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あらびき桃太郎 - 1 「書き出し」

 むかしむかし。と言えばむかしだし、最近といえば最近。去年のことを「ちょっと前に……」と言う人もいれば「もうずいぶん前の話だけれど……」と言う人もいますよね。

 つまり、時間の感じ方は人それぞれなのです。

 なので、このお話がむかしなのか最近なのか、それとも未来の物語なのかは、あなたの感覚に委ねたい。あなたには、他人とズレていようと自分の感性には自信をもって、明日もまた前を向いて生きてほしいのです。

 さてさて、そんなことを言っていっては、お話がいつまでたっても始まりません。

 だいたい、「始め」というものを人は忘れがちな生き物。親友と初めて交わした会話をあなたは覚えているでしょうか? 多くの人は、どんな出来事がきっかけで接触したかまでは覚えているでしょうが、一言目がなんだったかなんていちいち覚えてません。

 だからこそ、あなたに伝えておきたいことがあります。何年たっても恋人ができないあなたに朗報です。


 それは、お近づきになりたい異性に対して「なんてLINEしたらいいか分かんない」と悩むのは、全くの無意味だということ。そんなのはなんだっていいのです。だって会話の一言目なんて、どうせ忘れられるのですから。

 もし、あなたが川端康成なら「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」みたいなインパクトのある初手を打てるかもしれない。でもそんな必要はないし、そんな康成スタイルじゃ令和の女はオトせない。バイブスぶち下げです。

 今回の物語の冒頭は「ちょうどあの頃」とでもしておきましょう。どの頃かどうかはみなさんにお任せます。というか、もう聞かないでください。探さないでください。そろそろ桃を流したい。

 では、改めまして。

 ちょうどあの頃、あるところに、おじ……えっ? あるところとはどんなところかって?

 うーん、それは難しい質問です。だって、山に囲まれた田舎町を「空気が美味しい良いところ」と言う人もいれば、「何もないくだらない町だよ」と言う人もいます。

 つまり、ところの感覚も人それぞれなのです。

 なので、この物語の舞台がどんなところなのかは、あなたの感覚に委ねたい。あなたには、他人とズレていようと自分の感性には自信をもって、明日もまた前を向いて生きてほしいのです。


 ……あの、もういいですか? ぜんぜん物語が始まりません。もう行かせてください。ドンブラコさせてください。マジで。

 ちょうどあの頃、あるところに、おじいさんとおば……。

 えっ? 第一話はこれで終わり? これ以上文字を並べても誰も読まないからだって? いやいや、ここまで読んでる変態ならこの後も読むってたぶん。でもデータがそう言ってるって? なら仕方がないか。データは裏切りませんからね。

 今日はドンブラコまでする予定だったのですが、一歩目から大幅な時間ロス。すいませんが持ち越しです。次回はもう、すぐに始めてやるんだからねっ///

〈第2話につづく〉

イラスト : 石川マチルダ

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