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在宅医療者の運動能力

在宅医療者として必要な能力とは何だろうか。もちろん職種にもよるが、医学知識や点滴・注射等の医療や介護の技術だけでなく、コミュニケーション能力、情報処理能力、ITリテラシー、運転技術等も含まれてくる。私は、「運動」も重要な能力の1つと考えている。

100m走を12秒台で走れたり、ベンチプレスで60kg上げたりといった数値で測れる能力のことを言っているのではない。(それを励みにしたり趣味にすることは悪くないと思うし、私自身は数値目標は好きなのだが。)
在宅医療現場で働く者には、敏捷に動く、患者や荷物などを運ぶ、坂を上がる等数値には表しにくい力が求められる。

これらの力がなければ、在宅医療者になれないという意味ではない。なければ他の人に頼むというのも大事な能力の1つだ。しかしながら、もし自分自身に力があればそれは大きな武器であることは確かだし、そうした運動能力があるかどうかを自己点検して必要なトレーニングを行ったり、故障等で自分でできないことがあればそれを自覚して他の人に委ねるケースを想定しておくことは、在宅医療者として必要な態度だと考えている。

在宅医療は体を故障しやすい現場だ。

患者の家まで車で行き、車から多くの医療道具の入った重い荷物を下ろして患者の室内まで移動する。坂を上り下りしないといけないこともある。患者宅では慣れない場所で慣れない体勢での作業を強いられることもある。しかも準備運動なしである。

病棟や介護施設等に勤める医療者は歩くことが多い。常に一定の準備運動をしているともいえる。これに対して、在宅医療者は準備なくいきなり強い負荷のある動作が求められる。
私も何度か経験があるが「ぎっくり腰」を起こしやすいし、肩や肘を傷めることもある。
在宅医療者にとって必要な運動能力とは、故障を最小限にしつつ動ける体力、あるいは身のこなしと言えばいいのかもしれない。

これらの力をつけ、維持するために一番いいのは、毎日10分でも運動する時間をとることだと思うが、時間が許さないことも多い。

私は、訪問の前後などの1分間を使ってのトレーニングをあれこれ考えている。
1)時間は短く、2)道具不要で、3)場所もとらない方法を思いついたらアップロードして共有するようにしている。

「運動」は、在宅医療者の心と体をリセットするためにも最も有効な手段の1つだと考えている。

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