サメ柄のパンツを履いた唾液大好きマン

何年か前の3月の夜、私はティンダーで知り合った男とデートすることになった。

彼は某有名私立大学を卒業後、大手の広告企業に就職。
当時は、誰もが知っているあの少しお高めの美容系商品のPR担当をしていた。

待ち合わせ一週間前の夜に、「おすすめの場所がある」と彼から送られてきたURL先のお店は、錦糸町にあった。

私が当時住んでいた場所から錦糸町まで、電車で片道約40分。
しかも、集合が21時前。

なかなか渋かったが、せっかくの機会だしと能天気に考え、一週間後私はおしゃれをして錦糸町へと向かった。

彼が予約していたお店は和食の小料理屋だった。キメすぎず、キメなさすぎずとちょうど良かった上に、全ての料理が優しい味わいでとても美味しかった。

運ばれてくる数々の料理を囲みながら、私たちはいろんな話をした。

彼は笑うと目が一直線になるタイプの人で、優しく包み込んでくれそうな笑顔にきゅんとした。(自分メモ:これ毎度言ってない?ww)

その後、私たちはお店を変えて二軒目に行くことにした。

颯爽と歩く彼についていくと、たどり着いた店先はDi Punto。

どこにでもあるやないかーいと内心思いながらも、そこではランブルスコを3杯飲んで1軒目以上に盛り上がった。

気づいたら、終電間際になっていた。
帰らないと、、と言いながらも、本当はもう少し一緒にいたいと思っていた。

それを彼も汲み取ったかのように、すぐ近所に家があるから来ないかと招かれた。

御察しの通り、バカで軽率な私はついていった…

「今度こそいい人に出会えたかも!」とるんるんで上機嫌な私、そしてこれから迎えるであろう刺激的な夜に胸が高鳴る彼。

しかし、私のるんるん気分は家についた途端一瞬で冷めた。

まず、部屋がものすごく汚かった。
薄暗い部屋にはミスマッチな家具家電が散乱していて、統一感が一切ない。

さらに気になったのが、陰毛が部屋中に散らかっている男性特有の現象が起きていたことだった。(偏見ごめんなさい)

何より一番の問題は、彼の下着にあった。

部屋着に着替えるために履いていたズボンを脱いだ彼のパンツには、大量のサメが描かれていたのだ。

長年付き合った彼氏や、旦那がサメ柄のパンツを履いていたら間違いなく可愛いと思える。

だけど、初対面の男性のサメパンツは、一気に冷める。サメだけに。(え

「ただのパンツやん!!」という厳しいツッコミを後々友達からされたが、部屋の家具などの全体的なセンスのなさと相まって、サメパンツが余計にダサく、気持ち悪く、もはやかわいそうに思えてしまったのだった。

女性が勝負下着を選ぶように、彼の勝負下着はこのサメパンツなのか?と私が勝手に混乱していると、彼がベッド脇にあった白い紙袋から新品の化粧水と乳液の本品ボトルを取り出し、私に差し出した。

「これ今PRしてる商品、もし良かったら使ってみて!」

その彼の言葉一つで、2秒前までサメパンツのことで頭がいっぱいだった私の脳内が一気に「ラッキー!」へと切り替わった。

今思い返してもさすがに性格が悪すぎる。笑

私はすかさずそれらを受け取り、早速自分の鞄に詰めた。

すると次に、彼はベッド下にある引き出しから、何かを取り出した。

黒い紐状のものに赤くて丸い何かがついていることは理解できたが、それが一体何なのか、私はさっぱり分からなかった。

ぽかんとしていた私の表情を見て、彼が「あ、これ?口枷。俺、よだれ好きなんだよね」とニヤニヤしながら言った。

?????

その時点で、私はまだ服も脱いでいない。

靴下すら脱いでいない私と、サメパンツ一丁な彼との間に、とても長い沈黙が続いた。

当時私が発した第一声が、
「それ…使用済みだよね?」だった。

え?!そこ?!違くない?!
と今思い返すと突っ込み所満載だが、それに対する彼の、「使用済みだけど毎回除菌シートでちゃんと拭いてるから大丈夫だよ〜」という回答もなかなかにやばい。

そう言いながらベッド下の引き出しからキレイキレイの詰め替えパックを取り出す彼の姿を、私は一生忘れることはないだろう。

ここまで来ると話は早い。
私はそのまま彼に別れを告げ、錦糸町駅付近でタクシーを捕まえ、大金を払って帰宅したのであった。

またもやいい男には出会えなかったが、高価な化粧品と偶然巡り会えて、私はそれだけでとても満足だった。

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