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新世紀マーベラスnovel1(22)

「さて」
レイが辺りを見回すのにエマもならう。
比較的広い厨房には冷蔵庫やオーブンといった設備に上等な調理器具が並んでいる。
「一般区画と違って、こっちは電気が通ってるのですね」
「そういえばそうだな」
電子機器はエマの世界にはないものだっただけに、すぐに気がついた。
エマは厨房として妥当な物が並ぶ中に、明らかに異質なものが一つあることに気がついた。他二人も同じようだ。
「これは……」
下向きに口が空いているレバーのついた頭の大きな機械だ。
レイがレバーを引く。白い粉がチューブから流れ落ちて小さな山を作った。
「問題のブツはこれだな」
「どうすんの?」
「全部お砂糖にしましょう! 甘くて美味しくてハッピーなのです」
「……太りそう」
メアリーが舌を出す。
「まあ大量に入れるはずはないし、太るくらいで済むならまだマシだろう。エマ、中身を入れ替えてくれるか?」
「わかったのです」
宙に浮く粉の塊を目で追いながらメアリーが問うた。
「それより、これからどうするの? こいつら、のしちゃったけど」
倒れ伏しているコックたちを指さす。
「エマたちでお料理するのはどうですかっ?」
「それでもいいけど、そもそも人手足りないでしょ」
話し合う二人にレイは提案した。
「私たちでやる必要はない。武器だけ取り上げて、引き続き奴らには私たち監視のもとコックとして業務に励んでもらう。子どもたちからある程度クスリが抜けるまでな。ついでに潜伏場所として使わせてもらおうか」

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