボールが足に吸い付いた!」とか「完璧や。トラップ……上手すぎる」とか「いやいや、えぇ……なにそのトラップ……」とか。いちいち興奮しています。

 つまり、知っているとは、楽しめるということです。知っていることが多ければ多いほど人生は豊かになっていきます。

 そんな考えのもと、コロナ禍により第16次読書ブームが到来していたぼくに、最高の本との出会いがありました。その本とは『13歳からのアート思考 / 末永 幸歩』です。

画像1

 ぼくは、この本を読み終わったとき「面白かった」とか「買ってよかった」とかいうのを飛び越え、こんな感情になりました。

「あぁぁぁ。20代でこの本に出会えてよかったぁぁぁぁぁぁ」

めっちゃ悔しい気持ちになる本。

 この本は「皆さんはアートのことが全く分かっていない」という指摘から始まります。「はい、そうです」としか言いようがありません。知ったかぶりするやつはモテません。

 もちろん「ですから、おバカな皆さんにアートという高尚な娯楽を教えて差し上げましょう」という高慢ちきな本ではないので安心してください。

 モナリザは名画だし、ピカソは偉人。そんなことは誰でも知ってますね。知らない大人は常識知らずだと街中で笑い者にされて、引っ越しを余儀なくされるでしょう。

 しかし「じゃあ、ピカソの絵の何がすごいの?」と聞かれたら、答えられる人は少ないはず。

 読んでください、この本を。ピカソを含め、6つの歴史的名画を年表順に解説してくれるんですが、それがもうたまらなく面白い。

 偉人たちが当時の絵画の常識をひとつずつ破壊していきます。はっきり言ってどれもぶっ飛んでる。どれも「はぁ~」と思わず唸ってしまう発想ばかり。

 なんですが。同時に残念な気持ちにもなるのです。唸ってしまうってことは、100年前の偉人たちが壊してくれた「常識」という名の檻の中に、100年後に生きているぼくがまたまた入ってしまっているってことなんですよ。

 これ、めっちゃ悔しくないですか? 100年分損してる気分というか。なんだか情けないです。ピカソさんごめんなさい。25歳にもなってようやく理解できました。

 しかし大切なのは、この本が歴史的な名作の「解」を説明してくれるだけの本ではないということ。

 この本は、先人たちの絵画・アートを通して、ぼくらに「知らず知らずのうちに、見えない檻の中で動いていませんか」と問いかけているのだと思います。

 ついつい常識にとらわれてしまうのは、なにも創作活動だけではないありません。仕事・生活・社会。ぼくらが考え、アイデアを出す場面はいたるところに存在しています。「これはこうしよう」「次はどうしよう」と、毎日毎日、小さなアイデアの連続で、ぼくたちの行動は成り立っています。

 それらどの瞬間においても「常識」は、ぼくらを制限しているのではないでしょうか?

 だからこそ知りましょう。先人たちが何をしてきたのか。どんな角度からどんな視点で見ていたのか。何を考えていたのか。どんな「常識」をどう壊してきたのか。この本は、参考書なのだと思います。

さぁ、「アート」という授業を受けよう。

 芸術って難しい……。そうではなくて、ぼくはただ「まだ知らないだけ」でした。

 今まで全く理解できなかった、いや、理解しようとすることから逃げていた芸術の世界。子供が書いたかのような崩れた絵画。色を散らかしただけのアート作品。

 それらに対して「13歳からのアート思考」を読み終えたぼくは、何にもとらわれず、自分なりの視点で、自分なりの解釈で、自分なりの答えで、じっくりと作品と対話することができます。

 小さなことに感じるかもしれません。必要ないという人もいるかもしれません。でもこうやって大人は、ちょっとずつ深みを増していくのかなと思いいます。

 この本に出会えて本当に良かったです。ぼくの人生は、またひとつ楽しいものになりました。
 
 あなたも、どうですか?


この記事が参加している募集

いつもありがとうございます。いただいたサポートはすべて創作活動に投資します。運用報告はきちんとnoteにて公表。そしてまた皆さんに喜んでもらえるものを提供できるよう精進いたしますので、何卒よろしくお願いします。