そこそこ読書 タイムストーリー 3日で咲く花  日本児童文学者協会  編

 時間をテーマにした作品群の一つである。他作品には「1日の物語」「5分の物語」等がありテーマの時間内で起こる物語を集めた短編集である。公募も行っているようで入賞作も掲載されており、タイトルにある「3日で咲く花」はその中の一つだ。

 作品一つ一つの感想よりも、編集した日本児童文学者協会が児童にどんな物語を伝えたいのかという思惑の方を考えてしまう。なぜこれらが入賞したのか、掲載されたのか、こういった事を児童に伝えたかったのではないか、と。

 最初の「さくら色のバトン」は新人の飼育員がベテランの飼育員とのかかわりで成長する物語であるが、これは新人の飼育員を児童として、ベテランの飼育員を編集者として投影しいたのではないかと感じた。
 作者の思いを考えるより先に、これを採用した教会側が自分たちの思いを託したい、若い人に学んでほしいという印象が強かった。新人の姿は現状に不満を抱えながら最後には成長をする。これがそのまま編集者の児童のこうなってほしいというイメージと理想なのではないかと。

 もう一つの「3日で咲く花」は途中まで不安定だった。展開がどうなるかはらはらしたのではなく、何を読んでいるのかという足元がぐらつくような不安定さである。ホラーなのか、ギャグなのか、青春なのか分からない。
 後半になって、「そういうジャンルか」と分かった後は、それで満足してしまった。肝心な中身がどうでもよくなってしまう。
 登場ジャンルが分かった安心感と、設定の自由さが合わさり、人物や出来事に関心が向かない。正直3日である必要がない。朝昼夕でも話が完結すると感じてしまう。

 残りの3作品はすべてプロが書いたものである。比べるものではないが、共通しているのは短い中でも書き手や編集の存在を感じさせない。きっと細かな工夫があるのだろう。

 つまらない批評になってしまったが、同時に私自身の戒めとしても残しておきたい。私の感想はどこかに「こうあるべき」という勝手な思い込みが前提にあり、それ自体が良くない偏りが始まる危険性がある。
 「作者がこう書いたからこうなのだ」という事を思い出す必要がある。作品それをそれ自体として見るにはこのような出会いは必要不可欠なのではないか。

 また、単純に比べるからこそ細かな工夫が際立つが入賞して作品が世に出るのはすごい事であり、そもそも作品を作るだけで素晴らしい事だというのを忘れてはいけない。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?