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つめたいけどやさしい|兼六園

建物や物の名前の由来を知ると、なるほどなぁと唸ってしまうことがある。
六つを兼ねる園と書いて兼六園。
なんとなく不思議な名前だと思っていても、固有名詞のイメージそのままに違和感を覚えることはなかった。
改めて調べると、兼六園の由来にはこんな詩があるらしい。

洛人云う園圃の勝 相兼ぬる能わざるは六
宏大を務るは幽邃少なし
人力勝るは蒼古少なし
水泉多きは眺望難し
此の六を兼ねるは惟湖園のみ

洛陽名園記

広大な土地であれば、静けさはない。
人工的であれば、古くからの趣は損なわれる。
美しい水がある場所は、眺望が悪くなる。

そういった、一般的には同時に成立しない特性を三組合わせ持つ庭園という意味で兼六園という名がついているんだそう。

これを知った時、たしかにそう言われればそうかも、と感心するとともにそんなふうな性質を持つ人間はとても魅力的なんじゃないかと思った。

血液型占いやMBTIのように人を類型化して、「らしさ」が規定されていく、その型に自然とハマっていくことがある。
論理的な人間はどこか冷たいとか、本好きは根暗だとか。

本当にそういう性質を併せ持っていることもあるんだろうけど、謎の通説に引っ張られたり、周りからラベルを貼られることでそう思い込んでしまったりすることのほうが多いんじゃないかと思う。

そういう、一般的に浸透している、「これとこれは同時に成立しない」みたいなものを自分の中に兼ね備えた、重心の取れた生き方がしたいと思った。

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