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ジブリのキャッチコピーと『MOTHER』の生みの親、糸井重里さんのインタビュー


コピーライター、糸井重里さんのインタビュー


先日僕が所属している『不登校新聞』でコピーライターの糸井重里さんのインタビュー記事が上がりました。

糸井さんは、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の代表であり、ジブリ作品のキャッチコピーを担当したことで有名です。

ジブリのキャッチコピー


『となりのトトロ』→「このへんないきものは 、まだ日本にいるのです。たぶん」
『魔女の宅急便』→「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」
『もののけ姫』→「生きろ。」

どのキャッチコピーも印象に残るものが多く、今でも心に突き刺さっています。糸井さんは、映画の内容を印象的なフレーズで端的に表現することに長けていると感じます。特に『もののけ姫』の「生きろ。」は、映画の強烈な印象を一言で表した言葉として引き付けられます。
同じ年(1997年)に公開した『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の「だからみんな、死んでしまえばいいのに…」というキャッチコピーとは真逆で、この2つのポスターが並んでいたことを考えると運命的なものを感じます。まさに当時の宮崎駿監督と庵野秀明監督の作品によるそれぞれの作家性の違いを窺えます。

糸井さんによる不登校への見解


今回のインタビューは、僕は同席できなかったのですが、不登校経験者として糸井さんの意見を興味深く感じました。
学校側や親から見たら不登校というのは、大きな問題と捉えるところが多いでしょうが、糸井さんは不登校というのは問題でもなんでもなく、ただ一時期学校へ行かない、それだけのことだと述べています。
不登校というのを大きな問題に捉えないでこのように割り切っていることには、驚きを感じましたが、僕も振り返ったら当時、不登校であった時は深刻な問題として強く抱えていたのに対して、今だとそのように感じなくなりました。学校へ行かなかったことで苦しいことも色々ありましたが、それによって学べたことも多く、いい意味で今の自分を形成している部分が大きいので、そう考えると問題ではなかったと思います。
なので、学校へ行かないことを深刻に捉えない糸井さんの意見には、ある種の共感を抱きました。

どうすれば不登校のその後をおもしろく生きれるか、という質問については、どのようなときに自分はうれしいのか、どんなときに自分は悲しいのかを自分に聞いて、自分を知っておくこと。結果を求めずに今生きている過程をおもしろがることが大事だと言っていました。
人は焦って結果を求めようとすると、過程の方をなおざりにしてしまう傾向があると思うので、その過程をいかにおもしろがるようにするのは重要なことです。僕もそのように焦って失敗してきた経験があるので、よりそう感じます。RPGゲームでいきなりボス敵を倒してもつまらないし、長い冒険をかけて自分が強くなってからボス敵を倒した方が達成感も大きいですしね。その過程をおもしろがるためにも、自分はどのような時にうれしいのか、悲しいのかということを知っておくことが人生を豊かにするコツなんだと思いました。

RPGゲーム『MOTHER』による作家性

ちなみに糸井さんは、RPGゲーム『MOTHER』の生みの親としても知られています。『MOTHER』は3作出ていますが、最後の『MOTHER3』が出てからもう17年経ちます。僕も『MOTHER』はとても好きなゲームであり、3作品ともプレイしていますが、どれも心に強く残っています。
『MOTHER』はRPGゲームとして色々素晴らしいところがありますが、特に音楽と物語の結びつきの強さにおいては他のゲームにはないものだと思います。
『MOTHER』と『MOTHER2』では冒険の舞台に散っている8つのメロディーを集めて1つの曲「エイトメロディーズ」を完成させることが目的ですが、様々な冒険を経てその曲を完成させた時の感動はとても感慨深く感じます。そのメロディーを聞くことで主人公の母親の暖かさも思い出し、タイトルの『MOTHER』の重みを感じ取ることができます。

MOTHER』では、ラストのギーグ戦に唯一対抗できる手段がこの「エイトメロディーズ」を歌うことであり、ギーグは主人公の曾祖母マリアに赤ん坊の頃育てられていたというバックボーンがあります。その時にマリアが歌っていた子守唄がこの「エイトメロディーズ」であり、その歌を聴くことでギーグは戦意を失い撤退します。育ての母の愛情を込めて歌っていた曲がラスボスであるギーグにも響いていたという展開は、強く感動を覚えました。

『MOTHER2』では、全てのメロディーを集めた後に主人公ネスの幼い頃の記憶を経て作り出した心の世界「マジカント」に行きますが、そこでネスの人生に影響を与えてきた家族らと話し、自分の邪悪な心が実体化した悪魔にいる所に行って戦います。その悪魔を倒すことでパワーアップし、隠された力を得て仲間たちの元へ戻ります。物語の要と言える「エイトメロディーズ」が完成した直後にネスが自身の心と向き合ってパワーアップイベントにも繋がっていくことは、物語の深みを感じました。
エンディングでは、今までの冒険の写真がスタッフロールと共に出てきてその時に流れる曲が「Smiles and Tears」。直前に今まで冒険した仲間たちと「PKサヨナラ」してから流れるこの曲は、「エイトメロディーズ」と同じメロディーで構成されていて長い冒険の終わりを感じ、思わず涙が出そうになりました……。

『MOTHER3』では、最後主人公リュカが生き別れていた兄のクラウスと決着をつけます。この時、クラウスは黒幕であるポーキーによって改造され、自我を失っていましたが、母親と父親の説得を受けて最終的に自我を取り戻します。そしてリュカが身に付けていたフランクリンバッチを利用してわざと雷を自らに跳ね返してリュカの腕の中で息を引き取るという感動的なイベントがありました。この後エンディングで『MOTHER』と『MOTHER2』の「エイトメロディーズ」が織り込まれましたが、まさに『MOTHER』の集大成だと感じ、同時に終わりを鑑みることができました。

このように音楽と物語をシンクロさせていく糸井さんは、ゲームクリエイターだけではなく、作家としても優れていると感じます。『MOTHER』のような名作はファンを増やし続け、今後10年、20年経っても語り続けられていくものとなるのでしょう。
このような作品を制作してくださり、糸井さん、ありがとうございました!




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